介護士(※)を続けてゆくべきか、留まるべきか・・・様々な理由から介護職を離れ、転職を検討する介護士の方は決して少なくありません。

しかし、転職には様々な不安がつきものです。

現在転職を検討されている方の中には、どうすべきか結論が出せずに悶々と悩まれている方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では「介護士転職の今」と題し、介護士の方々の離職状況や職場に対する不満など介護士の方々の転職事情について客観的にご紹介すると共に、他業界へ転職する場合のメリット、デメリットなどを説明して参ります。

今後の方針を固める上での参考としてぜひお読み下さい。

(※「介護士」という言葉には明確な定義がありませんので、この記事では介護士を「介護職員」として位置付けて紹介致します。)

介護職員の離職状況

介護職員の離職率は16.7%

介護職員の方々の離職実態から確認することにしましょう。

公益財団法人「介護労働安定センター」(厚生労働省所管)が2016年10月に実施した調査によると、介護職員の離職率は「16.7%」という結果でした。

つまり約6人に1人の割合で介護職員が職場から去ったという計算になります。

同センターによる前年度の調査結果(16.5%)と比較した場合、約0.2ポイント上昇したことになりますので、離職率は悪化傾向にあると言って良いでしょう。

ではこの値が他産業と比較してどうかということですが、全産業の平均離職率は約15%です。(厚生労働省調査)

16.7%は全産業平均値より高いものの、著しく悪いと言えるほどの数値ではありません。

転職すべきかどうか悩んでいる転職予備軍はかなり多いと見られる

では転職すべきかどうか悩んでいる方々の割合も、他産業とそれほど大差はないのでしょうか。

離職率16.7%という数値で留意しておかなければならない点ですが、「離職率」とは「実際に離職に踏み切った割合」を指すということです。

実際に離職せずとも介護職を辞めたい、他の仕事に転職を考えているという潜在的な離職予備軍の割合は他業界よりかなり高いと見ることができます。

その根拠として次にご紹介するのが、介護職員の方々の職場に対する悩みや不満などのアンケート結果です。

介護職員の方々は職場に対してどのような不満や悩みを抱えているのか、転職を検討している方々はどのくらいの割合に及ぶのか、データと共にご紹介することに致します。

介護職員の職場に対する不満や悩みの内容と割合

介護労働安定センターが平成25年度に実施した介護労働実態調査において、介護職員に対する職場への不満や悩みに関するアンケート(選択方式・複数回答可)が行われました。

同アンケートによりますと、介護職員が回答した不満や悩みの上位ベスト10と「特になし」と回答した割合は次のとおりの結果でした。

職場に対する悩みや不安、不満などについて(複数回答可)

  • 1位.人手不足 45.0%
  • 2位.賃金が低い 43.6%
  • 3位.有給休暇が取得しにくい 34.5%
  • 4位.身体的負担が大きい (体力に不安がある) 31.3%
  • 5位.精神的なきつさがある 28.5%
  • 6位.社会的評価が悪い 28.2%
  • 7位.休憩が取得し辛い 26.8%
  • 8位.深夜時間帯等の不測事態に対する不安 21.0%
  • 9位.健康面(感染症など)に対する不安 14.3%
  • 10位.労働時間が不規則 13.4%
  • 特に悩み、不安・不満等は感じていない 9.2%(全選択肢19項目中13位)

何らかの悩みや不満を抱えている方が9割以上

アンケート結果のとおり、悩みや不満などがないと回答した方は10%未満に留まります。

つまり9割以上もの介護職員が職場に対して何らかの悩みや不満、不安などを抱えているということです。

ではこの数値が日本人労働者の平均的な職場に対する満足度と比較した場合にどのようなことが言えるかですが、ISSPという国際比較調査グループ機関による世界的調査(2015年)で、日本人の職場に対する満足度が「約60%」という結果があります。

ISSPの調査はシンプルに職場に対して満足か不満かを調査した結果ですので、介護労働安定センターの調査結果と単純比較はできません。

しかし、その点を差し引いたとしても、日本全体の平均的な職場に対する満足度と比較した場合に介護職員の満足度はかなり低いと言わざるを得ません。

「今の勤務先で働き続けたい」は6割未満

介護労働安定センターは平成28年度の介護労働実態調査において、「勤務先に対する希望」について介護職員に対する調査も行っています。

「勤務先に対する希望」に対する調査とは要は現在の勤務先で働き続けたいか、それとも転職したいかの希望に関する調査であり、その結果は次のとおりでした。

勤務先に対する希望(回答割合が多い順)

  • 今の勤務先で働き続けたい 56.5%
  • わからない 23.3%
  • 別の勤務先(介護業界)で働きたい 8.6%
  • 介護、医療以外の勤務先で働きたい 3.8%
  • 医療関係の別の勤務先で働きたい 2.5%
  • 働きたくない 2.2%

離職予備軍が4割強

この結果から現在の勤務先で継続して働くことを希望している割合が、6割を切っていることが判明しました。

一方介護業界や医療業界を含め、現職場からの転職をはっきりと希望している割合が約15%という結果でした。

これに「わからない」や「働きたくない」と回答した方々を離職予備軍と捉えて加えた場合、予備軍は4割強となります。

つまり10人中4人以上の介護職員が現職に留まることに明確に「NO」、または「わからない」と悩んでいるのが介護業界の実態なのです。

介護職員の転職先

その1:別職場への転職

先ほどの調査結果からわかるとおり、介護職員の約1割が転職先として検討しているのが、介護業界の別の職場です。

介護職はそのまま継続したいが、現在の勤務先で働き続けたくないという方の選択肢が別の職場となりますが、別職場への転職はありかなしか、メリットとデメリットを比較してみることにしましょう。

