もうこれ以上パワハラの苦痛には耐えられない、一刻もはやく会社を辞めたいと思った時、どのように行動することが望ましいのでしょうか。
仮に会社を辞めることはできたとしても、スムーズに転職できなければ生活が困窮することになりかねません。

この記事ではパワハラが原因であっても、できるかぎりスムーズに退職と転職を果たすにはどうすればよいか、退職から転職にかけて取るべき具体的行動と採用面接時に問われる退職理由にフォカースして、そのポイントや事例を紹介致します。

退職に向けてのアクション・まとめ

「辞めたい」ではなく「どうすれば続けられるか」をブレーンストーミングしてみる

「パワハラが辛い。だから辞めたい。」という負の気持ちへ一旦大きく傾いてしまうと、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」のことわざのとおり、例えば会社の窓から見える風景まで嫌悪感を感じてしまうような、負の心理状態に陥ってしまいます。

そうした負の心理状況に陥った場合のこわい点とは、客観性や冷静さを失っていることを自覚できなくなることにあります。
独りよがりな発想をしても「自分は正しい」、「それが最も良い方法だ」と思い込んでしまうような状況になってしまうことです。

そのような状況になってしまえば、円満でスムーズな退職も実現しにくくなります。
円満な退職を実現するためにも、自分の自覚以上に冷静さや客観性を失っている前提に立ち、自分の気持ちをフラットに立て直すことが大切になります。

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ではどうすれば良いかですが、ぜひ実践して欲しいことが「辞めたい」ではなく「どうすれば続けることができるか」という観点から時間をかけてブレーンストーミングを行うことです。

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ブレーンストーミングって?

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多少わがままな発想や非現実的な方法が含まれても構いませんので、あまり制約を設けず、1つでも多く「現職を続ける方法やアイデア」を考え出すことがブレーンストーミングです。

どうすれば続けられるかという視点でたくさんの方法を考え出そうとすれば、自然に辞めたい原因やその解決策を客観的に考えざる得なくなります。

そうした取り組みが辞めたいという感情だけに支配されている気持ちを緩和させ、自覚の乏しい平静さや客観的視点を取り戻すきっかけにもなります。

あえて自分に非がないか、反省材料はないかを洗い出し改善を試みる

「どうすれば続けられるか」と共にもう一つ徹底的に考え抜いておいた方が良いのが、「パワハラが生じた理由として自分に非や反省点がなかったか」ということです。

なぜなら転職時の採用面接で、そうした姿勢が問われるからです。
一方的にパワハラを働く上司が悪い、会社が悪いという見方だけでは外部からの共感や支持は得にくいものです。

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自分には全く落ち度がなく一方的に会社や上司が悪いと思えるケースでも、否、そうしたケースこそ自分の非や反省材料がないかをあえて考え、それを改善しようとしたかを振り返ることは、退職することを前提とした場合であっても必要な取り組みなのです。

客観的な事実と証拠を収集、保存する

パワハラは外部からとても見えにくい行為であり、現場を目撃した他者であってもパワハラと認識してくれない場合すらあります。
ましてパワハラの現場を見たことがない第三者に状況を正確に理解してもらうことはなかなか難しいのが、パワハラ特有の問題でもあります。

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そこで大切になってくることができるだけ主観や自分の感情を排し、客観的に発生した事実とそれを証明できる証拠を収集し、保存をはかっておくことです。

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具体的には、どんなふうにすればいいの?

