行政書士の資格と言うと、どのようなイメージがあるでしょうか?
「なかなか受からない難しい資格」
と思う人もいれば、
「弁護士や会計士に比べると簡単に受かるのでは?」
と思う人もいるかもしれません。
行政書士の資格を取得するためには、行政法や民法、会社法などの幅広い法律についての深い知識が必要です。ですから、とても難易度が高い資格なのです。
そんな取得するのが難しいと言われる行政書士の資格ですが、独学で取得することは可能なのでしょうか?そして、資格を取得した後はどのような進路があるのでしょうか?
行政書士の資格について詳しく調べてみました。

行政書士の試験概要とは?

まずは、行政書士の試験概要について詳しくご説明しましょう。

行政書士の試験内容

行政書士の試験は、法令等科目と一般知識の二つに分かれています。出題数は、法令等科目が46題で244点満点、一般知識が14題で56点満点、合計で300点満点です。

法令等科目(出題数46題)

行政書士の業務に必要な法令に関する問題です。
憲法、行政法、民法、商法・会社法、基礎法学の中から出題され、問題配分は以下の通りになっています。

科目 問題数 点数配分
憲法 択一式5問+多肢選択1問 28点
民法 択一式9問+記述式2問 76点
商法・会社法 択一式5問 20点
行政法 択一式19問+多肢選択2問+記述式1問 112点
基礎法学 択一式2問 8点
合計 244点

この配分を見てもわかる通り、行政法が最も重要な科目であり、次いで民法の出題数が多くなっています。
出題形式は、択一式、多肢選択式、記述式のものがあります。択一式は5択となっており、多肢選択式は空欄に当てはまる言葉を選ぶもので、選択肢が多いので若干難易度が上がります。記述式の問題は、40字程度で記述するようになっています。

一般知識(出題数14題)

行政書士の業務に関連する一般知識を問う問題です。
政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解の問題が出題されます。
出題形式は5択の択一式です。

科目 問題数 点数配分
政治・経済・社会 択一式6問 28点
情報通信・個人情報 択一式5問 16点
文章理解 択一式3問 12点
合計 56点

合格ライン

行政書士の試験は全部で300点満点です。
各出題項目における獲得点数の合格ラインは以下のようになっています。
・法令等科目 122点以上
・一般知識 24点以上
・総合得点 180点以上
この3つの基準をクリアすれば、合格ということになります。

行政書士の合格率は約5~15%

行政書士試験の合格率は年によってばらつきがありますが、合格者が少ない年は5%、多ければ15%と言われています。
10人のうち一人が合格するかしないかですから、かなり難易度が高い試験と言えます。
ただ、弁護士や会計士といった最高難度の試験よりは難易度が低く、少し勉強すれば受かるかもしれないと考える人が多いです。そのため、受験者が多くなり、不合格者も多くなることで合格率が下がっているということもあります。
法律に関する幅広い知識が必要なので、ちょっと勉強しただけで受かるような簡単な試験ではないことは間違いありません。

行政書士の勉強を独学で行うためには試験内容をしっかり理解することが重要!

行政書士の試験は独学で勉強して合格することができるのでしょうか?
かなり困難ですが、独学でも合格することができます。ただし、かなりの勉強時間が必要になります。一般的に必要な勉強時間は800時間とも1000時間とも言われていますが、具体的にどれくらいの勉強量なのか、ピンときませんよね。
行政書士試験の勉強内容について詳しく見ていきましょう。

