杉山卓也が紹介する「薬剤師」という枷にとらわれない自由な生き方

まず始めに:こんな生き方をしています

杉山卓也_挨拶

皆さんはじめまして。杉山卓也と申します。

「薬剤師だからという枷に縛られない自由な生き方」の一例としてこんな働き方をしている薬剤師もいるんだ、という参考になればと思います。

タクヤ先生 Twitter:https://twitter.com/takuyasensei

まずはじめに私の経歴についてお話したいと思います。

私の主業は神奈川県にあります漢方のスギヤマ薬局で完全予約制の漢方相談です。

ただ、この他にも東京都世田谷区に完全予約制の漢方専門店「成城漢方たまり」、同場所に中医学を1年かけて学び、「中医学養生士」の資格を取ることのできる「tamari中医学養生学院」を併設し、経営を行っています。

また、中医学界で唯一のオンラインサロン、「タクヤ中医学オンラインサロン(現時点で約600名の会員が所属)」の運営、これに加えて音声配信メディア「Voicy(ボイシー)」のパーソナリティ、有料記事「note」の配信、漢方専門店舗の経営コンサルタント業や中医学講師として依頼講演を行ったり書籍の執筆を行うなどの活動を行っています。

漢方のスギヤマ薬局以外の活動は「副業」というスタンスで行ってきましたが、副業の規模が大きくなってきたため、3年前に「合同会社Takuya kanpo consulting」を立ち上げ、現在は代表としてこれら全てを並行して正式なお仕事として行っています。

調剤薬局の仕事に合わなかった自分

杉山卓也_薬局

今に至ったきっかけですが、私はもともと大学院を卒業後、調剤薬局チェーン企業に3年ほど勤めていました。しかし医師の処方箋を正確に調剤し、投薬するという調剤業務にどうしても馴染めませんでした。

理由は「自分の力で患者さんを直接治したい」という思いが強かったからだと思います。
あくまでも調剤業務は医師の処方を適正に、安全に患者様にお届けするというのが主のお仕事ですよね。しかしそこに自分の意思を乗せ、患者様に届けることはできない、というジレンマを抱え続けていました。

「薬剤師の仕事はそういうものだよ」と職場の先輩に言われながら3年間、管理薬剤師の仕事も一通り終えたところで調剤薬局を「卒業しよう」と思いました。

自営業は自由にやれる

杉山卓也_薬局2

幸いなことに私の実家は40年前から漢方薬局をしており、調剤を併設しながら漢方を自分の意志でお客様にお勧めしていました。今から15年ほど前になりますが、高齢のために調剤業務に辛さを感じてきた両親(共に薬剤師です)から「家に戻ってこないか」という誘いがあり、調剤薬局を辞めた私にとってはまさに「渡りに船」の状態となったのです。

漢方薬局なら医師の処方箋を介さずに自分の裁量で相談を受け、勧めることができる、という喜びがありました。また、当時まだ拙い漢方の知識しかなかった自分としては実家の漢方薬局で調剤業務をしながら父に漢方を学び、いずれは漢方相談を自分のメインの仕事にできれば、と思っていました。

ところが、なんと私が家に帰ったその年すぐに門前のドクターが急逝してしまい、医院は閉院に。そう、私の当面の給料となるはずだった調剤業務が消滅してしまったのです。

この直後はさすがに焦りましたが、元来前向き思考な性格でしたので「これを機に漢方相談を主の生業にできるように集中すればいい」と思いました。そこから漢方相談に一心不乱に励みつつ、情報発信を広げながら自分の薬局を知ってもらえるようマーケティングを続けました。

自営業の強みで、「なんでも自由にやっていい」というスタイルを取ることができたことは本当にありがたく、また幸いこれが私にピッタリ合っていました。売上が上がってくるまでは大変でしたが、それより楽しく仕事をすることができたことはそれ以上に幸せでした。

副業は主業からの派生で広げていこう

おかげさまで漢方のスギヤマ薬局は次第にお客様が増え、経営状況も1〜2年ほどで安定することができました。

これを聞いて経営についての情報発信方法や、漢方薬のマーケティング、勧め方などを教えてほしいというメーカーや販売店様からの依頼もいただくようになり、経営は順調でしたが、この頃から自分の中に芽生えていたある感情がありました。
それは「このまま漢方薬局でお客様をお迎えすることだけでいいのだろうか?」という思いです。

その理由は漢方相談に来てくださった方が「もっと漢方薬の知識が自分にもあれば」とか「漢方薬を学べる機会が欲しい」というコメントを残されることが非常に多かったことにあります。

一方的に漢方を勧めるだけではなく、自分の持っている「中医学の知識」を学びたい人にお教えしたり、マニアックであるこの中医学という素晴らしい医学をもっと多くの人に知ってもらいたい・・。こんな思いを持つようになり、セミナーの開催を始め、これをきっかけにオンラインサロンの開設や様々な媒体を通じて中医学、そして私自身のことを知ってもらうための情報発信を始めたのです。