例えば「上司に暴言をはかれて嫌だった」といった感情を交えたメモではなく「◯月◯日の◯時頃☓☓上司より、△△・・と言われた」とできるだけ具体的に事実だけをメモすることです。

もし可能であればICレコーダーやスマホの録音機能を活用し、暴言などを録音しておけば有力な証拠にできますので尚良いと言えます。

そうした証拠が多数あれば第三者に協力を求める場合に説得力が増しますし、最終的な手段として裁判で争う場合に効力を発揮してくれます。

批判や糾弾ではなく、解決に向けた「相談」を行う

スムーズな転職を実現させるためにこれも必要なアクションといえますが、会社や上司を糾弾する目的ではなく、パワハラの円満な解決を目的として弁護士や行政の相談機関、もしくは労組に加盟している場合には労組へ相談を行うことです。

そうすれば、思いがけず円満にパワハラが解決する場合もあります。
仮に解決に至らなかったとしても、解決を目指して最善の努力を尽くしたと自分に自信を持って転職活動に取り組めるようになります。

また採用面接で退職理由を説明する場合にも、「解決に向けて努力を払ってきた」と前向きな評価も得られやすくなります。

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なるほどね!
解決に向けて行動するのは大事よね。

転職先の目処が立ってから退職日を検討する

辞めることを決定したらその時点から職場で仕事をすることに苦痛を感じるようになり、辞める日のことばかりを考えがちです。
すぐに退職し失業手当の受給を受けながら転職活動を行うという方法もありますが、自己都合ではなかなか手当を得にくい上、支給期間にも限りがあります。

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やはり転職先の目処を付けてから退職するのが一番です。

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ということは…在職中に、転職活動に取り組み、内定をもらえるよえにすればいいのね。

逆に言えば、内定を得られるまでは退職を我慢して現職に留まるようにすることが大切です。

スムーズに業務を引き継げるよう手引書を作成する

スムーズに辞める上で最も重要になってくるのが「業務の引き継ぎ」です。

引き継ぎがスムーズに進行しなければ今度はその点が攻撃材料となり、なかなか退職させてもらえないという新たなパワハラも生じる可能性があります。
また、引き継ぎを満足に行えないまま強引に退職してしまえば余計な悪評を招き、転職後の仕事に悪影響も出かねないからです。

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スムーズな引き継ぎを実現するために大切なことは、引き継ぎ項目を徹底的に洗い出した上で各引き継ぎ項目ごとに手引書やマニュアルを作成しておくことです。

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でも、わかりやすい手引書を作成しようと思ったら、時間もかかるし大変そうね。

しかし、口頭の引き継ぎだけでは誤解や項目の漏れも生じやすくなり、円滑な引き継ぎが遠のく可能性が高まります。

素早くスムーズな業務引き継ぎがスムーズな退職実現に欠かせませんので、手を抜かずに時間をかけて良質な引き継ぎ手引書を作成した上で引き継ぎを行うべきです。

捨て台詞は厳禁・円満退職を目指す

退職理由は「一身上の都合」でOK

退職を確定させたら、就業規則などに則って所定の期日までに退職届を出すことになるでしょうが、退職届けにパワハラを働いた上司や先輩などの批判を書くことは絶対に避けるべきです。

退職届は書類として残りますのでそうした記述はマイナスに働くことがあっても、プラスになることは一つもありません。
退職届に記す退職理由は「一身上の都合」で十分です。

最終日の挨拶時にも捨て台詞は厳禁。感謝を伝える

同様に、退職日にパワハラを働いてきた上司や先輩社員へ挨拶する場面でも捨て台詞は勿論、批判めいた言葉は口にすべきではありません。

その点はぐっと堪えて、御礼と感謝の言葉をお別れの挨拶とするのが大人の対応であり、そのような対応がスムーズな退職や転職を実現につながります。

番外編:どうしても一矢報いたい場合には裁判所へ訴える

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立つ鳥跡を濁さずなのは分かったけど、何かほかの方法はないの?

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どうしても一矢報いたい、自分が受けてきたパワハラを許すことができないという場合には、最終的な手段として裁判所へ訴えるという方法があります。

裁判所へ訴えるには弁護士費用など大きな出費が伴う上、パワハラは裁定が難しい場合が多く、ある程度の証拠があったとしても必ず勝てるとは限りません。

何よりスムーズな退職や転職の実現が遠のく可能性が高まりますので、この点を覚悟できるかどうかは慎重に判断する必要があります。
それでも泣き寝入りしたくないということであれば、思い切って戦うという手段も間違っているとは言えません。

