転職する前にやっておいた方が良いと言われることの一つに「ローンを通すこと」がありますが、果たしてこの話は事実なのでしょうか。

また、転職前にローンを通すことには何らデメリットはないのでしょうか。

ここでは様々な噂が飛び交うローンと転職の関係について、金融機関担当者からヒアリングした内容や具体事例などをもとにわかりやすく解説致します。

転職前にローンを通した方がいいってよく目にするけど本当?

ネット上で検索を行ってみると、「転職前にローンを通しておいた方が良い」といった主旨の記事はたくさん目にすることができますが、果たして本当かどうか、この事実から確認することにしましょう。

複数の金融機関の融資担当者へヒアリングしたところ、

「総論としては正しいが、各論では正しくない」

というのが”最も正しい”解答となります。

なぜこうした結論になるか、解説致します。

総論で正しい理由:転職すると「勤続年数」がネックとなってしまうため

総論という前置きが付きますが、転職前にローンを通しておいた方が良い最大の理由はローンの審査項目の一つ「勤続年数」がネックになるからです。

ローンの審査項目に年収や居住年数、年齢等々様々な項目がありますが、中でも「勤続年数」は大変重視される項目です。

そのため、他の項目が良くとも勤続年数が短ければローン審査は確実に落ちやすくなります

具体的な基準は金融機関によって異なりますが、金融機関によっては勤続年数に足切りラインを設けている場合もあり、足切りラインを下回れば他の項目が良くとも自動的に不合格となってしまう場合もあるほどです。

なぜそれほど「勤続年数」を重視するのか

金融機関はなぜそれほどまで「勤続年数」を重視するのでしょうか。

これはお金を貸す側の立場で考えて頂ければわかります。

通常ローンというのは、数年程度の長期にわたって貸したお金を少しずつ返してもらう仕組みになっています。

貸す側からすれば数ヶ月しか勤務実績がない方と、数年以上の勤務実績がある方なら断然後者の方が安心感が高いからです。

「勤続年数」の評価は”現職の”勤続年数

転職後の勤続年数は大変短いものの、中には前職の勤続年数が5年ある、10年あるといった方もいるかも知れません。

しかしながら、一般的なローン審査で問われる勤続年数の実績は「現職のみ」です。

過去にいくら長期の勤続年数があってもそれを加算して評価されることはほとんどありません。

その結果、転職前なら余裕でローンに通る方でも、転職直後ではローンが通らなくなる可能性が一気に高まります。

これらの事実から「総論」としては「転職前にローンを通しておいた方が良い」との見解は正しいとなります。

各論では正しくない理由:審査する金融機関やローン商品によっては例外がある

転職前にローンを通しておいた方が良いという見解は総論としては正しいのですが、各論、即ち個別具体的なケースなら必ずしも正しいとはなりません。

例えば皆様がお金を貸す場合、次のような方をどう評価するでしょうか。

零細企業に10年勤務した後東証一部上場企業に正社員として転職したばかりの方

いくら勤務先が東証一部上場企業であっても転職後の勤続期間が短いのでやはり不安だと評価される方も勿論いるでしょう。

しかし、中には「零細企業より東証一部上場企業の方が倒産リスクが低いので返済に対する安心感が高まる」と評価した方もいるはずです。

こうした評価の違いが発生することは金融機関にもそのまま当てはまります。

勤務先に関係なく勤続年数を重視して審査を行う金融機関もある一方、現職が上場企業であれば転職の経緯なども踏まえて前向きに審査する金融機関だってあるのです。

また同じ金融機関のローンであっても、ローン商品によって審査基準や審査プロセスが多少異なる場合もあります。

その結果、例えばA銀行が提供しているBというローンは転職後に組めなかったか、Cというローンであれば転職後でも組めたというケースが現実に起こっています。

更に極少数ですが、勤続年数不問で審査してくれるローン商品も登場しています。

そのため「各論では正しくない」となります。

近年の転職ブームが背景となっている

各論ながら勤続年数に対し柔軟な審査を行うケースがなぜ出てきたかといいますと、背景としてあげられるのが近年の転職ブームです。

かつて転職は後ろ向きなイメージがありましたが、現在では転職を繰り返すたびにキャリアアップを実現する欧米のビジネスマンのようなケースも生まれており、そうした社会変化を金融機関側も無視できなくなってきたからです。

