特に働き盛りと言われる30代、40代の方々を中心に、海外転職を志向される方々は年々増加傾向にあります。

海外で働くことはキャリア形成にとどまらず、海外でしかできない貴重な経験ができる等様々なメリットがありますので転職先として検討する価値は大いにあります。

しかしその一方で、海外転職ならではの様々な苦労やデメリットがあるのも事実です。

海外転職を志向する上で大切なことは海外転職の良い面だけを見るのではなく、デメリットや悪い面もしっかりと理解し、それらを受けとめた上で判断することが大切です。

では海外転職には具体的にどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。

30代、40代の海外転職を検討されている方を主な対象として、海外駐在を経験した筆者の経験を交えながら近年の海外転職事情や海外転職するメリット、デメリットなどを詳しくご紹介して参ります。

海外転職の基本とよく見られる誤解

まず海外転職において誤解されていること、もしくは誤解されやすいことからお伝え致します。

海外転職は容易になっている?

ネット上は海外勤務の求人数が増加していることや、外務省が調査している海外在留邦人数が5年間で約7%も増加していることなどを根拠に「海外転職しやすくなった」といった論調が多く見られます。

海外勤務の求人数が増加していることも、海外の在留邦人が増加していることも事実ですが、その事実だけをもって海外転職しやすくなったと考えることは早計です。

一部の国を除けば就労ビザの発給要件は厳しくなっている

トランプ大統領の登場に象徴されるとおり、海外では移民を積極的に受け入れることより、自国民の利益を優先する傾向が顕著になりつつあります。

そうした政情の影響をもろに受けるのが「就労ビザ」です。

米国に限らず、就労ビザの発給要件は一部の国を除けば総じて厳しくなっています。

中でも世界経済を牽引してきた中国は、ここにきて就労ビザの発給要件を厳格にする方向へと転じました。

中国には30代、40代に限らず、20代であってもエンジニアであれば就労ビザが簡単に発給され、海外在留邦人数増加の大きな原動力にもなっていただけに、海外転職を目指す日本人にとっての影響は決して小さくありません。

こうした動向を踏まえれば、海外転職が容易になっているとはとても言えないのです。

優秀な人材が海外で活躍できるチャンスが増えたと見るべき

就労ビザの発給要件が厳しくなり、日本人が海外で働けるチャンスが減れば海外在留邦人数も伸び悩むはずですが、ご紹介したとおり海外に住む日本人は5年間で7%も増加しています。

この相反する現象は、実は「日本人大リーガーの増加」を事例として考えて頂ければ理解しやすくなります。

かつて日本のプロ野球選手が大リーグで活躍することは野球協約などにより、ほぼ不可能でした。

それを元近鉄の野茂英雄氏がパイオニアとなって日本人プロ野球選手が大リーグに移籍できる道筋を開き、その後続々と優秀な選手が大リーグにわたり、大リーガーとして活躍するようになった訳です。

しかしプロ野球選手であれば誰でも大リーグ選手になれるものでしょうか。

大リーグへ移籍できているのは、日本プロ野球の中でも一握りのトッププレイヤーだけです。

つまり、大リーグでも活躍できる素質や能力がありながら今まで大リーガーになるチャンスが与えられなかったプロ野球選手に、そうした機会が与えられるようになったということであって、能力がない選手にも大リーガーになれるチャンスが広がった訳ではないということです。

同様に、海外転職では海外転職専門に支援を行うエージェントが多数登場してきたことで優秀な資質がありながら海外で働くチャンスが得られなかった方々がチャンスを掴みやすくなったのであって、海外転職そのものが易化したと見るべきではありません。

「海外転職は駐在員と現地採用の二つの方法がある」は嘘?!総合職なら駐在員が基本

ネット上では海外への転職方法として駐在員になって海外へ赴任する方法と、現地国で直接採用してもらう二つの方法が代表的な方法として紹介されています。

しかしこの二つを同列で扱うのはいささか無理があります。

大卒で総合職として一般企業に採用された30代、40代のビジネスマンが海外転職を狙う場合、現地国企業へ直接転職を果たす方法は駐在員になることより何倍も難しく、とても同列では語れないのです。

