自由主義のもと、移民を受け入れることで世界一の経済大国となったアメリカがトランプ大統領登場により、国家としての方針が大きく変わろうとしています。

アメリカで働くことを志望している方々にとって、とりわけ他人事ではなかったのがトランプ大統領が署名したイスラム圏7カ国の人々に対する入国禁止命令です。

日本人が対象になった訳ではありませんが、トランプ氏は日本がアメリカの雇用を奪っているとの主張を繰り返しています。

それだけにアメリカ人の雇用に重大な影響を与える外国からの就労について、全く影響なしと考える方がむしろ無理があると言えます。

ではトランプ大統領の登場により、今後アメリカで働くことを考えている日本人にはどのような影響が及ぶと考えられるのでしょうか。

またそれを踏まえ、アメリカへの転職を目指すためにはどのような心構えや覚悟などが必要になってくるのでしょうか。

今回はトランプ大統領が鍵を握ると言ってもよい、「アメリカ転職」について日本人が考えておくべきことや覚悟などをご紹介します。

影響を受ける可能性大!? 米国のビザについて確認しておこう!

米国国籍以外の人がアメリカに住み、アメリカで働き、アメリカで給料を得るには必ずビザ(※)が必要です。
(※観光や商用での渡航ビザ免除プログラムについてはここでは除外して考えることにします)

冒頭でもお伝えしたとおり、移民に寛容だった国の方針を変えて、アメリカ人の雇用を増やすことを最優先課題としているトランプ大統領の登場により、今後大きく政策が変わる可能性があるのがビザの制度です。

日本人就労者だけが狙い打ちにされなかったとしても、ビザの制度が変われば日本人「にも」影響が及ぶことは避けられません。

そこでまず、現時点でのビザ制度と発行状況がどうなっているかを確認しておきましょう。

就労に関わる代表的ビザは「H1B」・「L1」・「グリーンカード」

ビザの種類は実にたくさんのものがありますが、例えば大リーグのプロ野球選手や投資家等、ごく限られた人だけが手にできる特殊なビザを除いた場合、就労に関わるビザは「H1B」・「L1」・「グリーンカード」の3つが代表選手と言えます。

H1Bビザ

4年制大学を卒業していることと、アメリカでの職務内容が特殊でプロフェッショナルな内容であることが条件となりますが、アメリカへの就職、転職を考える場合に最もポピュラーなビザと言われてきたのがHIBビザです。

特殊またはプロフェッショナルかどうかの要件では、学位と職務内容がシビアに問われます。

例えば会計士であれば4年制大学の商学部や経済学部に在籍し、簿記理論や財務理論を学んだとか、弁護士なら法学部で法律を学んだ等がわかりやすい事例です。

このビザで滞在できる最長期間は最大3年間。

職場(会社と会社が所在している州)が変わっていないことなどの条件をクリアすれば1度だけ更新(※例外規定もあり)可能なので、プラス3年の最長6年間米国に滞在できます。

・近年の発行状況

H1Bビザでポイントとなる職務内容の特殊性や専門性は法律だけでなく、人間的な解釈が多分に含まれる面もあるため、かつてはビザ申請代行を専門的に担っている優秀な弁護士に依頼すればだいたい取得できていました。ところが、H1Bビザの発行数上限が2005年度以降年間20万件近くあったものが6万5千件に大きく縮減されて以来、このビザの獲得はとても難しくなってしまいました。

現状としては、H1B申請の際は従前にもまして大量の資料提出を求められるようになった上、仮に要件を満たしていたとしても、枠が募集初日でほぼ埋まってしまうために「抽選」が行なわれている状況です。

本来このビザは米国の4年制大学に留学した外国人学生が米国で就職するための措置として設けられたビザです。

そのため、特に米国以外の大学を卒業した日本人の就労用ビザとしては確実に取得できるビザでは既になくなっています。

 

