現役薬剤師ものすごい愛が語る!薬局利用で知ってほしい8つのコト

ものすごい愛。札幌在住。エッセイスト、薬剤師。新刊エッセイ『今日もふたり、スキップで ~結婚って“なんかいい”』 (大和書房)が好評発売中。AMにて恋愛相談コーナー『命に過ぎたる愛なし』を連載中。

twitter:@mnsgi_ai
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2020年7月、石原さとみさん主演のフジテレビ系列のドラマ『アンサングシンデレラ』が放送された影響か、今までほとんど注目されてこなかった“薬剤師”という職業に注目が集まりました。

それに伴って、「へぇ、薬剤師ってこんなこともやってるんだ」「こういう風に仕事してるんだね」と、一般の人たちの理解が深まる手助けになったように思います。

しかし、『アンサングシンデレラ』は病院薬剤師をメインにフォーカスした内容。そして石原さとみさんの美しさにため息をつくフィクションドラマ。

薬剤師と一口に言っても、調剤薬局やドラッグストア、卸、学校、製薬メーカー、治験コーディネーター、研究、麻薬取締官など、多岐にわたります。

職種によって業務内容はさまざまですが、特に調剤薬局とドラッグストアの薬剤師とは、みなさんも接する機会も多いのではないでしょうか。

ちなみに、わたしはドラッグストアでのOTC(一般用医薬品)薬剤師を数年経て、なぜか飲食店のホールやら無職やらの期間を挟み、現在はエッセイストとして活動する傍ら、調剤薬局の薬剤師として勤めています。

そんな自身の経験から、薬剤師の仕事に対して世間が抱いている誤解を解き、さらにみなさんにぜひともお願いしたいことについて、これからお話ししたいと思います。

薬剤師の仕事って楽チンなんじゃないの?

「薬剤師なんてさぁ~処方箋通りに棚から出した薬を袋に入れて患者に渡すだけでしょ?」
「ただそれだけのことなのに! どうしてこんなに時間がかかるんだ!」
そんな声が、あちらこちらから声が聞こえてきます……。

いつもいつもお待たせしてしまい、たいへん申し訳ございません……!

でも、調剤薬局の薬剤師業務というものは、そんなに単純なものではないのです。

調剤薬局の薬剤師の仕事は、大きく分けて4つあります。

  1. 調剤
  2. 監査(必要があれば疑義照会)
  3. 服薬指導
  4. 薬歴管理

調剤とは、簡単に説明すると患者さんからいただいた処方箋に従って薬を用意する業務。

しかし、調剤ひとつとっても、ただ棚にある薬をひょいと取っているだけではありません。

粉薬やシロップに関していえば、定められたルールに則って計量をし、処方医からの指示によっては軟膏やクリームの計量をしたうえで混合する作業もあるのです。

さらには、たくさんお薬が出されている患者さんが飲み間違いのないように、“一包化”という、1回あたりに飲むお薬をまとめて分包することもあります。

そして、監査業務では処方箋の記載事項は合っているか、調剤された薬の種類や数は合っているか、処方箋の内容は適切か、過去の薬歴と照らし合わせて患者さんのアレルギー歴や副作用歴にある薬が処方されていないか、他の病院から処方されている薬も含めて飲み合わせに問題はないかなど、多くの確認をします。

時には、「この薬は食後に飲まなくちゃいけない薬なのに、食前になってるぞ……おかしいな……」「あれ! 処方していい量の上限超えてない? アカンやんけ~!」なんてこともあるので、決して気は抜けません。

そういう不備があった場合、医師に確認をする疑義照会という作業が加わります。

「そんなことを言って! お医者さんなんだから間違うわけないでしょ!」という医師への信頼、よーくわかります。

死ぬほど勉強をして医学部に入り、学生時代も血反吐を吐く思いで勉強をして難関の医師国家試験を突破し、現場で働くようになってからも日々勉強や研究を怠らない医師のみなさまはほんとうに立派で、頭の下がる思いです。

お医者さんって超賢いし、なんの病気かわかっちゃうし、ちゃんと治してくれるし、マジで最強。

でもね!!! お医者さんも人間だから!!! どんなに立派な人だろうが賢い人だろうが細心の注意を払って気をつけていようが、間違うことも必ずあるから!!!

