フリーランスに“上がり”ってあるの?/名もなきライター(藤田幸子)執筆

会社員とフリーランスの、出世と“上がり“の話をしていきます。

こんにちは、名もなきライター(藤田幸子)です。

執筆者のTwitter:https://twitter.com/writer_noname

今すごくフリーランスが流行っていますね。と、他人事のようにいってますけど、私も独立して己の名前(といっても名もなきライターというふざけたハンドル名)で働いています。

ところで、フリーランスに“上がり”はあるのでしょうか?
会社員だったら、ヨーイドンで平社員からスタートし、みんなで上層を目指すという出世レースが(一応)ありますよね。

一方で、結論から書くと、フリーランスにゴールはありません。

今日はジョブシフトさんへの寄稿をさせていただくにあたって、その話を書きたいと思います。

会社員にとって“上がり”とは

新卒フリーランスなど、特殊な経歴の場合はイメージしづらいかもしれませんが、基本的に日本の会社は、一応平等にキャリアがスタートします。悪名高い新卒一括採用という文化があるからです。

実は、人事の極秘情報として、幹部候補生が裏で選別されているという噂は聞きます。でも、それって本当にあるかどうかはわかりません。なぜなら、大企業になればなるほど、出世には実力や実績だけでなく、派閥や学閥といった各種パラメータが関係してくるからです。

たとえば、早稲田閥がある会社において、早稲田大学でいい成績を取って入ってきた有望な新入社員でも、ある日起こった派閥の争いで、急に会社が東大閥に乗っ取られることはありうるのです。基本的に年功序列の大企業では、22歳で入社して30年後まで出世のラインが続いているとは限りません。

つまり、新入社員のときに有望だったとしても、幹部候補生という枠が本当にあるかは怪しいのです。

産業スパイもキャリア

さらなる脱線を許してもらえば、人事にまつわる変な噂は結構あって、私がメーカーの会社員だった頃は「産業スパイ」という職があるという話がありました。

スパイとしてライバルメーカーに潜入して給与を二重にもらい、情報を盗んでくるという仕事です。

バカバカしいと思うかもしれませんが、実際に産業スパイはいてもおかしくないですよね。

人事にまつわる奇妙な噂として、そうした話も流れることがあります。きっと、スパイとして貢献したら、自社に戻ったときに待遇が良くなるかもしれません。

産業スパイで出世コースは極端ですが、そのようにルートが設定されています。社員として実績を残せば、少しずつ評価されて上役へ。

もちろん、平等に出世ができるというのはあくまで建前上のもので、ほとんどの方が平社員のまま終わります。それでも、一応は出世ルートが残っていますよね。

フリーランスにとって“上がり”とは

一方で、フリーランスには出世がありません。ひとりで仕事をする個人事業だから、もともと自分が出世のトップであり、同時に一番下っ端でもあるのです。

自分で自分に指示を出し、自分でいうことを聞いて作業しますよね。

これを「フリーランスは意思決定が大変」「請求書事務も、営業も自分でやらなくちゃいけないから大変」とかいってるうちは、学校の延長ではないでしょうか。机を並べて、ただ出席したことを評価されるのは、会社員ですらなく、小学生です。

フリーランスはもっともっと主体的な存在で、自分で自分の人生を意思決定していく必要があります。どのような仕事を受けるか、受けないか、どこで一点張りして勝負をかけるか・・・。

会社員との違い

私個人は、会社員としてはパッとしなかったたちなので、フリーランスと会社員の違いをこれだと断言することはできません。

会社員は出世がすべてだとは思いませんが、それでも社会保険料が上がりつつある今、キャリアアップして給与を増やさないことには、生活はどんどんジリ貧になっていきます。

ただ、これは非常に緻密な議論が必要で、本来は会社員で出世してマネジメント層になるのと、給与が上がるのは別で考えるべきではないかと私は思っています。

なぜなら、専門技能に対して対価が発生するのが本来的な意味でのジョブディスクリプション制度で、組織の中身に精通したゼネラリストだけに高い給与が払われるのは、日本型雇用のちょっとおかしな点ではないかと考えるのです。

フリーランスの上がりの話

しかし、私個人は会社員時代に出世したわけではなく、むしろ脱落したタイプなので、フリーランスについて考えていきましょう。

精神論になりますが、フリーランスの上がりって、「自分が満足したら」だと思うんです。その点において、たとえば、「文字単価が10円になったから、もう十分だ」とか「連載を8社で抱えているから、上がりだ」なんてことはいえないのです。エンジニアでもマーケターでもそうですね。

フリーランスはスキルを売っていますから、ある種の職人的な部分が必要となります。よって、職人芸に終わりはなく、無限に突き詰めて「もっと、もっと」と自分の内側と戦っていくのです。より品質が高まり、顧客も喜んで、その結果として報酬があがっていくのではないでしょうか。

そんな中でどうキャリアを構築するか

では、上がりのないなかでどうやってキャリアを構築するのでしょうか。ひとつのヒントをお届けします。

それが、スキルの足し算です。

よく、ひとつのスキルで延々と勝負している人がいます。しかし、単一スキルだと理論上は無限に上が生まれますよね。自分よりスキルを持った人は、世界を見渡せばたくさんいるからです。

そんななかで、どうやってスキルを構築していくか。そのひとつに足し算があって、目の前の仕事から、何をスキルとして得ることができるか。

よくフリーランスはお金が対価といわれ、たしかにそれは間違いではないのですが、目の前のお金だけをみていると、キャリア迷子になってしまいます。

たとえば、私は1円ライターのころ、エンタメメディアでエグザイルと韓流の記事を担当していました。表面的には、私が納品していたのは音楽記事であり、エグザイルと韓流の文章です。

しかし、その内実は、私は「業界常識の基礎とキーワードの扱い方」「プライシングと生活における実働時間の目安」「即納品を実現する生活リズムと自己管理」など、さまざまなことを自覚しました。これがスキルです。

スキルは、「TOEICが800点」だとか「情報処理技術者合格」といったものだけではないのです。先程見たような私のスキルは足し算であり、次の仕事ではそのスキルを使って仕事した上で、さらに新しいスキルを獲得していきます。

私は1円ライターを抜けたあと、ニュースメディアの在宅記者になりました。そこで私は上述のスキルに加えて「編集者さんの出社にあわせて早起きし、9時までにネタ出しを完了」「どのネタならウケて、どのネタなら炎上するかの見極め」「書いていいラインとそうでないライン」をスキルとして新たに身につけたのです。

これが積み重なっていくうちに、どんどん新しいスキルが上積みされていって、いつのまにか仕事に困らないようになります。

スキルは、単一でもなく掛け算でもなく足し算。きちんと隣接スキルを積み上げていけば、そのうち一本筋の通ったキャリアが構築できるようになるでしょう。