こうした状況から、転職と大きく関わる「勤続年数」に対しては今後も柔軟に評価しようと考える金融機関が増えてくる可能性もあるため、ローンを通すのは転職前が良いという噂は全面的に正しいとまでは言えないのです。

ローン商品にはどのようなものがある?

同じ金融機関であってもローン商品によって審査基準が異なるということをお伝えしましたが、そもそもローン商品にはどのようなものがあるか、代表的な商品例を確認しておくことにしましょう。

住宅ローン

ローンの代表格と言えば住宅ローンと言って良いでしょう。

住宅ローンは皆様もご承知の通り、住宅を購入するする場合に借り入れ可能なローンのことです。

住宅ローンは現在金融機関が最も販売に力を入れているローン商品で、大変熾烈な競争が繰り広げられており、1%を切る超低金利のローンも珍しくない状況となっています。

リフォームローン

自宅をリフォームする場合に、リフォームの工事代金やリフォームに伴って必要になる住宅設備の購入資金として利用できるローンです。

金利としては住宅ローンより若干高いものの、ある程度まとまった資金需要が期待できることから、こちらもかなり低金利で利用できるローンが増えつつあります。

自動車ローン、マイカーローン

自動車ローンまたはマイカーローンという呼称は、金融機関によってネーミングが異なっているだけでどちらも同じローンです。

このローンは、マイカーとして自動車を購入する場合の費用を借りれる主に個人向けのローンです。

自動車ローンには金融機関が提供しているローンだけでなく、自動車ディーラーが提供するディーラーローンもあります

フリーローン

フリーローンとはローンの使い途が主に「事業性資金ではない限り原則自由」となっているローンのことです。

資金の使い途に縛りがないので自由度が高い反面、金利はかなり高いのが一般的です。

カードローン

カードローンは事業性資金ではない限り原則使い途自由、金利がかなり高いという点ではフリーローンと同じです。

フリーローンとの大きな違いはフリーローンが「1回限り」の融資であるの対し、カードローンはちゃんと返済していれば限度額を超えない範囲で何度でも借り入れが可能という点です。

ブライダルローン

ブライダルローンとは文字通りブライダル費用の資金として利用できるローンです。

例えば挙式や披露宴の会場費やハネムーン費用、引き出物費用や宴会の撮影費用など、ブライダルに関わる費用であれば全てローンの資金対象となります。

ローン商品と転職の関係について

転職前に通しておいた方が良いローンあるいは転職後でも影響がないローン商品とは?

代表的なローン商品を6つほどご紹介しましたが、お伝えしましたとおりローン商品にはそれぞれ審査基準があります。

これらローン商品の中で転職前に通しておいた方が良いローン商品はどれでしょうか。

逆に転職後でも影響がない、あるいは少ないローン商品とはどれでしょうか。

転職前に通していた方が良いローン商品:全て

まず転職前に通しておいた方が良いローン商品ですが、この答えは「全て」となります。

金融機関によっては転職による勤続年数の短さが審査のネックにならない場合もありますが、例外的なケースです。

多くの金融機関、多くのローン商品でやはり「勤続年数」は審査で重視されますので、どのようなローン商品であってもできる限り転職前に通しておいた方が良いことは間違いありません。

転職後でも影響がない、あるいは少ないローン商品は住宅ローン?