あくまでも私にとっての副業は主業から生まれたものであり、副業を広げていくことで主業も高めていくことができなくてはいけない、という前提のもとで行ってきました。

それぞれの活動が連鎖反応で新しいものを生む

杉山卓也_挨拶

薬局で漢方相談をしていると、それではあくまでも「漢方薬を必要とする人」に限定した情報発信しかできなくなります。私が広げていきたかったのはあくまでも「漢方というものに興味はあるけれどどのような形で情報や知識を採り入れたら良いのかわからない人」に対してでした。

だからこそ薬局からの発信からあえて離れた場所からの情報や知識の発信を組み立てるように思考し、実践していきました。

例えば「タクヤ中医学オンラインサロン」では中医学や養生に興味はあるけれど自分一人での勉強では限界があるし、どのように勉強をしていけばいいかわからないという人が主に入会されます。

オンラインサロンの中には教育系のコンテンツも充実していますが、何よりもオンラインサロンの中ではメンバー同士の「交流」が活発に行われています。

メンバーが中医学を柱として薬膳茶を考案し、発売したり、薬膳レシピをまとめや電子書籍を作成したり、様々な勉強会をメンバー間で執り行ったり、とオーナーの私から見てもワクワクするような活動が非常に活発に日々、動いています。

実は私の経営する成城漢方たまりやtamari中医学養生学院はもともとこのオンラインサロンの中でのいち企画からスタートしています。開店にあたってはクラウドファンディングを行い、340万円という大きな支援をいただくことができました。これも「繋がり」が生んだ力です。

今のようにコロナ禍においてオフラインで繋がれなくてもオンラインでの繋がりで現実に大きな波を起こせる、というのがサロンの人気に繋がっているのだと思います。ひとつの副業がまた新しい副業を生み、それらが各々を支え合い、高めていく。これが私の心がけているビジネススタイルでもあり、ライフスタイルでもあります。

 「薬剤師だから」という枷にとらわれていてはいけない

杉山卓也_オンラインサロン

実はこうした活動をしている中で、同業の方(中医学界の方)から何度か批判にあうこともありました。「薬剤師の働き方ではない」「主業がおろそかになるのではないか」などというものがほとんどでしたが、私はこれに対しては笑顔で「そんなことはありません」と自信を持って意見することができました。

そもそも「薬剤師だから」・・・何なのでしょうか。

確かに私が一般的な「薬剤師の仕事」とはかけ離れた仕事を多くしているのは事実ですが、主業をおろそかにしているつもりは毛頭なく、事実これらの活動が増えるほど私や中医学の認知度は確実に上がり、私の相談件数は継続的に増え続けています。

調剤や在宅訪問は確かに薬剤師の大切な仕事だと思います。

ですが、それ以外の仕事を「薬剤師お仕事ではないからおかしい」と批判したり敬遠してしまうことにはとても違和感を感じます。

こうした情報社会においてSNSをはじめとした多くの情報発信ツールを利用することはもはや「やって当然」の時代です。「薬剤師だからこうでなくてはいけない」と思考を停止してしまうことが薬剤師の未来にとっても良いことだとは私は考えていません。

「自分の大切にしている中医学、漢方や養生という健康知識をより多くの人にわかりやすく知ってもらう」

私はこの点において漢方相談を始めた当初から今もブレていません。

「邪道」と言われることもありますが、「正道」で行くことが常に正しいとは思っていません。そもそも「正道」というのは「多くの人が行っていること」というだけのものだと思っています。

大切なのはどれだけ多くの人が自分の広めたいものを受け取り、受け入れてくれるか、という点につきると私は考えています。

仕事は人生の大部分。楽しくするほど充実する

今回私が薬剤師の皆さんに最もお話したかったのは「今のお仕事に充実を感じていますか?そして何よりも楽しんでいますか?」ということです。
仕事は人生の大部分を使う大切なものです。

この時間を苦痛として過ごすのか、それとも喜びとして過ごすのか?

こういうお話をすると多くの方が「収入を得るためには仕方がない」とか「薬剤師の仕事に楽しさを求めない」などとお答えされますが、私はそうは思いません。

仕事とは自分の時間をただお金と交換するものではなく、自分の人生の時間を充実したものにするためのもの、と解釈することが幸せだと考えています。

「薬剤師だから」で思考を止めてしまうのではなく、「どうすれば充実した働き方ができるのか」と思考を進めていくことで今よりもっと素敵な毎日が作れると確信しています。

可能性が無限に広がる現代だからこそ変化を嫌わないでほしいと思います。薬剤師の皆さんが枠にとらわれること無く柔軟で個性的な発想を持ち、楽しんで試行錯誤しながら新しい働き方を作り上げていく毎日を過ごして欲しいと心から願っています。

タクヤ先生 Twitter:https://twitter.com/takuyasensei