L1ビザ

別称「駐在員ビザ」とも呼ばれているビザで、日本企業が自社の社員を駐在員として米国の関連企業へ派遣する場合に社員へ取得させるビザがL1ビザです。

L1ビザで重要になってくる一つ目のポイントが日本企業と米国企業の関連性です。

そのため、駐在する本人以上に会社側がビザ発行や延長でかなり尽力する必要があります。

L1ビザは管理職(A)と専門知識が問われる特殊技術職種(B)の二種類があります。

管理職が初年3年、更新により2年×2回で最長7年間滞在できるのに対して、専門知識が必要な職種が初年3年で更新が2年で1度だけのため、計5年に留まります。

L1ビザ発行の二つ目のポイントは、一般社員には与えられないということです。

最低1年以上は管理職なら管理職、特殊技能職なら特殊技能職で日本企業で働いてた実績が必要です。

そのため、日本企業に転職後すぐにL1ビザで海外駐在とはなりません。駐在員として働く場合には最低でも1年間は国内で働く必要があります。

・近年の傾向

H1Bビザのような発行数の上限は設けられていないものの、特にBタイプのビザ申請がインドや中国を中心に急増しているため、なかなか容易に申請を認めなくなりつつあります。つまり、日本企業から駐在員として米国へ赴任する場合、管理職以外では大変取得しにくい状況となっています。

ではL1のAなら容易かと言えばそのようなことはありません。

そもそも管理職にはポストに限りがありますので、無尽蔵に管理職要員として米国の会社へ駐在員を送り込むことはできません。

また、従前なら間違いなく取得できていたような大手メーカーや商社であっても、申請を断られるケースが現実に起こっています。

Bのあおりを受けた面も否めませんが、やはりL1全体で取得が厳しくなったと評価することが妥当と言えます。

 

グリーンカード

グリーンカードは別称「永住権ビザ」または「移民ビザ」といわれ、グリーンカードを取得できれば米国でどのような仕事にも就くことができ、また一生住み続けることもできます。

グリーンカードを取得するには米国市民と結婚したり、米国へ投資を行ったりといったいくつかの方法がありますが、結婚以外の方法はどれも大変厳しい条件があり、現実的とは言えません。

現況、グリーンカードの取得で現実的な方法とされているのが「抽選」です。

高校を卒業していることや伝染病にかかっていない、犯罪歴がないといった常識的ともいえる条件さえクリアしていれば誰でも資格対象となってくるからです。

・近年の傾向

しかし現実的といっても、当選確率はわずか1%前後です。まさに宝くじ的な確率と言えますが、米国でどんな職業でも自由に選べ、自由に住み続けることができる最強の権限が与えられるビザですので、この点は仕方ないと言えます。

尚、1%前後という当選確率は近年特に大きな変化は見られません。

もともと1%前後という大変低い数値なので、これ以上下げることはグリーンカードという制度自体の存在意義にも関わってくる水準となりますので、変わらないというより「これ以上あまり下がりようがない」という表現の方が適切かも知れません。

 

トランプ大統領誕生でビザ発行要件はどうなる?

米国で就労できる代表的なビザをご紹介してきましたが、おわかりになったとおり、実はトランプ大統領の登場前から既にビザの取得は難化傾向が顕著になっているということです。

理由はシンプルです。

アメリカの雇用状況がお世辞にも良いとは言えない状況が、ずっと続いているからです。

アメリカ人の就労機会を奪いかねない外国人に対し、就労の門戸を開くビザが難化するのは当たり前のことです。

アメリカが深刻な人材不足に陥り、アメリカ人の雇用だけでは到底賄いきれないといった状況にでもならない限り、こうした傾向が改善することは期待できないと考えるべきです。

トランプ大統領誕生による影響は?