【法令等科目の勉強法】
法令等科目の5科目をさらに詳しく単元に分類したものが、次の表です。

分野 単元 重要度
憲法 憲法総論 ★★★☆☆
天皇 ★☆☆☆☆
基本的人権 ★★★★★
国会 ★★★★★
内閣 ★★★☆☆
裁判所 ★★☆☆☆
財政 ★★☆☆☆
それ以外 ★☆☆☆☆
民法 制限行為能力・意思表示 ★★★★☆
代理 ★★★★☆
時効 ★★★★☆
物権変動 ★★★★☆
占有権・所有権 ★★★★☆
用益物権 ★★☆☆☆
担保物権 ★★★★★
債権一般 ★☆☆☆☆
債権の保全 ★☆☆☆☆
債権の消滅 ★★★☆☆
債権譲渡 ★☆☆☆☆
多数当事者の債権債務関係 ★★★★★
契約各論 ★★★★★
事務管理・不当利得・不法行為 ★★★★☆
親族・相続 ★★★★★
それ以外(民法総合) ★★☆☆☆
商法・会社法 株式 ★★★★☆
設立・定款 ★★★★☆
株主・株主名簿 ★★★☆☆
株主総会 ★★★☆☆
取締役 ★★★★★
計算・資金調達 ★★☆☆☆
事業譲渡・合併 ★★☆☆☆
機関全般 ★★☆☆☆
持分会社 ★☆☆☆☆
商法 ★★★★★
行政法 行政法総論 ★★★★★
行政手続法 ★★★★★
行政不服審査法 ★★★★☆
行政事件訴訟法 ★★★★★
国家賠償法 ★★★★☆
地方自治法 ★★★★★
基礎法学 法学概論 ★★☆☆☆
裁判知識 ★☆☆☆☆
それ以外 ★☆☆☆☆

これを見てもわかる通り、かなりたくさんの単元があり、それぞれの単元について覚えることはたくさんあります。40単元以上ありますから、単純に一つの単元の勉強に1週間あてると考えても、10か月かかることになります。
実際は、各科目の単元ごとに重要度が異なりますから、重要度の高いところに重点を置いて勉強する必要があります。この表にある重要度は、過去の出題傾向と、その単元を勉強することで全体の理解につながるかどうかということを元にしています。重要度が高い単元は出題率が高いものだけではなく、その単元を勉強しておくことで他の単元の内容の理解にもつながる重要な部分です。

行政法は確実に勉強しておくべし

まずは、行政法です。行政法は法令等科目の半分近くを占める問題ですから、ここでしっかり7割は点数を稼いでおかなければなりません。
行政法の問題は単純に知識を問う設問が多いのが特徴です。地道に暗記していく必要があります。ただ、暗記できる量にも限りがありますから、参考書で1単元ずつ勉強してから過去問を解くということを繰り返すことで、頭に定着しやすくなります。

民法は実例をイメージする勉強を

出題数が法令等科目の3分の1を占める民法もかなり重要な科目ですから、しっかり勉強時間を取る必要があります。
行政法とは違い、条文を丸暗記してもあまり意味がありません。
例えば損害賠償や相続についてなど、具体的な事例に関する問題が出されますから、その事例を法律に当てはめて考えなければならないのです。具体的な事例について問う問題が出されるため、過去問を多く解くことが正解率アップにつながるでしょう。

憲法は確実に出題される単元をしっかりおさえて

憲法の配点は28点と行政法や民法に比べるとかなり低くなっていますが、無視できる点数ではありません。
過去問題の傾向を見ると「表現の自由」などの基本的人権に関する問題や国会についての問題が良く出題されており、今後もこの出題傾向は変わらないと考えられます。
しっかり出題傾向を見極めて、これらの重要単元をおさえておく必要があるでしょう。

商法・会社法は出題範囲が広い割に配点が低い

商法・会社法は出題範囲がとても広い割に、配点は20点と少なくなっています。
全ての範囲をまんべんなく勉強しようとすると長時間勉強しなければなりませんが、配点が低いため無駄な労力に終わってしまいます。しかし、20点と言う点数は無視できません。
そのため、重要度が高く対策を立てやすい単元に絞って集中的に勉強し、5割程度解くことができればOKという方針でも良いと思います。

基礎法学は解けたらラッキーくらいに考えておこう

基礎法学の出題は2問で配点は8点という傾向が続いており、今後も続くと考えられます。
8点なのであまり時間をかける余裕がないという人は、思い切って捨ててしまっても良いでしょう。

【一般知識の勉強法】
一般知識における各分野の単元と、その重要度についてまとめたのが次の表です。

分野 単元 重要度
政治分野 選挙制度 ★★★☆☆
議院内閣制 ★★★☆☆
行政 ★★★★★
それ以外 ★★★☆☆
経済分野 財政・税制度 ★★★☆☆
金融 ★★☆☆☆
国際経済 ★★☆☆☆
それ以外 ★★☆☆☆
社会分野 社会保障 ★★★★☆
環境問題 ★★☆☆☆
それ以外 ★★★★☆
個人情報保護分野 個人情報保護法 ★★★★★
情報通信分野 情報通信関連法 ★★★☆☆
情報通信用語 ★★★★☆
文章理解 文章理解 ★★★★★

