過酷な医師の仕事を続けていく場合、ワークライフバランスが非常に重要になります。
そこで当記事では医師がワークライフバランスを保つために最適な方法や、現在の長時間労働や当直、オンコールによるハードワークから解放される方法を紹介します。
医師がワークライフバランスを保つには?
医師の中には生涯現役を通す方も多いですが、ワークライフバランスを保たなければ何処かで無理が生じてしまいます。
そのため、ワークライフバランスを保つには仕事のやりがいとプライベート、そして報酬のバランスが非常に重要です。
医師のワークライフバランスの意識や実情
では医師がワークライフバランスについてどれくらい意識しているのかを見てみましょう。
ワークライフバランスを意識していない医師が多い
『日経メディカル』が行った調査によると、医師の多くがワークライフバランスを意識していないという結果が出ています。
- ワークライフバランスの言葉も意味も知らない……35.0%
- ワークライフバランスを聞いたことはあるが意味は知らない……22.7%
- ワークライフバランスは知っているが自分自身は考えたことがない……23.1%
- ワークライフバランスの意味を知っており、自分でも大切にしている……19.2%
参照:日経メディカルオンライン
これは2008年に実施された調査なので今はワークライフバランスについて意識している医師が増えているかも知れませんが、自分自身のこととして考えられない背景には医師の労働時間が長い、ハードワークが多いという事情があるのかも知れません。
実際の勤務実態と理想に差がある
リクルートドクターズキャリアが約250人の医師に実施したアンケート調査によると、下記のように勤務実態において理想と現実のギャップが大きいことが浮き彫りになりました。
質問 | 現実 | 理想 |
---|---|---|
1日の就労時間 | 10時間 | 8.3時間 |
1ヶ月の当直の回数 | 4.2回 | 2.2回 |
オンコールの回数 | 6.6回 | 2.2回 |
また、週あたりの休日の理想は2.2日ですが、現実には「1日もないときが多い」(10.3%)「1日もない時がある」(16.7%)となっています。
特に理想と現実のギャップで多いのは1日の労働時間の長さで、ワークライフバランスにおいて理想とする労働時間よりも平均で2時間もの開きが見られます。
また、長時間労働以上に当直やオンコールに対し、全体の4割を超える医師が負担が大きいと回答しています。
このことから医師がワークライフバランスを保つには労働時間を筆頭に様々な状況を改善していく必要があるといえるでしょう。
医師のワークライフバランスが保てない理由
では、現実に医師がワークライフバランスを保つのがいかに難しいのか、労働時間や働き方を通してみていきましょう。
労働時間が長い
厚生労働省が実施した「医師の勤務実態について」の調査によると、40%近くの医師が週当たり60時間以上勤務していることがわかりました。
なお、この「勤務時間」には診療時間(外来診療・入院診療・在宅診療)のほか、診療外時間(研究・自己研修、会議など)、待機時間(当直や院内での待機時間)が含まれていますが、院外で待機するオンコールは含まれていません。
勤務時間 | 病院勤務 | 診療所勤務 |
---|---|---|
60時間以上 | 38% | 0.9% |
60時間未満 | 55.7% | 5.5% |
参照:厚生労働省
勤務時間が長いほど待機時間も長い
上記の調査で勤務時間が長いほど待機時間も長いということがわかりました。
1週間の勤務時間 | 診療時間 | 診療外時間 | 待機時間 |
---|---|---|---|
40~50時間 | 81% | 17% | 2% |
50~60時間 | 76% | 18% | 6% |
60~70時間 | 71% | 20% | 9% |
70~80時間 | 67% | 20% | 13% |
80時間以上 | 61% | 21% | 18% |
診療科目によって勤務時間に差が出る
1週間の勤務時間が60時間以上の病院常勤医師の割合を診療科目別に見ると次のようになっています。
- 産婦人科……53.3%
- 臨床研修医……48.0%
- 救急科……47.5%
- 外科系……46.6%
- 小児科……44.6%
- 内科系……39.9%
- 麻酔科……32.9%
- 放射線科……28.5%
- 精神科……27.5%
- その他……31.2%
このように診療科目によって医師の勤務時間には大きな差があることがわかります。
医師がワークライフバランスを改善する方法
では、これらを踏まえて、医師がワークライフバランスを改善するにはどうすればいいのかを見ていきましょう。
自分の理想と負担になっている部分を整理する
まず、自分の理想に対して何が負担になっているのかを整理することが大切です。「とにかく時間がない!」と嘆くのではなく、問題点をあげてみましょう。
- 医師でなくてもできる事務処理が多い
- 拘束時間が長い
- 休暇が取りにくい
- スキルアップや知識習得につながらないセミナーや講習への参加を強要される
- 受付終了間際に来る患者さんは断ってほしい(開業医)
特に「医師という立場上、勤務時間が長いのは仕方がない」とワークライフバランスの実現をあきらめている先生が多いようです。
自分ひとりで改善するのが困難でも、職場でのミーティング、上司との懇談、組合などを通して改善を呼びかけるという方法があります。
また、プライベートでは「睡眠」「子どもや家族と過ごす時間」など何を充実させたいのかを整理することも大切です。
家族に協力を求めることも重要
職場環境はすぐには改善されないことが多いものです。そこで、家族に協力を求めるのもひとつの方法です。
子育て中の先生なら保育園の送迎を両親に頼む、家事は時短家電を活用する、夫婦で分担するなど少しでも負担を減らせるように図ってみましょう。
自分のスキルや価値を把握する
問題点ばかりでなく、先生ご自身のスキルや価値を把握することも重要です。現在の職場ではそういった価値が活かされていない可能性があります。
- どういった点で病院に貢献しているか
- 資格や研究内容
- 前職での経験
これらは年収アップといった待遇の改善につなげることができます。
長期的なキャリアを見越して転職も検討する
職場の慣習や風土、経営者の考え方などで職場の環境改善が難しい場合は転職を視野に検討してみるのもいい方法です。
医師にとって転職は決してマイナスではなく、むしろ長い目で見ればキャリアアップとしてプラスになります。
ワークライフバランスが保てず心身を疲弊するよりも、より働きやすい職場への転職を検討しても良いでしょう。
医師のワークライフバランスまとめ
医師の勤務はハードワークになりがちで、ワークライフバランスを保つのが困難です。医師を対象にしたアンケートでも勤務時間が長い、休日が少ないなどの声が多く聞かれます。
先生方がワークライフバランスを保つには、現在の問題点や負担点を整理する、ご自身のスキルや経験、強みなどを把握する、そして職場に改善提案をするといった方法があります。
それでも改善されない場合は長期的な視点に立って転職することもひとつの方法です。以下の記事では医師の転職におすすめのエージェント7社を徹底比較しておりますので、ぜひ参考にして下さい。