転職前に通しておいた方が良いローン商品の答えが「全て」となりましたので、転職後でも影響がない、あるいは影響が少ないローン商品は「ない」となるところです。

ただし各論としてお伝えしたとおり、全くない訳ではありません。

転職後でも影響がない、あるいは少ないローン商品として例外的な審査をしてもらえる可能性があるのは「住宅ローン」です。

「住宅ローン」は審査が厳しいので逆に考慮してもらえる可能性がある

住宅は一生で最大の買い物とも言われるぐらい、大きな資金が必要となる買い物です。

安価なマンションであっても都心なら3千万はしますし、タワー型の4LDKや庭付きの戸建てとなると郊外でも5~6千万円はします。

これほど大きな資金を貸し付ける訳ですから、フリーローンで50万円借りる場合より入念な審査が行われることは言うまでもありません。

しかし、念入りに審査が行われるということは機械的な判断をせず、審査部門において細かくローン申込者の経済状況や勤務状況のチェックが行われることを意味します。

実はこの審査の厳しさにこそ、チャンスが生まれる可能性がある訳です。

全ての金融機関がそうだとは言えませんが、大衆向けの少額ローン商品などは申込みの審査基準がマニュアル化されており、融資の判断が機械的な判定に則って行われている場合が少なくありません。

そうした審査方法であれば、いくら転職先が良くとも勤続年数が少なければ自動的にはねられてしまう可能性が高まります。

一方、住宅ローンは人間の手によって入念に審査が行われるため、例えば同じ業界での転職等、キャリアアップにつながるような転職を果たした場合には好意的な評価を得られる可能性が出てきます

実話として、転職したばかりの方が住宅ローンを申し込んだところ、キャリアアップ型の転職と評価され、前職の勤続年数を加味してもらい住宅ローンに通ったケースが生じています。

繰り返しとなりますが、どんな金融機関もこうした審査を行ってくれる訳ではありません。

むしろこうした好意的な審査をしてくれる金融機関の方が例外です。

従って過度な期待は禁物ですが、住宅ローンであればこうした可能性もゼロではないということです。

ローンを転職前に通すメリットとデメリットについても確認しておきましょう!

総論としてローンを組むなら転職前の方が望ましいとお伝えして参りましたが、転職後より通しやすいという理由以外に何かメリットはないのでしょうか。

また、転職前にローンを通すことでデメリットは生じないのでしょうか。

転職前にローンを組むことで生じるメリット・デメリットについても確認しておくことにしましょう。

転職前にローンを組むメリットは

転職前にローンを組むメリットには、転職後より組みやすいというメリット以外に次のようなメリットがあります。

転職活動に集中しやすくなる

どのような目的のローンであれ、ローンを利用しなければならない状況とはまとまった資金が必要になっている状況と言えます。

そうした状況のまま転職活動を続けることは、考えないようにしても資金作りのことが気になってしまうため転職活動への集中力を削ぐ要因になってしまいます。

ローンを組む必要性があるなら、転職活動を終えて落ち着いてからと考えるのではなくスパッと借りて、気持ちを全面的に転職活動に向けた方が集中しやすくなります。

ローンを抱えれば転職で成功したいという強い目的意識が芽生える

借り入れすれば当然返済しなくてはなりません。

その結果、転職活動をいい加減に行うことはできなくなりますので、転職活動に対する目的意識やモチベーションを高めることに役立ちます。

転職前にローンを組むデメリットは

転職に失敗したらどうしようという不安やプレッシャーが高まる

借入を行えば転職に失敗できませんので、良い意味で緊張感が高まることが期待できる反面、それがプレッシャーとなってしまう可能性もあります。

この点は人によって異なりますが、マイナス思考傾向が強い方なら悪いプレッシャーとなってしまい、失敗したらという不安感から転職活動や転職先選びが消極的になってしまう可能性が高まります。

住宅選びで失敗する可能性が高まる

住宅購入は一生に一度の大きな買い物ですから慎重に物件を選び、判断する必要があります。

転職前の方がローンが通りやすいからという理由だけで住宅購入を急ごうとすると焦ってしまい、住宅選びで失敗してしまう可能性が高まります。

このように転職前にローンを組むことにはメリット、デメリットの双方があります。

「転職する前にローンを組んでおこう」だけではなく、ローンの必要性とタイミングをよく踏まえた上で慎重に検討することが何より大切です。