政治分野の行政に関する問題は出題数が多く特に重要な単元です。各分野の「それ以外」の単元は重要度が低めですが、社会分野だけは例外です。毎年「労働と雇用」に関する問題が1問程度出題されているため、要注意です。
一般知識は試験が行われる年に話題になった分野が扱われることが多いため、ニュースや新聞をチェックして時事問題にアンテナを広げておく必要があります。

政治・経済・社会と情報通信・個人情報保護の分野は的を絞って

政治・経済・社会、および、情報通信・個人情報保護の分野は出題範囲が広く、全てをまんべんなく勉強することは難しくなっています。そのため、ある程度勉強すべき単元に集中して勉強しましょう。
政治・経済については高等学校の「政治経済」の教科書や行政書士試験用の参考書を通読して問題を解けば対策はできます。中でも、経済の問題は2問ほどしか出ませんから、あまり時間をかける必要はないでしょう。その時間を他に回す方が、合格率は上がるはずです。
一方、社会分野は重要単元です。「労働と雇用」「社会保障制度」については特にしっかり勉強しましょう。
情報通信・個人情報保護の出題は情報通信が1問、個人情報保護が3問なので、特に個人情報保護法の単元に的を絞りましょう。

文章理解は国語力がカギに

文章理解の問題は毎年3問出題されています。
高校生の現代国語などが苦手だった人にとっては、鬼門となるでしょう。逆に、国語が得意ならば過去問題をチェックしておくだけで良い問題でもあります。
まずは、過去問題をチェックしてみて、対策が必要かどうかを判断してください。
「どうしても解けない!難しすぎる!」というのであれば、対策が必要です。高校生用の現代文問題集を解くなどの対策を取りましょう。

行政書士資格取得のための効率の良い勉強方法とは?

行政書士の試験内容について把握したところで、独学で行政書士試験を突破するためには、どのように勉強したら良いのかについてお話しします。

自分に合ったテキストを探す!

まずは、自分に合ったテキスト探しです。テキストがなければ勉強できません。テキストは勉強の進み具合によって異なります。勉強を始めてから試験を受ける直前までに使いたいテキストの種類について、ご紹介します。

【勉強初期に必要なテキスト】

一読して全体像を把握できる「講義型テキスト」や「一般参考書」

勉強を始める際には、単元ごとに知識を身につける必要があります。
講義型のテキストや一般参考書などで、それぞれの単元の全体像を把握します。いきなり細かい法律の条文などが書いてある参考書を読んでも、理解できないと思います。まずは、話し言葉でわかりやすく説明され、図表などで視覚的に理解しやすい参考書から入りましょう。

暗記のための「一問一答形式問題集」

全体像を理解したら、一つ一つの用語を理解し頭に定着させるために、一問一答形式の問題集に取り組みましょう。問題に取り組むことで、理解度がわかります。理解していなかった部分の問題を繰り返し説くことで、理解度が高まります。

単元ごとに理解を深める「総合問題集」

初期の勉強の総まとめとなるのが、総合問題集です。単元ごとに問題集に取り組むことで、その単元を本当に理解したのかがわかります。

【勉強中期に必要なテキスト】

発展問題の参考書で応用力をつける

初期に使った問題集や参考書で復習をしながら、応用問題の参考書で知識を深めます。

行政書士六法のテキストを勉強する

行政書士六法と言われる、憲法、民法、行政法など、行政書士の資格取得のために必要な法律の条文がまとまっているテキストがあります。
問題の中で条文がそのまま出てくる場合もありますから、重要な条文については行政書士六法のテキストで勉強します。
ただし、あまり情報量が多すぎても勉強しきれませんから、重要な法令が抜き出されている参考書で勉強するのも良いでしょう。

【勉強後期に必要なテキスト】

過去問題で総仕上げ

単元ごとに理解が深まったと思ったら、過去問題で総仕上げです。
過去問題にはどの単元の問題なのかという記述はなく、どの単元の知識が問われているのかも含めて考えなければなりません。ですから、過去問題を解くことは、実際の試験を受けることを想定した勉強にもなります。

単元ごとに勉強時間を配分して効率よく計画的に勉強する!

