保育園の抽選で落ちた母親のブログが国会でも取り上げられる等、待機児童問題は深刻な社会問題になっています。

それだけ小さなお子さんを抱える共働きの世帯にとって、保育園や保育士はなくてはならない存在です。

ところが、それだけ必要とされる存在でありながら保育士の方々の処遇や勤務実態は決して良好とは言えません。

今回は保育士の方々の勤務実態に関わる問題に切り込むと共に、保育士の方々が転職を考える場合にどのような取組みをすることが最も望ましいかを明らかにして参ります。

問題その1:慢性化している残業

形だけの「シフト制」

認可保育園における保育標準時間は最大11時間となりますので、多くの保育園では午前7時半頃から夕刻6時半頃というケースが標準的な開園時間となっています。

仮に延長保育に対応しないと仮定しても、労働基準法上1日の労働時間は8時間と定められていますので一人の保育士が11時間ずっと仕事を行うことは「法律上」できません。

そこで「早番」と「遅番」のシフト制がとられていることが一般的で、早番が開園の1時間前なら6時半頃から1時間の休憩時間を含めて午後3時半頃、遅番が午前10時半頃から午後7時半頃といった具合に勤務時間が分かれることで11時間の運営時間に対応しています。

このシフト制が忠実に守られているなら、例えば早番シフトで出勤した保育士の方は午後3時半で仕事を終えて帰宅できるはずですが、多くの保育士は定時で帰ることができていません。

なぜか。主な理由として次の3つがあげられます。

・シフト時間中は幼い子供にかかりっきりにならざるを得ない

理由は様々ですが、一番の大きな理由は子供達がいる時間はその命を預かっていますので片時も目を離すことができないことです。

そのため、例えば保護者への連絡帳作成や行事の計画書作成、お遊戯会の準備等々デスクワークや子供の面倒をみること以外の業務が殆どできなくなりますので、定時になってから残業して取り組まざるを得なくなっています。

・保育士の深刻な人手不足

保育士の充足度は園によって事情は異なりますが、保育士の方々の年収や労働環境が良好でないこと等から数多くの保育園が保育士不足に悩んでいます。

そのような園は早番が不足している日は遅番の保育士が早く出勤、遅番が不足している場合には早番がそのまま帰らず勤務することでカバーせざるを得なくなります。

その結果、シフト制は形骸化し、多くの保育士が早朝から夜間までの長時間勤務を強いられることになっています。

・女性同士の人間関係

男性保育士は保護者から敬遠されがちな面があるため、女性保育士だけという園がまだまだ多いのが実態です。

そのため女性独特の職場関係が生まれ、例えば先輩保育士より早く出勤し先輩保育士が帰るまで帰る事が許されなかったりといったことが暗黙の了解として存在しているケースが多々あります。

それでも先輩保育士が定時で上がれればまだ良いですが、先輩保育士自体が定時で帰ることができていないため、特に新人保育士は更に過酷な長時間残業に陥ってしまっています。

形だけの「休憩時間」

形だけとなっているのはシフト制だけではありません。

休憩時間も形だけとなっています。

先程ご紹介した定時での勤務時間帯は、労働基準法を踏まえて8時間を越えないよう1時間の休憩時間取得が前提となっています。

ところが保育士の方がまるまる1時間ゆっくりと休憩をとれることなど、まずありません。

幼い子供の命を預かっているため、子供達がいる間は片時も目が離せないことからまとまった休憩時間など満足に取れないのです。

つまり、仮に定時で帰宅できたとしてほぼ1時間は残業していることと代わらない状況なのです。

問題その2:当たり前となってしまっているサービス残業

もっとも、残業に見合った手当てを正当に受け取れているならまだ報われますが、悲しいかな多くの保育士の残業はサービス残業となってしまっています。

自主残業とみなされる場合が多い

シフト制の問題でお伝えしたとおり、保育士の方は子供を預かっている時間はデスクワークなどまともにできませんのでシフト時間を終えてからようやくとりかかれるのですが、形の上では園の管理者側が残業を指示したことにはなっていません。

そのため、管理者による具体的な残業指示がない限りは保育士が自主的に居残りをしたとみなし、残業代を支払っていない保育園が少なくないのです。

また、延長保育対応をしている園も多いため、仮に残業しても子供達や保護者への対応に追われデスクワークに取り組めないことも多々生じますので、そのような場合は自宅に持ち帰って仕事を行うことになります。

自宅にはタイムカードなどありませんし、何時間仕事をしたかの把握は困難ですので持ち帰りによる仕事は何時間行ったとしても残業したとは認められていません。

休憩時間は定時内であり残業対象外

これに休憩時間が加わることになります。

休憩時間は定時中の扱いですので、1時間の休憩時間が取れなかったとしても正規のシフト時間中のこととなってしまうため、残業とみなして残業代が支払われるということもまずありません。

つまり、ないに等しい休憩時間分に加えて慢性的に生じる残業時間の大半が表向き「自主的」な取り組みとみなされてしまうため、本来受け取れるはずの残業手当も支払われないでいるのが保育士の残業に関わる二つの大きな問題です。

残業に悩む保育士の声を紹介

では、こうした実態に対して当の保育士はどのように思っているのか、保育士の方々の声を匿名でいくつかご紹介します。

●Aさん
「残業は当たり前ですし、残業代でないのも当たり前です。保育士は傍から見ると子供達と遊んでいるだけのように思われがちですが、やらなければならない仕事はたくさんあるんです。そうした実態をわって欲しいです。」