既にお伝えしたとおり、アメリカ第一主義を掲げ、諸外国に奪われた雇用の機会を外国から取り戻すことを声高に叫んで当選したのがトランプ大統領です。

この事実を踏まえれば、トランプ大統領の登場によってビザ発行要件は更に厳しくなることが予測されても、易化を期待するのは極めて考えにくいと言わざるを得ません。

今のところ、具体的な政策として反映されていませんが特に中国人の申請が際立っているH1BビザやL1のBビザは更に厳格化され、発行が一段と厳しくなるというのが多くの専門家の一致した見解です。

仮にトランプ大統領から日本人だけがビザ取得で名指しされるようなことがなくとも、外国人に就労機会を提供するビザという政策の本質を踏まえれば、結果的に日本人のビザ取得も更に厳しさを増すと覚悟した方が良いと言えます。

アメリカ転職志望者が考えるべきこと・求められること

トランプ大統領登場以前から厳しさを増してきたビザ発行は、トランプ大統領登場によって更に厳しさが増すことが予測される中、アメリカで働くことを志望する方々はどのような心構えが必要になってくるか、ポイントを絞ってお伝えします。

米国で就労することに対する自分のビジョンを確立させておくこと

ビザ発行が今後ますます厳しくなることが予測されている中ただアメリカに行きたい、アメリカで働きたいといった漠然な思いを抱いているだけでは、アメリカで働くことは夢物語で終わってしまう可能性大です。

なぜならビザを取得するには勤務する会社や米国の弁護士をはじめとして、多くの並々ならぬ協力が必要になること、即ち周囲を動かせるエネルギーと志が必要になってくるからです。

少なくとも次のようなことは最低限明確にしておく必要があります。

1.どのような働き方をしたいのか

ただ語学力を活かしたいだとか、外資系で働きたいといった漠然とした思いやイメージだけでは、ビザ取得要件でわかったとおり、職務内容をシビアに問われるビザ取得は困難です。

そのためにもまずは米国でどのような働き方をしたいのかを、誰もが明確に理解できるよう、具体化しておくことは最低条件と言えます。

2.あなた以外(米国人)では簡単にできない仕事かどうか

ビザとは本来専門知識や特殊技能を持っており、米国人が簡単にそれらの仕事を行おうとしても容易には行なえない仕事や管理職として相応しい人材など、特定の立場の人だけに与えられるものです。

特殊性や専門性もなく、また多様な民族が集っている米国人に対して適切なリーダーシップを発揮する必要がある管理職を担える器もなく、誰でもできるような仕事でアメリカで働きたいと考えてもビザは得られないのです。

つまり「その仕事はあなた以外では容易にできない」と言われる仕事を担える必要があるということです。

従って厳しい表現となりますが、米国で取り組みたいと考えている仕事は、あなた以外では容易にできない仕事なのか、あるいは仕事自体は仮に誰でもできるものであっても、あなたなら他人が簡単には出せないパフォーマンスを発揮できるかどうかをシビアに自分自身に問いかけ、自信を持って答えられる回答を用意しておく必要もあります。

3.何年くらい米国に滞在したいか

これはビザ取得の戦略にも関わります。

取得に向けてどのような準備を行うか等も全く異なってきます。

極論としてずっと永住したいと考えるなら当選確率1%のグリーンカード取得か、独身者ならアメリカ人と結婚するという方法に限られます。

移民となるのではなく一定期間だけ米国で働きたいと考えるなら、具体的な米国での就労計画とその準備計画を確立しておくことも大切になります。

4.トランプ大統領が求める人物:アメリカに利益を与えることができるか

トランプ大統領登場によって、ビザ発行要件が更に厳しくなると想定されますが、ならばトランプ大統領が「ぜひアメリカに来て欲しい」とはいかなる外国人かを考えてみましょう。

そのような人物であれば、大胆な政策を打ち出すトランプ大統領なら逆にビザ発行要件が大幅に緩和される可能性だってあるからです。

実はその答えはそれ程難しくありません。

トランプ大統領がぜひアメリカに来て欲しいという人物は、アメリカの雇用や経済に大きく貢献できる人物です。

実業家出身でもあるトランプ大統領ですから、アメリカに事業投資を行なうという人物には好意的に対応する可能性が逆に高いと考えられています。

また、アメリカ人の雇用が増えることに貢献できる事業を推進すべく懸命に働こうとする日本人なら歓迎してくれるはずです。

つまり、アメリカへの就労を通じてアメリカから何かを「得る」という発想ではなく、アメリカに利益を「提供する」という視点からどのような貢献ができるか考え、明らかにしておくこともアメリカへの転職を実現する上で重要な鍵となります。

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