ただし、この記事でお伝えしたとおり、第三者が客観的事実を十分認識できる確たる証拠が揃っていることが必要であり、裁判を起こす前提条件となることはよく理解しておいてください。

退職理由事例とそのポイント

パワハラ事例としては厚生労働省が紹介している「パワハラの6類型」(※)にもとづくことにします。
(※厚生労働省「パワハラ6つの類型」

身体的な攻撃での退職理由例

現職はかつてとても職場の雰囲気も良く、仕事も充実しており、辞めたいと考えるような要素は全くありませんでした。
ところが昨年新しい上司が赴任してから所属している部の雰囲気が急速に悪化しました。
私達部下に対して暴力を振るわれる方だったためです。
著しいミスを犯した場合であれば、少々の体罰があったとしても辞めたいとは考えなかったと思います。
ところが、私の同僚のケースですが、もともと声が小さかったこともあり返事が聞き取りにくいという理由で殴られるという事態が生じ、そうした事例が積み重なった結果、同僚も続々と退職してゆきました。
私も強く突き飛ばされたことがあり、身の危険も感じましたのでこれ以上現職に留まることは困難と判断し、退職を決断しました。
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ここがポイント
上司の暴力は自分だけに向けられていたのではなく、部下全体に及んでいた状況であれば退職理由として「仕方ない」との理解を得られやすくなります。
また、上司への不満ではなく身の危険を感じたことが退職理由という点も共感を得やすい表現です。

ただし、会社の幹部や外部へ相談することで解決をはかろうとしたかは問われる可能性が高いので、その点に対する取り組みも簡潔に加えておくと更に説得力が増します。

精神的な攻撃での退職理由例

きっかけとなったのは上司から急ぎのメールを受け取ったにもかかわらず、出先で予想外に時間を取られたことで当日中に上司へ返事ができなかったことでした。
それ以来、朝礼の場で私だけが長時間叱責されたり、課の職員全員に配信する形式で私を叱責する内容のメールが何度も送られてきたりしました。
速やかに連絡できなった点は私の落ち度ですので上司には率直にお詫びし、その後は同じミスを繰り返さなように努め、その後は同じミスは一度も起こさなかったのですが、上司のそうした対応は止むことはありませんでした。
その後も、先輩社員や同僚にも協力を得て、上司と相談することで状況の解決を図ろうと取り組んで参りましたが、その内コミュニケーション自体を拒絶されるようになり、とうとう日々の業務や取引きにも支障が生じ始めました。
このままでは状況は悪くなる一方と考え、上司との関係改善をやむなく断念し退職を決断しました。
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ここがポイント
上司批判ではなく、関係改善に向けた努力を継続したことを強調することと、自分にも非があった点を率直に認めることが外部から理解を得る上での重要なポイントです。

人間関係からの切り離しでの退職理由例

退職に至った理由ですが、赴任してきた上司に飲み会に誘われた際、たまたま子供がケガで入院したと連絡を受けたため、上司に心配をかけてはまずいと思い「用事があります」という理由だけで飲み会参加を断り病院にかけつました。
その点は今にして思えば私の失敗であり、反省点でもあります。
幸い子供は軽傷ですぐに退院できましたが、それがきっかけとなって私だけが飲み会には誘われなくなったり、ミーティングの場でも私だけが無視されたりするようになりました。
そこで上司へ飲み会に参加できなかった事情を伝えようとしたのですが、上司は私の無視し続けました。
メールでもお詫びの言葉と共に事情を説明しましたが、返信も一切ございません。
その後も私なりに上司とコミュニケーションを図るべく、何度となく働きかけを続けましたが、無視される状況は変わらなかったです。
その結果、仕事にも支障が生じ周囲に迷惑が及ぶ状況になってきたため会社へ異動を願い出ましたがそれも断られました。
こうした事情で、やむを得ず退職する決断を致しました。
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ここがポイント
この理由も上司批判ではなく、事実経過の説明に重きをおいた説明になっていることがポイントの1つです。

