働き方改革で知っておくべき重要な変化と、法律改正を悪用するブラック企業を見抜くポイント

ブラック企業アナリストの新田龍です。普段はブラック企業を撲滅させる仕事をしてますが、多くの人が「働き方改革」について他人事なのをいいことに、ブラック企業が法律を悪用しようとしている動きがあるので、警鐘を鳴らすためにこの記事を監修しました!
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ブラック企業アナリスト新田龍との働き改革によるブラック企業対策コラボ漫画

ここ数年、メディアでその言葉を聞かない日はないくらい報道されている「働き方改革」。 でも意外と「あなた自身には具体的にどんな影響があるのか?」と聞かれても分からない人 が多かったり、「そんなの大企業だけの話でしょ!?ウチみたいな中小企業には関係ないよ…」 と無関心な人もいたりするようです。

しかし、これは日本で働くすべての人に関わる法律改正なんです!知らない/無関心のま まだと、法を悪用するブラック企業に騙され、巧妙に搾取されてしまうかもしれません。今 回は、働くあなたにとって重要な変化と、悪い方法を見抜くポイントについてお伝えし、令 和時代を賢く生き抜く指針をお伝えしていきましょう。 (そもそも「今なぜ『働き方改革』が必要なのか?」という点については、本サイトの別記事(https://success-job.jp/hatarakikata-kaikaku/)で詳しく説明してますのでお読みくださ いね)

まず簡単に説明すると、これまで~現在の日本ってこんな状態です。

・高度成⾧期の日本は、モノが不足して人口も増えてたので、モノを作れば売れる時代だっ た

↓会社では「残業も転勤も厭わず、⾧時間労働できる人がエラい!」という雰囲気になる

↓家庭も顧みず、会社のためにバリバリ働ける人が評価され、出世し、同じような人を引き 立てて、同じような考えの管理職集団が出来上がる

↓⾧時間労働や、それに伴うハラスメント、過労死などが問題に

↓一方で、少子高齢化により日本の人口は減少を続け、それに合わせて労働力も減る一方

↓モノも有り余ってるので、よほど価値があるものか、新しいアイデアがないと売れない

↓共働き家庭が多くなり、高齢化による介護の必要性も増え、フルタイム労働が難しい人も 増えた

→もうこれまでのやり方では、今後の労働力不足は乗り越えられない!!

そう、時代は大きく変わったんです。「日本的な労働慣行」(終身雇用、年功序列、新卒一括 採用、滅私奉公…など)は、人口が増えて経済も成⾧していた時期にフィットして成功した やり方で、評価されていた時期も確かにありました。しかし今、社会構造も経済環境も変化 してるのに、日本ではまだ「一時期だけうまくいったシステム」を使い続けようとしてボロ (⾧時間労働、ハラスメント、過労死など)が出ているわけです。なんとかこのタイミング で変えていかないと、経済どころか日本という国自体が傾いてしまうかもしれないという オオゴトなんですね。

ということで、今回の「働き方改革関連法改正」は、低成⾧&少子高齢化社会を皆で生き抜いていくために必要な環境整備といえるでしょう。労働関係の 8 つの法律がまとめて改正 され、今年の4月から順次施行されていっています。

本稿では、特にその中でも私たちに直接関係してくる2 つの変化、「残業時間上限規制」と 「5 日間の有給休暇取得義務」について説明するとともに、「ブラック企業が法の目をくぐ り抜ける手口」も暴露し、あなたが理不尽な思いをしないように対策していきましょう。

ブラック企業アナリスト新田龍との働き改革によるブラック企業対策コラボ漫画

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<残業時間上限規制について>

これまで、日本の労働基準法には大きな抜け穴がありました。そもそも法律上、私たちの労 働時間は「1 日 8 時間、1 週間 40 時間まで」と明確に決まってるんですが、決められた手 続きさえ踏めば、月何百時間、年何千時間でも無制限に残業させられる仕組みになっていた んです。

しかし今回の法改正によって、残業時間の上限は原則「月45時間、年360時間」となり(※ 1)、それ以上残業させると違法として罰則が適用されることになりました。これはけっこう 画期的なことなんですが、コトの大きさに経営者も我々従業員もまだ気づいてないようで すね。(※1:特例として「臨時的な特別の事情がある場合」に限り、1 年間に 6 ヵ月まで、 休日労働を含む単月100時間未満、複数月平均80時間まで可)

