近年目覚ましい経済発展を遂げており、勤勉な民族として知られている親日国といえばベトナムです。

ベトナムには、ポストチャイナとして日本をはじめとした主要先進国企業の進出が加速しており、それにともなって日本人に対する求人ニーズも増加しています。

そうした求人ニーズの高まりを受けて、近年ベトナムへ移住し就労することを検討する方々も増加していますが、移住する上で最も気がかりな点といえば生活言語と年収ではないでしょうか。

そこでこの記事ではベトナム移住を検討している方々に向けて、ベトナムの言語や年収事情について詳しくお伝え致します。

ベトナムの言語事情・英語は通じる?通じない?

ベトナムの公用語はベトナム語

まずベトナムの公用語についてですが、ベトナムは英語ではなく「ベトナム語」が公用語です。

しかし母国語が英語ではなくとも英語が通じるという国は多数あります。

例えばマレーシアやシンガポールなどが良い例ですが、マレーシアではマレー語以外に英語や中国語を生活用語として使用している国民がいます。

そのため、中国系移民が多いエリアへ移住するならマレー語よりむしろ中国語を習得した方が便利です。

では、ベトナムにはマレーシアのような状況があるのでしょうか。

答えは「NO」です。

ベトナム国籍の方で、日常生活においてベトナム語ではなく英語を生活用語として使用している民族や地域といったものは特にありません。

ベトナムは日本と同じ状況と考えれば良い

では「ベトナムでは英語は通用しない」が結論かと言いますと、そうとも言い切れませんのでこのあたりを具体的に説明することにしましょう。

ベトナムで英語が通じるかどうかをおおざっぱに言えば、「日本で英語が通じるかどうかとほぼ似たような状況」と言えます。

日本の公用語は日本語であり、日常生活で英語を使用ている県や都市などは存在しませんのでこの点ではベトナムと同じです。

ところが、日本で英語が全く通じないかと言えばそうではないですよね。

外国人に英語で話しかけられて英語で答えられる方は多数ではないものの、日本各地にいますよね。

ベトナムもこの点では似たりよったりです。

また日本の高級ホテルやレストラン、その他外国人向けのサービスを提供している施設や事業所には英語を話せるスタッフがだいたい常駐しており、日本語が話せない外国人の方でもそうした施設を利用したり、サービスを受けたりする場合には特に困りません。

一方コンビニやスーパーといった地域密着型の小売店やローカルな公共交通機関、役所の出張所などは英語が話せる職員がたまたまいる場合もありますが、英語でコミュニケーションをとることを前提としてはいません。

ベトナムもホーチミンやハノイといった大都市で、尚且つ外国人も利用する機会が多い施設では英語は問題なく通用します。

その割合は日本より多いと考えて構いません。

が、大都市圏であっても地域住人を対象とした小売店や、地方都市の店舗や飲食店などでは英語が使えるベトナム人がいない限り、英語は通用しないのです。

つまりベトナムで日常生活を送ることを前提として言語を考えた場合、ベトナム語を知らないでベトナムで生活するということは「日本語を知らないまま日本で暮らすようなもの」だということです。

そう考えると、ベトナム語を学ばずにベトナムへ移住して生活を送ることはかなり不便を強いられることになるのが容易に想像できるのではないでしょうか。

ただしビジネスシーンでは日本より英語の利用頻度は高い

ただし、ビジネスシーンになると少々事情は異なってきます。

日本では例え外資系企業であっても社内の会話が全て英語という企業は、まだ限られています。

この点でベトナムはどうかというと、日系や欧米企業の現地法人では社内の公用語は英語というケースが日本より断然多くなります。

そのため、日系企業や欧米の企業で働いている日本人であれば社内ではベトナム人との会話もベトナム語ではなく英語で行っているというケースが大半です。

つまりベトナムでは、ビジネスの世界においては英語も「必須言語」の一つという位置付けになるということです。

従って、日本や欧米企業のベトナム現地法人への就職を狙うなら、ビジネスで通じる英語力も問われることになります。

その上で、英語だけでは不便なので、日常生活で不自由しない程度の会話ができるぐらいベトナム語についても取得しておく必要もあるということです。

ベトナムでの年収・物価事情

ベトナム人の平均的な月給はUSドルで300ドル~500ドル

次にベトナムの年収事情についてです。

ベトナム人の平均的な年収とベトナムの日系や欧米の大手企業で働く日本人の年収には、大きな格差があります。

ベトナム人のケースから紹介すると、ベトナム人の平均的な月収はUSドルでだいたい300ドルから500ドル程度です。

仮に1ドル100円でレート換算すれば日本円で3万円から5万円といった数字になりますので、年収になおすと36万円から60万円といった水準になります。

ちなみに大卒の初任給は200ドル程度、日本円で2万円程度ですので、企業にしてみれば格安で優秀な人材を雇用できる状況にあります。

物価(食費や生活用品など)はだいたい日本の1/3から1/4程度

日本の物価水準では月額4万円程度ではとても生活できませんが、ベトナムの物価はどうなのでしょうか。

大雑把な対比ですが、ベトナムの物価は日本の物価のおよそ1/3から1/4程度です。

例えばベトナムの国民食と言えばフォーで、日本で言えばうどんやそばのようなものですが飲食店で出されるフォーの値段はUSドルでだいたい1ドルを切っています。

日本円換算で70円から100円程度といった水準ですが、日本ではかけうどんやかけそばの価格が300円前後ですからだいたい1/3相当になります。

他にもコーラが500mlで40円~50円程度、野菜では玉ねぎがキロ単位で200円程度ですからこちらもだいたい日本の1/3程度です。

また食品以外では、理髪店の利用料は男性ならだいたい4ドルから5ドルです。

日本円換算で400円から500円程度となりますが、日本では1,000円から3,000円ぐらいの間で男性はカットできますので、やはりこちらもだいたい1/3から1/4程度と言って良いのではないでしょうか。

公共交通機関は格安!