また、自分にも非があった点を率直に認めて、関係改善に向けた努力を継続したことを丁寧に説明している点もポイントとしてあげられます。

過大な要求での退職理由例

私はA課から人事異動でB課へ移ったのですが、いきなりB課社員の平均的な分量の倍以上の仕事を命じられました。
当初はそのことに気付けず、慣れない仕事で時間がかかっているだけと思い込んでいたところ、B課の同僚の指摘で過大な仕事の分量を振られていることがわかりました。
仕事は毎日深夜までおよび休日も満足にとれない状況になり、頭痛や耳鳴りといった体調不良も生じましたので仕事の分量を少し減らしてもらえないかを上司に相談しました。
すると逆に翌日から更に仕事が増えることになってしまいました。
そこで再度上司に相談しようとしましたが今度は「嫌なら辞めろ」との返答を頂戴したため、異動を含めて総務部にも相談しましたが、協力は得られませんでした。
このままの状況で仕事を続ければ体を壊しかねない状況だったので、やむなく退職を決断した次第です。
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ここがポイント
ここでのポイントも他の事例同様です。
上司の人格的な非難はしないこと、主観ではなく事実に則って説明することが大切です。

また不満ではなく残業や休日出勤の連続で体調を壊しかねないという理由も、共感を得られやすい点です。

過小な要求での退職理由例

私は半年ほど前に営業課に配属されたのですが、配属直後から営業の仕事は与えて頂けず、会社周辺の掃除をするよう指示されましたので、毎日掃除に取り組んでいました。
最初は営業に不慣れなので仕方がないと考えましたが、2ヶ月目に入っても状況が変わらなかったので上司へ営業にも取り組ませて欲しいと訴えましたが「お前は営業経験がないから」と言われて、聞き入れてもらえませんでした。
その後、同様な経験をして退職した先輩社員の話を聞くことができたのですが、営業課の上司は即戦力として外部から営業経験者を望んでいたのに会社が一向に聞き入れてくれないことへ強い不満を抱いており、他部署から配属された社員には理不尽な指示を与えて、その結果何人も退職してしまった事実があることを知りました。
会社側の方針だったとしても、上司が経験者を望んでいる以上無理に留まっても良好な関係は築けないと考えましたし、職種としても営業ではなくやはり◯◯職に就きたいとの思いも募りましたので、退職を決断しました。
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ここがポイント
他にも同様な事実が起きていたことを伝えることも、個人的な問題ではなく、組織的な問題として理由への理解を得やすくなります。
また営業以外の職種を希望したことを理由に含めれば、パワハラが不満で退職したといった印象や誤解を招きにくくなります。

個の侵害での退職理由例

上司から家族のことを尋ねられることは、当初それほど悪い気はしませんでした。
が、徐々に内容がエスカレートしてゆき、とうとう夫婦生活に関することまで職場で大声で尋ねられるようになってしまいました。
そうした上司の対応を嫌って女性事務員が複数退職する事態まで生じたので、担当役員にも相談してみたのですが、上司の対応を容認されるお考えでした。
それでなんとか解決を図ろうと上司にも是正をお願いしたのですが「それぐらいのこと気にするな」と立板に水の状況で耳を貸して頂くことができませんでした。
会社も仕事も好きでしたし、上司も仕事ができる優秀な方でしたので決して人間的に嫌っていた訳ではありません。
しかしながらプライベートまで赤裸々に周囲に知られることはかなりの苦痛となり、状況の改善も困難と判断しまして退職することに致しました。
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ここがポイント
パワハラを退職理由として伝える場合には事実を伝えているつもりでも批判的に聞こえてしまう場合があります。
そこで現職の会社、または上司の良い点または良かった点も伝えるようにすると効果的です。

「このような点はとても良いと思っていただけに」という観点からの話が加われば、プラスとマイナスの両面をみた上で冷静に判断しているとの評価を得やすくなるからです。

どんなに悪い、酷い会社もしくは上司だと思っても、良かった点はきっとあるはずです。
パワハラでの退職理由を伝える場合にはその点をよく考え、合わせて伝えるようにすることがポイントです。