現地国企業で採用される場合に重視される基準は、後述致しますがずばり「スペシャリストかどうか」です。

「有名大学を卒業し、大手企業の総合職として様々な部署で業務経験をして・・・」と自己PRしても、現地国企業ではほとんど評価されません。

総合職の方が海外転職を目指すなら日本企業や外資系企業に採用してもらい、駐在員として海外赴任をめざす方法が堅実です。

30代・40代で海外転職可能な「専門職」の職種とは

これまでの説明でおよそご理解頂けたとおり、海外へ渡り現地国で直接採用してもらえる可能性があるのは「専門職」の方々です。

ではどのような専門職なら海外でも求人ニーズが高いのか、具体的な職種例をご紹介することに致します。

板前や寿司職人

ミシュランガイドによる影響などもあり、今や日本食は世界的なブームとなりつつあります。

それに伴って海外では日本食レストランや寿司店が増加しており、日本人の板前や寿司職人の世界的求人数も増加しています。

日本語教師

日本語教師も日本語を母国語とする日本人としての強みが活かせる専門職ですし、日本語を学ぶなら現地国の教師から学ぶよりネイティブとなる日本人から学びたいというニーズがあります。

そのため、板前や寿司職人同様就労ビザも比較的取得しやすい職種です。

日本語教師としての資格より重要なのは「実務経験」と「学歴」

ただし、いくら海外転職が狙いやすい職種だといっても未経験で海外転職を果たすことは大変困難です。

日本語教師としての資格の有無は実はそれほど重要ではありませんが、日本語教師としての「実務経験」は必ず問われることになると考えておいた方が良いです。(何年程度実務経験が必要かは国によって異なります。)

もし30代、40代の方が未経験で日本語教師として海外転職を狙うなら、まずは国内で日本語教師としての実務経験を最低でも2年程度積んでから検討した方が良いでしょう。

エンジニア

日本の技術専門職の代表格といって良いエンジニアも、海外転職に強い職種の一つです。

中でもIT、電気、機械、バイオ、建設、化学といった分野でエンジニアとして経験を積んできた30代、40代の方であれば、海外駐在、現地国企業への直接転職共に有望と言えます。

但し、エンジニアとして実績があり、優秀な方であっても自己アピールが下手だと特に現地国ではなかなか採用に至りませんので、転職活動に取り組む場合には転職エージェントの指導や支援を受けた方が良いでしょう。

総合職なら「管理職経験」が必須

専門職とは言えませんが、総合職の方が駐在員として海外転職を果たすために重要になってくるのが「管理職としての業務経験」です。

総合職の駐在員が海外で行う仕事とは、ほとんどの場合、現地法人のマネジメントです。

また、就労ビザを取得する上でも「マネージャー経験」が評価材料の一つになってきますので、エンジニア等の技術専門職以外で海外駐在員を狙うなら管理職経験は必須といっても過言ではありません。