改正前の残業時間上限規制

幸か不幸か、この残業上限規制をカン違いしている人がまだまだ多いんです。よくあるのは こんなパターンですね。

改正後の残業時間上限規制

・経営者のカン違い 「ウチも働き方改革やるぞ!早く帰れ!もっと休め!でも目標は達成しろよ!!」

・従業員のカン違い 「働き方改革で残業規制だから、定時になったし帰るね!仕事終わってないけど…」

経営者と従業員がこのようにカン違いしたままだと、従業員は疲弊してるのに仕事はなか なか終わらず、結果的にビジネスは傾いて会社は潰れてしまうかもしれません。「働き方」 改革というネーミングの印象なのか、どうしても「個人の作業の生産性を上げよう!」とい う捉えられ方をしますが、私はむしろ「ビジネスモデル自体の構造改革だ!」と説明してい ます。

すなわち、会社(経営者)にとって大事なのは「何がなんでもノー残業にする!」ということではなく、「儲からない事業は見直す」「利益が出るビジネスをやり、ノー残業でも会社が 回る業務量や目標設定、環境整備をおこなう」ということなんですね。

そのためには管理職も「ムダな作業や非効率な業務フロー、業務配分等を徹底的に見直し、 働きやすい環境を整える」「短時間で効率的に仕事をこなせる人を正当に評価する」ことで、 「何事も残業でカバーする」という悪習を根絶することが必要です。

それは従業員も同じ。「定時になったから帰る」のではなく、「定時までに仕事を終わらせる」 という、マインドの 180 度転換が必要になります。そのためには、これまでダラダラと時 間をかけてやっていた仕事を「密度濃く」「効率化を工夫し」「定時までにやり切る」という、 私たちにとっても相応のプレッシャーがかかる厳しい働き方を実践しないといけません。 経営者にも従業員にも相応の痛みを伴う変革を実践することこそ、「働き方改革」の本質な んですね。

<5日間の有給休暇取得義務について>

有給休暇の取得義務化改正前は有給が取りにくかった

有給休暇の取得義務化改正後は一年に5日は有給が取れる

 

日本人は、有給休暇取得率(50%)でも取得日数(10日間)でも世界最下位です。しかも、 「有給休暇取得に罪悪感がある」と回答した人は 58%にものぼり、こちらの割合では世界 トップでした。まさに社畜大国と言えるでしょう。

法律上、有休取得は労働者の権利であり、いつ取っても、どんな理由でも会社は妨げること ができません。それでも取得しない(できない)理由のトップ3は、「人手不足で休めない」 「いざという時のために取っておく」「仕事する気がないと思われたくない」でした。休ま ないと決めるのは本人の意志ですが、休みたいのに休めないならそれは会社の問題です。そ んな、労働者に甘えた会社のスタンスを根本から戒めるのが、本年 4 月 1 日から全企業を 対象に例外なく発効したこの「有休取得義務化」です。

有給休暇の5日の時季を指定し取得させる義務が課せられました。

これは文字通り、10 日間の有休が発生してから 1年以内に有給休暇を5 日取得することを 義務付ける法律です(※2)。

自主的に10 日の有休を消化し切れていれば問題ないので対象 外で、あくまで「休まない人」「休めない人」に対して会社から時季を指定して「強制的に でも休ませる」ことを主旨としています。(※2:年次有給休暇が10 日以上付与された従業 員が対象。正社員のみならず、アルバイト、パートなども対象となる)

有休関係なく働きたい人によっては「ありがた迷惑」だと感じることもあるかもしれません が、これも働き方改革の一環として、労働環境の見直しにはよいきっかけになるのです。な ぜなら、この決まりに違反した場合、従業員1 人当たり最大30万円の罰金に処せられるから。⾧時間労働が常態化し、仕事も属人化しているような会社では到底実現できないので、 業務効率化や属人化の解消が進み、働きやすい環境へと変化していくことが期待できます。

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<ブラック企業が法の目をくぐり抜ける手口>

残業上限規制、有休取得義務化のいずれも、これまでの「古いOS」のもとで動いているシ ステムを変革させるよい契機になる試みですが、変革には生みの苦しみが伴います。それく らいの労苦を経るくらいなら、法の目をかいくぐってうまい具合にやり過ごしたいと考え るブラック企業も存在することでしょう。ここからは、そんな悪意ある会社がひねり出しそ うな手口をご紹介します。もしあなたが会社から同じようなことをほのめかされたら、「も しかしたらブラック企業かも…?」と重々留意してくださいね。