別職場へ転職するメリット

  • 現職の実務経験を活かすことができる
  • (介護関連の)資格を活かすことができる
  • 現職の人間関係から解放される
  • 転職先次第では給与アップが期待できる
  • 有給休暇取得状況や残業時間数、休憩取得状況など事前に調査した上で転職すれば、労働条件を改善できる

別職場へ転職するデメリット

  • 転職先の職場では新入りとなるため、一から人間関係を築く必要がある
  • 施設利用者やその家族とも人間関係を一から築く必要がある
  • 職場環境や労働条件、年収等全ての条件で現職を超える転職は難しく、何らかの妥協を強いられる可能性が高い

離職率は二極化している・・・別職場の転職は検討の価値大

この記事で度々登場している介護労働安定センターの平成25年度介護労働実態調査の結果に基づくと、介護職員離職率が30%以上に及ぶ施設が2割強ほどある一方、離職率が10%未満という施設が4割強あることが判明しています。

どの介護施設も似たような離職率ということではなく、離職率が低い施設と高い施設の二極化が生じているのです。

離職率が低い施設というのはその施設で働いている介護職員の満足度が高い施設と見なせますので、同じ介護業界であっても職員満足度が高い施設と低い施設で二極化していると言えます。

従って職員の満足度が高い職場に転職すれば現職での悩みや不満などを解消できる可能性は大いにありますので、別職場への転職は検討の価値大と言って良いでしょう。

留意点:離職率が低い職場=競争率が高い

ただし、離職率が低いということは職員が辞めないということですから、そのような施設は中途採用の求人募集もそれほど必要が生じない施設となります。

その結果、中途採用は狭き門となります。

転職できるかどうかは、これまでの経験や実績、更には資格の有無や資格グレードなどによって左右されることになりますので、満足度の高い転職を実現させるには自分自身ならびに介護職としてのキャリアを磨く努力が大切になってきます。

その2:他業界への転職

転職先の候補として次に多かったのが他業界です。

介護職員の方が介護業界以外の業界へ転職する場合についてもありかなしか、メリットとデメリットを踏まえながら考えてみることにしましょう。

メリット

  • 介護業界より平均年収が高い業界の方が多いため、年収アップが期待できる
  • 介護業界特有の狭い、閉鎖的な人間関係に悩まされなくなる
  • 職種次第では少々体力が衰えても、長く仕事を続けることができる
  • 成長している企業に転職すれば昇進する機会も得やすくなる

デメリット

  • 中途採用では業務経験のある即戦力人材が好まれるため、転職しにくい
  • 未経験で転職できたとしても、業務を一から覚えてゆかなければならない
  • 未経験職種へ取り組む場合には年収ダウンも覚悟しなければならない場合もある
  • 職場では年齢的に下であっても自分よりキャリアや経験では上となるとため、年下にあごで使われるような場面があっても我慢しなければならない
  • その職種が合うか合わないか、やってみて初めて分かることもあり、選択を間違えてしまえば介護職以上に就業を後悔する場合もある

介護職に戻るという選択も視野に入れてチャレンジする

メリット、デメリットを通じて言えることは、他業界へ転職するならどんな職種や業界を選ぶか、どの企業を選ぶか、求人職種と求人企業の研究が不可欠だと言うことです。

未経験者に寛容な職種や業界もあれば、そうでない職種や業界もあります。

また一般的には未経験者に寛容な職種や業界であっても、企業によっては冷たい場合もあります。

未経験者でも活躍できる職種や業界、更には企業かどうかを丹念に調査し、慎重に選ぶことが転職の成功へとつながります。

では万一転職が失敗となった場合にはどうすべきかということですが、ご承知のとおり、介護業界は経験者にとって転職しやすい業界です。

万一転職が失敗だったという場合、介護職に戻るという選択肢もあるということです。

こうした選択肢をセーフティネットとして受け入れることができる方なら、他業界の転職も積極的に考えて良いと言えます。

介護職員へオススメの職種

業務未経験といっても、職種によっては介護職の経験などを活かせるものもあり、そうした職種であれば採用確率も高まります。

そこで介護職員の方が他業界へ転職する場合のオススメ職種を3つご紹介しておきます。

営業職

介護職はコミュニケーション能力と状況に応じた対応力が求められる仕事ですが、こうした能力は営業職において特に役立ちます。また、営業職の求人では営業経験者のクセを嫌い、未経験者を好んで募集している場合も多いことで有名です。

更に、高齢者を対象とした商品を販売している企業にとって介護職経験のある営業職員は貴重な戦力となる可能性が高いため、そうした商品を販売している企業の営業職は狙い目といえます。

店舗販売職

営業職同様、顧客との柔軟な接客力が求められる店舗従業員、特に販売職も介護職の経験が活かしやすい職種の一つです。こちらも高齢者向け商品を販売している店舗は勿論のこと、例えばベビー用品など、高齢者が自分の家族に購入する商品を扱っている店舗の販売職などでは介護職経験者は好まれます。

医療系事務職

こちらは資格取得が前提となることとパソコンスキルや事務処理能力も求められますが、そうしたスキルや資格があれば転職しやすいのが医療系の事務職です。介護職の経験者であれば医療機関との連携方法などについて明るいことと、患者の立場になって対応できる点も評価されるからです。
医療系事務職は通信講座など多数ありますのでそれらを利用して学習し、資格を取得すると良いでしょう。