医師による診断や処方にミスがなかったとしても、名前が酷似している薬を入力する段階で誤って選んでしまった可能性や、受診時に患者さんがお薬手帳を出し忘れたために併用薬を確認できなかったことで、一緒に飲んではいけない薬が処方されてしまった場合も考えられます。
たとえそれらの内容に問題がなかったとしても、入力された保険番号が間違っている、なんてことも。

薬剤師とは、患者さんの命を救う仕事という直接的なものではなく、患者さんの命を救う仕事をしている人のミスを見つける、いわゆる粗さがし要員です。
いやはや、なんとも嫌~な仕事だなぁ……と自分でも思います。

でも、わたしたち薬剤師は絶対に、絶対に見落としがあってはならない、“最後の砦”なのです。
だからこそ、患者さんをお待たせしないようにスピード感を重要視するのではなく、間違いがないことを最優先しています。

急いでいるのは重々承知ですが、どうか、「おっせぇ~~~~~~~いつまで待たせるんだ~~~~~~」とイライラせず、「絶対にミスのないように慎重に確認してるんだな! 頼むぜ薬剤師!」と寛容な気持ちでお待ちいただけますと幸いです。

薬局で自分の症状の説明をする意味とは

「え? さっき病院でも同じ説明したんだけど……」
これはわたしが薬局で患者さんにお薬の説明や症状の確認をした際に、たまに言われる言葉です。

「なんで同じ説明をしなくちゃならんのだ!」「処方箋を見りゃあわかるだろうが!」というお怒りの声、ごもっともです。でも、そうケンケンしないでください……!

利便性を重視し、多くの患者さんは受診した病院の近くの薬局に処方箋を持って行くのではないでしょうか。

だからこそ、「え? 病院の隣にある薬局なのに? 全部わかってるんじゃないの?」と思ってしまいがちなんですが、実はそれは大きな勘違い。
たとえ目の前にあろうが隣同士にあろうが、病院と薬局はまったくもって別の医療機関なのです。

病院やクリニックのごく近くにある薬局は、その病院などでよく処方される薬を備蓄しているに過ぎず、病院でどういう説明があったか、なぜ受診したかまでは事細かにわからないのです。

処方箋の内容から、どういった症状で受診したのかある程度の予測はできますが、症状の程度はどうしても患者さんに聞くしかありません。

また、先にもお話ししましたが、効能効果はまったく違うのに名称が酷似した医薬品が存在します。

具体例を上げると、バセドウ病の治療に用いられる“メルカゾール”と、帯状疱疹の疼痛治療に用いられることが多い“メチコバール”など。

処方箋の内容から「バセドウ病の治療かな?」と予測していても、いざ患者さんから「前に帯状疱疹になって~」と聞いて初めて、「メルカゾールじゃなくてメチコバールじゃん!?!?」と気づくこともあるのです。

同じことを聞かれるのは鬱陶しく、ついさっき説明したばかりのことをまたしなくてはならないのは億劫な気持ちはよくわかります。
でも、これは自分の健康のためには必要なことだと、ご理解ください。

薬局は薬を処方してくれるところではない

「この薬ほしいんだけど、出してくれない?」
「病院で伝えるの忘れちゃったんだけど、こういう症状もあるから薬を出してほしい」
「病院混んでてるから薬局にきたよ! いつもの薬よろしく!」
中には、そう言って薬局に来られる方もいらっしゃいます。

病院ってなんだか緊張してしまう空気が漂っているせいか、お医者さんに伝えたいことが伝えきれなかったり、薬局に来て思い出すことがあったりしますよね。
わかります、わかりますよ~!

薬局には、当然ながら様々な種類の薬が大量にありますからね。

だからこそ、「薬局に行けば薬を出してもらえるかな?」と思ってしまう方がいるのも致し方ないのですが……残念ながら医療用医薬品は原則処方箋が必要で、その処方箋は医師にしか出せず、薬剤師は勝手に患者さんに薬を出してはいけない、というのが法律で決まっているのです。

「病院混んでた? オッケー! じゃあいつも飲んでる薬、出しちゃうね!」というのは、絶対にやってはいけない行為。
どうか、リラックスした気持ちでお医者さんにご自身の症状を伝えてほしいと思います。

ただ、薬剤師が薬の説明をしている段階で「え? 先生にアレも出してってお願いしたんだけど……なんで出てないの?」という場合もあると思います。

そういうときは、再度病院を受診せずとも、薬剤師から医師に問い合わせることが可能です。

状況によっては「ごめん! 出し忘れた!」と追加で出してもらえる場合もありますし、「いや、今回は必要ないと判断しました!」と出さなかった理由を知ることができます。

不安を抱えたままよりも、きちんと納得できたうえで治療することがなによりも大切ですから、気軽に薬剤師にお伝えくださいね。

お薬手帳は必要?それとも必要じゃない?

薬局の受付で「お薬手帳はお持ちですか?」と聞かれ、「いや、持ってないッス……」と答えるたびに心の中で「お薬手帳マジでいらねぇ~~~」と思っているみなさん、はい! ちょっと待った!