【有休取得義務化の抜け道】

・もともと休みだった土曜や日曜、祝日を勝手に出勤日に変えられ、でも実際は休んでいる ので「有休消化した」扱いにされる ・夏季休暇や年末年始休暇を減らすか無くす代わりに、有休消化させる

既に筆者の周囲からも被害報告が寄せられていますが、有休 5 日付与が困難なブラック企 業は、このように「今まで休日だった日を出勤日に変え、そこに有休を充てることで消化す る」という無理強いをしてくるのです。

入社時に約束した労働条件を、労働者の同意なく一方的に悪い方に変えることは「不利益変 更」といい、原則として禁止されています。上記のように、年間休日が実質的に減ってしま う形で有休消化扱いにするのは明らかに不利益変更です。

本来、そんな不利益変更を通すためには、労働者に個別に説明して合意を得るか、労働組合 がある場合は組合と協議して、不利益変更に合意したという「労働協約」を締結しなければ なりません。そういった手続きが何もなされないまま勝手に不利益変更するような会社は、 法律を軽視したブラック企業ですので要注意です。

ちなみに細かいお話になりますが、上記は「当初約束していた年間休日数が減少する」から 不利益変更扱いになっています。似たパターンとして、「毎年お盆の時期に夏季休暇があっ たが、今年から出勤日になり、でも有休を使って休めと言われた。その代わり、新たに有休 が5日分付与された」というケースがあります。こちらについては、「年間休日は5日減る 代わりに、有休が新たに5 日付与されて±ゼロ」なので合法になります。この方法は弁護士も有休強制付与への対処法としてアドバイスしているくらいなので、「夏休みが出勤日にな った!ブラックだ!!」と早合点しないようにご注意くださいね。

【残業時間上限規制の抜け道】

・労使できちんと手続きを踏んで「裁量労働制」を導入する

これだけを見れば、お互い合意して手続きしているわけで、まったく問題ないように感じま すよね。実際、「裁量労働制」自体は何も悪くなく、専門スキルを持った労働者が裁量をも って自由に働くための制度なんですが、仕組み上「実労働時間に応じた残業が認められない」 という側面もあるため、不当な「サービス残業」を隠すためにブラック企業が悪用するリス クもあるのです。

そもそも裁量労働制とは文字通り、個人の裁量に任せて仕事をやってもらうための制度で あり、勤務時間も決められず、出退勤も自由です。ただ誰でも適用できるわけではなく、弁 護士や大学教授、デザイナーやシステムコンサルタント、企業の中核で事業企画する人など、 専門性があって自律的に仕事ができる人に限って導入できるものです。そして、労働時間に ついてはあらかじめ「月○時間働いたことにしておく」という「みなし労働時間制」になっ ているので、実際に何時間残業しても、法的にはその時間分しか働いたことにならない制度 なのです。

働く側にとっても管理する側にとっても自由度が高い制度であるため、組織に縛られたく ないクリエイターにとっては気楽で、実際に筆者の周囲にもメリットを享受している人は 多くいます。しかし、ブラック企業はその自由なところを悪用するのです。よくあるパター ンは

・本来裁量労働制を適用できない職種(営業職、販売職など)に対して適用する

・実労働時間とかけ離れた「みなし労働時間」を設定し、⾧時間労働をさせ残業代を払わな い

・出退勤時間を決め、自由な働き方ができないようにする

といったものです。このようなケースは明らかに裁量労働制を都合よく悪用していますし、 「労働時間も社員もきちんと管理できない会社」だと自ら認めているようなものです。もし あなたの会社でも同じようなことがあれば、労働基準監督署に申告して指導してもらうか、 それでも改善しない悪意ある会社はサッサと辞めたほうがよいですね。

現在はまさに、働き方改革における過渡期にあります。今般の法律改正に合わせて、あなた の会社の制度も変わることがあるでしょう。その変化が法の趣旨に即したものであれば心 配いりませんが、もし本稿で警鐘を鳴らしたような「法の抜け穴」を突こうとするものであ れば本末転倒です。ぜひこの機会に会社を見極め、あなた自身も働き方の改革を実践される ことをお勧めします。

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この記事の監修者

ブラック企業アナリスト新田龍

【ブラック企業アナリスト】新田 龍

働き方改革総合研究所株式会社代表取締役。働き方改革コンサルタント/ブラック企業アナリスト。労働環境改善のコンサルティングと、ブラック企業相手のこじれたトラブル解決が専門。
http://wsiri.jp/

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