ベトナムは公共交通機関の運賃が格安で、こちらは日本の1/3から1/4程度どころではありません。

例えばホーチミン市の路線バスを事例とした場合、同市内の全域の路線バス運賃は日本円換算でだいたい20円から30円程度です。

日本の1/10に近い水準と言えますよね。

大都市圏の家賃はやや高い

ただし、家賃はそれほど安くありません。

特にホーチミンやハノイの繁華街、もしくはそれに近いエリアの家賃は日本の中規模都市並みの水準です。

日本ではワンルームマンションにあたる部屋の家賃がだいたい200ドルから400ドル程度、日本円で2~3万円程度しますし、ファミリー向けの高級マンションとなると2,000ドル超、即ち月額20万円以上という物件も珍しくありません。

勿論これらは大都市圏の家賃相場ですので、ベトナムも地方都市にいけば破格の家賃で住める場合もあります。

しかしベトナムの地方エリアはインフラ事情が決して良いとは言えませんので、日本人の水準で文化的な生活を送るなら大都市圏を中心に考えた方が良いでしょう。

ベトナム人の生活は決して楽ではない

物価が日本の1/3から1/4程度と言っても、ベトナム人の平均的な給料は日本人の1/10程度に留まっていますので総じてベトナム人の暮らしは楽だとは言えません。

特に大都市圏では家賃が高いためルームシェアは当たり前であり、USドルで500ドル以上の給料を得ている、ベトナムではエリート層にあたるサラリーマンであっても副業をして生活費を補っているのが実情です。

そのため、仮にベトナムの現地企業に就職できたとしてもベトナム人と同水準の給料となった場合には余裕のある生活を送ることは困難です。

ベトナムで就職できたものの生活費を切り詰めても旅費のための貯金ができず、日本へ帰国できなくなったという方もいるぐらいです。

ベトナムへの移住を検討するなら、ベトナムの現地企業でベトナム人と同じ条件で採用された場合にはこうした状況になることも理解しておいた方が良いと言えます。

日本人を対象とした給料は1,500ドル~2,000ドルが下限水準

例えば日系企業や日本と取引きを行っている現地企業など、日本人もしくは日本語が堪能な人材を欲している企業がベトナムにも多数存在します。

そのような企業は平均的な年収が400万円程度の日本人を月額3万円や4万円といった条件で募集しても、なかなか応募してくれないことは理解しています。

そのため、英語ができることや実務経験を有することなど一定の条件をクリアしている日本人についてはベトナム人と異なる高額な給料水準で募集が行われています。

具体的な職種で給与額の事例を紹介しますと、次のような例があげられます。

(ベトナム現地企業の日本人求人事例(月給・為替:USドル))

  • ITエンジニア :1,500ドル~3,000ドル
  • 商社営業職   :2,300ドル~2,800ドル
  • 生産管理    :2,000ドル~2,500ドル
  • 日本人看護師  :1,800ドル~2,000ドル
  • 日系レストラン店員 :1,500ドル
  • 営業マネージャー :2,500ドル
  • 日系企業経理職  :1,800ドル~2,200ドル

ご覧のとおり、職種によって多少の違いはありますが、月給の下限となる水準では1,500ドルから2,000ドル程度が目安になることがわかります。

仮に月給で1,500ドル、日本円で15万円程度あれば、ベトナムは物価水準が安いため「リッチな暮らしができる」とまでは言えないまでも給料だけで十分生活できますし、ある程度貯金することも可能でしょう。

英語力と実務経験が必要であることは言うまでもない

ただし、給料事例でご紹介した職種からもわかるとおり、日本人の求人は実務経験が必要な職種が大半です。

まれに「未経験でも応募可」となっている求人もありますが、それらは「未経験でも採用する」という意味ではありません。

募集職種での実務経験が仮になくとも、それをカバーしてあまりあるぐらい他の能力が秀でている大変優秀な人物であれば採用を検討するという意味であって、少なくとも未経験者が積極的に欲しい訳ではないのです。

つまり、該当する職種以外でアピールできる卓越した能力がない限り、未経験で採用される可能性は低いと考えておいた方が良いと言えます。

就労ビザ取得も厳しくなりつつある

親日国であるベトナムは優秀な日本人を国内に招き入れ、ビジネスノウハウを学びたいという国家的ニーズがありますので、他国と比較すると就労ビザは発行してもらいやすい部類の国に入ります。

しかしベトナムは急速な経済発展を背景に、高度な教育を受け、高度なビジネスノウハウを身に付けたベトナム人も着実に増えつつあります。

日本人からビジネスノウハウを学ぶという理由だけで無尽蔵に就労ビザを発行することは、そうしたエリートベトナム人が活躍する就労機会を脅かすことになりますので、近年、就労ビザの発行要件は厳しくなりつつあります。

特に学歴とベトナムで働く場合の職種との関係性や実務経験が、シビアに問われるようになってきました。

未経験で全く畑違いの職種に応募し仮に採用されたとしても、就労ビザを取得できない(=ベトナムへ移住・就労できない)可能性が高まりますのでそのような意味でも実務経験は大切になってきます。

英語は必須

日系企業の求人でしかも求人条件に明記されていなかったとしても、英語力は必須と考えた方が良いです。

この記事ですでにお伝えしたとおり、ベトナム人スタッフとは英語でコミュニケーションを行う必要があるからです。

また、日常生活ではベトナム語を使用できないと不便を強いられることになりますので、繰り返しとなりますが、ベトナムへの就労・移住を考える方はビジネス英語と日常会話レベルのベトナム語を習得する覚悟が必要となってきます。