ここでお薬手帳の重要性について、お話しをさせてください。

お薬手帳というのは、言葉の通りその人自身が使用している薬を管理するための手帳です。

全国の医療機関共通となっているため、どの医療機関にかかっても自分のお薬手帳を出しさえすれば、医師や薬剤師が内容を確認することができます。

特に、複数の医療機関にかかっていたり、たくさん薬を服用している人なんかにとっては、命を守るためのツールと言っても過言ではありません。

初めて受診する病院や薬局では、ほぼ必ず問診票を書かされますよね。

その際、おそらく併用薬を記入する欄があるはずです。
「たくさん飲んでるから全部書くのが面倒!」「薬の名前なんてカタカナばかりでいちいち覚えてらんないよ!」と思っていても、お薬手帳さえ出せばそれを省略できるわけです。なーんて便利!

たまに、お薬手帳を持っていない患者さんよっては「飲んでるけど弱い薬だから大丈夫」「血圧の薬ってことしかわからない」と仰る方がいます。

そんなとき、弱いか強いかなんて判断できるかーーーーーーーい!!! と思わず強めのツッコミを入れてしまいそうになります……。

勘違いしないでいただきたいのですが、一概に薬を“強い”“弱い”と分類することはできかねます。なぜなら、その人の症状に合った適切な薬を服用しているから。

薬を服用することによって、健康上の悩みが解消され、目立った副作用がないのなら、それは本人にとって“弱い薬”という認識になるのかもしれません。
でも、健康な人が服用することでなにかしらの健康上の被害が出れば、それは“強い薬”とも言えます。

また、同じ血圧の薬と言っても、その種類によって一緒に摂取してはいけないものも違うわけです。
その判断をするのは、医師ないし薬剤師の仕事なのです。

おそらく、「他に薬は飲んでないからお薬手帳はいらない」という考えの人もいらっしゃるでしょう。

継続して飲んでいる薬もなく、アレルギー歴や副作用歴もなく、今回限りの短期的な治療なのであれば、薬の飲み合わせ等を考えなくてよいという観点から必要性があまりないのは事実です。

ですが、複数の医療機関にかかっておらず、アレルギー歴や副作用歴がなくても、皮膚科で処方されたビタミン剤を継続服用しているなど、定期的に受診して薬をもらっているのであれば、お薬手帳を持参することでお会計が安くなる場合があります。

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薬局によって金額は異なりますが、90日以内に同じ薬局に行くことで薬学管理料がいくらか安くなるのです。
ですから、定期的に通院して薬を服用しているのであれば、お薬手帳を持っていたほうが断然お得!

薬の管理をしてもらえるだけじゃなく、節約にもなるなんていいことづくしです。

頼むから薬は指示通りに飲んでくれ

「つい飲み忘れちゃって……」
「もらった薬は症状が出たときだけ飲んでるんです」
そんな人たちにわたしは声を大にして言いたい。

頼む~~~~!!! ちゃんと指示通りに飲んでくれ~~~~~!!!!

仕事をしている人や学校に通っている人の中には、どうしても指示通りの服用が難しい場合や、忙しくてつい飲み忘れてしまうこともあるかと思います。
昼食後や食前(食事の30分前)は、特に飲み忘れが多いタイミングです。

鎮痛薬など症状が出たときにだけ服用する場合はさておき、用法用量を守り継続して服用することによって、効果が得られる薬は多くあります。
中には、使用と中止を繰り返すことでその薬が効かなくなる場合もあるため、なにより指示通りの服用が重要です。

適切な効果が得られないどころか、症状が悪化しちゃったり、今までの努力がパーになったりするの、めちゃくちゃもったいなくないですか……?
だから! 自己判断での調節や中止はダメ! 絶対!

ちなみに、怒られたくない一心で「毎日ちゃんと飲んでます! 飲み忘れたりしてません!」と嘘をつくことは、まったくもって無駄であることをここでお伝えしておきます。

調剤薬局では、どの患者さんが過去になんの薬をどれだけの日数分処方され、前回来局したのはいつだったかまで、しっかり管理しています。

薬剤師にはぜーんぶわかっちゃうからな! 嘘はいつかバレるんだよ!

「仕事が忙しくてどうしてもこの時間に飲むことができない」「夜勤明けの日は日中寝ている」「毎食後と指示があるけれど自分は朝食は食べない」など、正直にお話ししてくださることで、薬の種類によっては患者さんのライフスタイルに合わせた提案ができる場合があります。

薬剤師はみんなやさしいから、正直に言ってくれな!

処方された薬はあなただけのもの

「この薬ね、とっても効いたから〇〇さんにも分けてあげたの」
わたしの経験上、こういったやさしい方はお年を召した方に多いのですが……お願いですから自分の薬を人にあげるのは絶対にやめてください!!!