特に40代の方は管理職経験があっても不思議ではない年代です。

40代で管理職経験がないという方が海外転職を目指すなら、駐在員ではなく例えば日本語教師として日本で実務経験を積む等、他の方法を検討した方が確実と言えます。

30代・40代で海外転職するメリット

ご紹介したとおり、海外駐在であれ現地国での採用であれ、国内での転職と比較すれば海外転職は決して容易とは言えません。

しかし海外転職には国内では決して得ることができない様々な魅力的メリットがあります。

30代、40代の働き盛りの方々が海外転職を果たし場合にどのようなメリットがあるかご紹介致します。

国際感覚が自然に身に付く

日本にいて外国人に接したり、海外情報を得たりするだけでは、真の国際感覚を身に付けることは容易なことではありません。

海外に住んで現地国の方々と接しながら生活を送り、働く経験を積めば格段に早く国際感覚を身に付けることができ、磨いてゆくこともできます。

嫌でも語学力が磨かれる

この点は容易に想像できると思われますが、英語もしくは現地の言葉は現地で生活したり仕事したりする上での「必須手段」となります。

嫌でも使わざるを得ませんし、使わなければ日常生活にも支障が生じますので、必死になって覚えようとする結果、現地国の言語知識や会話力は自然と高まることになります。

現地国での人脈ができる

現地国に生活基盤をおいて仕事に取り組んでいれば、日本にいたなら絶対に得られない、あるいは得にくい現地国ならではの人脈を築くことができます。

経験から言えますが、人脈作りという点では日本人は特に恵まれています。

海外には日本のカルチャーに大変関心や興味を抱いている外国人の方は多数いますし、経済大国である日本でビジネス展開したいと考えている経営者の方が少なくありません。

そのため、パーティーなどの機会があれば向こうの方から声をかけてくれますので、無理に自分から働きかけようとしなくとも、社交場へ積極的に顔を出していれば比較的容易に人脈を作ることができます。

日常的に”海外旅行”を楽しめる

海外に住んで生活をすれば、日本人観光客が知らないちょっとした観光スポットを数多く発見することになります。

海外に赴任してしばらくは近隣の教会や寺院、あるいはレジャー施設へちょっと足をのばすだけでも、ちょっとした「海外旅行気分」を味わうことができます。

30代・40代で海外転職するデメリット

働き盛りの30代、40代が海外転職した場合、メリットだけでなく次のようなデメリットもあることは重々留意するようにして下さい。

(帰国後)日本の職場に馴染みにくくなる

どれだけの期間海外で働いていたかにもよりますが、4~5年程度海外で働いた後に日本の職場へ舞い戻ってきた場合、しばらくは日本特有のコミュニケーションや仕事のやり方に違和感や戸惑いを覚え、職場に馴染みにくくなってしまいます。

本来なら帰国後昇進となるはずだったのに周囲と上手く協調できなくなり、昇進できなかった方なども実際にいます。

キャリア形成の一環として海外転職を考えている方は、こうしたデメリットが生じる場合があることもぜひ覚えておいてください。

犯罪に巻き込まれるリスクが日本より多い

日本でも犯罪は増えていると言われていますが、世界的に見れば日本は大変治安が良い国であることは間違いありません。

例えば日本の住宅街が銃撃戦が行われることなど想像できるでしょうか。

海外であれば後進国のみならず、テロの標的となっている欧米先進国ではそうしたケースは決して珍しい話ではないのです。

実際に筆者もアメリカにおいて、治安が良い地域と言われ、日本人も多く住んでいる住宅街で二度もほど銃撃戦に遭遇した経験があります。

ましてスリやひったくり、恐喝程度であれば現地国の警察もまともに動いてはくれません。

特に日本人は経済的に裕福だと見られていますので、狙われやすいのです。

海外にわたれば犯罪に巻き込まれるリスクは大変高いことは覚悟しておく必要があります。

駐在員でなければ社会保険等で不利になる

駐在員なら企業側が厚生年金が途切れることで年金受け取りで不利益が生じないよう、個人負担分の一部或いは全額を会社側が負担してくれる等一定の配慮を得られる場合があります。

しかし現地国へ直接転職を果たした場合、サラリーマンの方ならずっと加入していた厚生年金が途切れてしまうことになります。

対策としては国民年金に加入し、支払い続けるという方法がありますが、厚生年金ではなく国民年金になってしまいますので年金給付額が減ることが避けられなくなります。

加えて現地国でも現地国の社会保障費負担を求められるのが通常ですので、年金支払いという点では二重払いとなる上、永住権でも取得できない限り、その国から年金を受け取ることはまずできません。

このように社会保険料、とりわけ年金においては現地国へ直接転職した場合にはかなり損を被ることになりますので、こうしたデメリットが生じることもぜひ理解しておいてください。