初期・中期・後期と読むべきテキストはたくさんありますが、これらの繰り返しをそれぞれの単元ごとにしなくてはなりません。勉強すべき単元はたくさんありますから、勉強時間を配分して計画的に進めていかなければ勉強は終わらないのです。
分野や単元ごとに勉強のスケジュールを決めて計画的に勉強を進めましょう。
特に、行政法や民法など、必ず出題されて出題数が多い分野については、勉強時間を多く取る必要があります。重点を置くべき単元に的を絞れば、効率的に勉強することができます。

行政書士の資格を取るとなれる職業って何?

行政書士の資格はよく耳にする資格ですが、行政書士とはどのような仕事をする職業なのか、行政書士の資格を取るとどんな商売ができるのか、実はよくわからないという人が多いのではないでしょうか?
行政書士法(第一条の2)によると、
「行政書士は、他人の依頼を受けて報酬を得て、官公署に提出する書類、その他、権利義務、または事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む)を作成することを業とする」
とあります。
つまり、国や都道府県、市町村などの役所に提出する書類を、企業や個人に代わって書いて提出する仕事をするのが、行政書士と言うことになります。

行政書士が扱う書類とは?

役所に提出しなければならない書類は数えきれないほどあります。作成する書類の多くが認可や許可などに関するもので、その数は1万種類を超えるとも言われています。

例えば、
・会社設立
・飲食店などの開業
・相続手続き
・内容証明郵便
・自動車関連の手続き
・産業廃棄物許可関連の手続き
・土地や建物の売買手続き
など、官公署へ書類を提出しなければならないケースは、数えきれないほどあるのです。

建設業は行政書士とかかわりが深い業界の一つです。1件の工事の請負代金が500万円以上になる場合は、建設業の許可が必要になります。この建設業許可の有効期限は5年なので、5年ごとに行政書士による更新手続きが発生します。
誰もが保有している自動車に関しても、多くの手続きが発生します。車庫証明や自動車登録手続きなどが必ず発生するからです。運送業やタクシー業界などは大口顧客になります。
会社設立時や、風俗業の営業許可を受ける際にも、行政書士は活躍します。
このように、行政書士が必要とされる場面は他にも数えきれないくらいあるのです。

就職して実務経験を身につける

行政書士の資格を取得したら、就職先を探すことになります。
資格は持っていても業務経験がない場合、行政書士事務所や一般企業に就職して実務経験を身につける必要があります。
行政書士として経験を積みたいなら、行政書士事務所に就職するのが良いでしょう。行政書士の先輩に仕事を教えてもらいながら実務経験を身につけることができます。
ただし、雇われた状態で行政書士を続けていても、しょせん「代書屋」にしかなれません。年収は普通のサラリーマンとかわらないのです。
逆に、資格を生かして行政書士事務所から請け負う仕事をパート感覚でこなすということもできます。普通のパートの時給に比べるとはるかに高い賃金で働くことができるでしょう。

いずれは独立して事務所を開設

行政書士としてしっかり稼ぎたいのならば、独立して事務所を開業するのが最終目標になると思います。
独立して事務所を経営するためには実務能力ももちろん重要ですが、一番大事なのは顧客をつかむことです。そのためには、人脈をしっかり保持しておく必要があります。

また、行政書士の業務範囲は幅広いため、不動産関連に強い、相続に強い、訴訟ごとに強いなど、専門分野に特化した強みを持つ必要があります。
会社設立に関する仕事を請け負う際にも、IT関連の会社設立に強みがある、医療分野に強いなどという分野ごとの強みを持てば、他の事務所との差別化につながります。
特に、建設業界や風俗業界、産業廃棄物業界など、官公署での手続き事が多い業界に太いパイプや強みを持てば、大きな収入増につながるでしょう。

まとめ

行政書士の試験に合格するためには、かなりの勉強量が必要なことがわかりました。出題範囲が広いため、出題傾向を把握して計画的に勉強しなければなりません。
でも、しっかり計画と下調べをして自分に合ったテキストを用意すれば、独学で行政書士の資格を取得することもできます。
行政書士の資格を取りたいなら、しっかりと準備をして粘り強く勉強する必要があるでしょう。

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