医師に処方されたうえで服用している薬というのは、その人の症状や体質に適したものです。

本人にとってはとてもいい薬かもしれませんが、他の人にとっては害になる場合もあります。

中には、それによってアナフィラキシーショックを起こしたり、飲み合わせ次第で普段から飲んでる薬の適切な効果が得られず、結果的に持病が悪化してしまった、なんてことも可能性として考えられます。

たとえ善意からの行動だとしても、アレルギー歴や副作用歴、併用薬がわからない状態で、知識なく気軽に自分のお薬を人にあげてしまうのはとても危険。

もしも、人からもらった薬で重篤な副作用が出た場合、医薬品副作用被害救済制度を利用することができず、経済的に大きな負担になることもあり得ます。

さらに、もちろんあってはならないことですが、メーカーから医薬品の回収などの指示があった場合、薬局から患者さんにご連絡をする場合があります。

大慌てで服用している患者さんに「その薬、飲むのをやめてください!」と連絡をしても「人にあげてしまった」なんてことがあれば、その後の追跡が難しく、患者さんの健康上の安全を守ることが難しくなってしまうのです。

家に腐るほど薬が余っているんだが……

飲み忘れや自己判断による服用の中止で、家にお薬がたくさん余っている人も中にはいるのではないでしょうか。
それ、めちゃくちゃもったいないんです!

自治体や保険によって異なりますが、医療費の自己負担が3割や1割の場合、それ以外の部分はわたしたち国民の税金で賄われています。
要するに、飲まない薬がどんどん溜まっていくのは税金の無駄遣い!!!!

もしも、飲み忘れによって余っている薬があるのなら、受診したときに「家にこの薬がこれだけ残ってて~」と正直に話してください。

そうすることで、処方日数を調整してもらえ、薬が無駄になることを防げます。

大丈夫、医師も薬剤師も「ちゃんと飲まないからでしょ!」と怒ったりしませんよ。

医療費、どんどん削減してこ!!!!!!!

ドラッグストアの薬剤師は落ちこぼれ?

「ドラッグストアの薬剤師なんて、ロキソニン売ってレジ打ってるだけでしょ」
これは、わたしがOTC(一般用医薬品)薬剤師として勤めていたときに幾度となく言われたセリフです。

なぜだか、OTC薬剤師というのは調剤薬局の薬剤師に比べて軽んじられることが多いんですよね。
中には「OTC薬剤師は病院や薬局に入れなかった落ちこぼれ」なんてことを言う人もいました。

わたしが落ちこぼれであることは否定しない! なぜなら留年も国試浪人もしてるからな!!!

しかし、OTC薬剤師も薬のプロ。ドラッグストアで買える一般用医薬品については、病院や調剤薬局の薬剤師よりもずっとずっと詳しいのです。

なんだったら、サプリメントやヘアカラー剤、スキンケア商品、殺虫剤についても日々勉強していますから、薬以外のご相談にも乗ることができます。

現在、国はセルフメディケーション(自己治療)を推奨しているのをご存知でしょうか。
病院に行くまでもない軽度の病気や怪我は自分で手当しましょう、という考えです。

ドラッグストアの薬剤師は、お客様から詳しく話を聞き、アレルギー歴や副作用歴、今飲んでいる薬を確認したうえで、症状に適した薬をおすすめするだけでなく、生活習慣や食事など、養生法のアドバイスもできるよう教育を受けています。

もちろん、状況によっては「すぐに病院に行きましょう!」と判断もできますから、安心して頼ってくださいね。要するに、ドラッグストアの薬剤師は医療費削減の一手を担っているんですよ。

まとめ

さて、ここまで読んでくださった方の中には「そんな責めないでよ……だって知らなかったんだもん……」と思った方もいらっしゃるでしょう。わからなくて当然、だって専門的なことですから。

わたしだって、IT業界の常識や飲食業界のアレコレについては知らないことが多いです。

患者さんの中で薬剤師に対する勘違いが生まれ、理解が得られていない部分が多いのは、健康面でも、経済的にも、とてももったいないことだと思います。

だからこそ、この記事をきっかけにひとりでも多くの人の意識が変わり、QOLが向上することを願っております。

ものすごい愛 著書

『今日もふたり、スキップで ~結婚って“なんかいい”』(大和書房)

結婚して、まる3年。夫婦、ふたり暮らし。
食べさせたいのはきれいに焼けたほうのハンバーグ、ついでにもうひとつ淹れるドリップコーヒー、 眠れなくて深夜に誘う近所の散歩…楽しい、楽しすぎる、楽しくってしょうがないぜ、結婚生活!
読むとどうしても幸せになってしまう。“ものすごい愛” にまみれたサイコーにハッピーな結婚生活エッセイ。
日曜朝の情報番組『シューイチ』で紹介され、大反響!