●Bさん
「可愛い子供達の命を預かっているという使命感だけで何とか保育士を続けています。収入を得るための仕事と割り切ったら、とても馬鹿馬鹿しくてやってられません。お昼休みなんてまともにとれたことはありませんし、土日もほとんど持ち帰りの仕事でつぶれています。」

●Cさん
「子供達優先ですから休憩どころかトイレに行く暇もありません。そのため軽い膀胱炎にもなってしまいました。また、収入だけが仕事の全てではないと思いますが、どんなに残業して頑張ってもほとんどつかない残業手当を見て毎月がっかりしています。」

問題その3:129職種の平均を大きく下回る平均年収

保育士の労働に関する問題は残業だけではありません。年収面でも大きな問題を抱えています。

厚生労働省は賃金構造に関する統計調査において、主要産業全129種の平均月額給与や賞与の額を定期的に公表しています。

厚生労働省が発表した2015年度の統計調査結果から、公務員およびパート労働者を除く保育士の年収を推計した場合、約323万円となりこの額は全129の職種と平均額と比較した場合、6割強の水準に留まります。

つまり他の職業と比較した場合、保育士は年収で大きく下回っているということです。

平均値に加えて地域格差の問題が陰を落としている

また、保育士の年収に関する問題で話題となったのが西日本新聞・子ども問題取材班が記事とした保育士年収の地域格差の問題です。

西日本新聞試算の結果、福岡県の保育士の年収平均値は約359万円であるのに対しお隣の佐賀県は約221万円と、約140万円もの格差があったことが判明しました。

ちなみに全国一は愛知県で約383万、ワースト1は鳥取県の約201万円で両県の差は約180万。

ベスト1とワースト1の差に至ってはフルタイムで働くパートの方の年収1人分程度に相当する額の開きがあります。

全国一の愛知県であっても全職種の平均を下回っている上、単に物価の違いだけでは片付けられないほどの大きな年収地域格差という問題まで生じているのです。

「保育士の転職」という選択とその対策

ご紹介したとおり、保育士の方々は他の職種を大幅に下回る年収と長時間のサービス残業に悩まされていますが、こうした状況は全ての保育園に当てはまるとも言えません。

公立があるいは民間法人といった違いに関係なく、少数派ながらできるだけ残業が生じないようシフトが厳格に運用されていたり、残業が生じた場合でも時間数に応じて残業手当も支払われていたりする保育園もあります。

また、経営努力によって基本給そのものを高くして保育士の処遇を改善している園も存在します。

つまりそうした保育園へ転職することで、保育士の方が年収アップや長時間労働の改善を図る方法が残されています。

では保育士の方が転職に取り組む場合にはどのようなポイントがあるが、ご紹介します。

残業時間解消を優先するなら「派遣社員」への転職という方法がある

保育士という仕事は続けたいが毎日のように続く長時間残業には耐えられない。せめて残業が解消してくれれば・・・・

といった残業時間の解消を一番の目的とした場合におススメの転職方法が「派遣保育士」として働くという方法です。

派遣保育士は派遣会社の社員となることであり、保育園の直接雇用とはなりません。

そのため園側の都合や理屈だけで簡単に残業を命じたり、残業代を未払いしたりすことはできなくなります。

保育園の正社員という身分ではないこと、また年収という面で大幅な向上を目指す場合には有力な選択肢とまでは言えませんが、長時間におよぶサービス残業を解消させる方法として派遣社員という選択は検討に十分値すると言えます。

転職するなら保育士専門の転職エージェント活用は必須!

正社員保育士として他の園へ転職したいという場合に「おススメ」と言うより、必須と言っても良いのが転職エージェントの活用です。

求人情報サイトや求人誌などを利用し自分1人だけ求人を探して転職活動を行うことは、逆におススメできません。

1人で取り組んだ場合、例えば残業の有無や残業代の支払いについて確認することは限界があります。

そもそも園として「自主的に居残っている=残業を命じていない」という前提がありますので、その前提に則れば「当園では残業は生じていない」という見解になります。

また、中途採用に応募することは採用する側・される側という関係になりますので、面と向ってしつこく残業の実態などを尋ねてしまえば、良心的な運営を行なっている園であっても採用を敬遠したくなります。

そうなるとせっかくの転職のチャンスが失われることにもなるからです。

その点で求職者と求人企業の仲介役を果たしてくれる転職エージェントを間に立てれば、そうした残業の実態や残業代の支払いに関する条件など、転職エージェントが代理人となって細かく確認してくれますし、必要に応じて交渉も行ってくれます。

また、何より当事者どうしではなく第三者が介在すれば「口約束」で済まされなくなるため、園側も約束を履行しようとしますし、違法な労働を強いることは軽々にできなくなります。

保育士専門の転職エージェントがおススメ!

「転職エージェント」と「保育士」という組み合わせでネット検索を行えば、保育士を専門としている転職エージェントがみつかります。

保育士専門の転職エージェントには元保育士だった方がアドバイザーとなっている場合もあり、保育士特有の不安や悩みも十分理解してもらえます。

そうした保育士の仕事内容や保育園の処遇に精通した転職エージェントを味方につけ、残業の有無や年収などを念入りに確認した上で転職することが、転職という選択肢を最大限に活かす最良の方法と言えます。

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