失業保険(失業手当)の全知識!計算方法や期間、特定理由離職者、デメリット等を解説!

はじめまして竜胆堂です。元うつ病で退職し、闘病後にライターをしています。色々な経験を元にうつ病関連の記事を担当。症状は本当に様々なのですが、体験も踏まえてうつ病体験記事を掲載中です。

うつ病になると症状でなかなか働くことができなくなります。
そうした中会社を辞めてしまった場合、どうやって生きていけないいのでしょうか?

今回はうつ病から立ち直った筆者が、自分がもらった失業手当を中心に、やっていいこと、悪いこと、すべきことなどについて解説していきたいと思います。

何とか最低限の生活を維持しながら反転攻勢に出るための情報提供になればと思います。

私自身の経験からうつ病の人の失業手当が中心ですが、失業手当一般にも触れるので、退職した人など参考になる部分が多いと思います。おススメの記事です!

うつ病経験者が解説する失業保険(失業手当)の全知識!

失業手当は「働ける人」のためのもの!

大前提を書きます。
失業手当は今すぐ働ける状態であるけど、就職、転職先が決まらず、その間を食いつなぐためにもらうものです。

つまり「明日からうちに来て働いてくれる?」と聞かれた場合「はい、わかりました」と言える状態でないともらうことはできません。

これまで働いたご褒美に、しばらく働かなくても食べていける給付ではないことに注意してください。
だから、失業手当受給中は日常的に転職活動をしてそれが認められることが必須になります。転職活動をしていないと「働く意志なし」と判断されて失業手当の支給はされないので注意してください。

じゃあ、うつ病などの精神疾患や他の病気、けがの人はどうすればよいかというと、回復して治るまでは、つまり、即就職できる状態になるまでは働けないので、失業手当はもらえないんです。

働けない間は「傷病手当金」を受給すること

働けない人のための制度として「傷病手当金」というものがあります。

この記事は失業手当についてなので詳細は割愛しますが、1年以上働いていると、同じ病気で1回に限り、最大1年半まで月給の70%がもらえるという制度になります。

もらうのはハローワークからではなく、加入している健保組合からなので、自営業やフリーランスの人はもらうことができません。会社員、公務員だけの制度です。

傷病手当金の概要についてはコチラをご覧ください。
参考:病気やケガで会社を休んだとき | 健康保険ガイド | 全国健康保険協会

ポイントはこの4つ

  • 支給される期間は、支給開始した日から最長1年6ヵ月
  • 支給途中で復帰してももらい始めてから1年6か月経過したら権利が消滅する
  • 支給のための「待機期間」がある
  • 同じ病気の場合2回目はない

私の場合、最初にうつ病になり休職した時に、8か月間この傷病手当金をもらっていたため、うつ病が悪化して退職した時にはこれをもらえず、働ける状態ではないわけですから失業手当ももらえず、退職金と貯金を切り崩して生活、療養するしかありませんでした。

余談ですが、退職金は若手の退職が続いたときに「勤続10年未満は20%削減」という酷い規定が設けられていて、私の場合勤続9年10か月だったのでしっかり退職金が20%減っていました。最悪の職場です。

うつ病などで働けない場合は

  • 傷病手当金を受給する(退職後も元の健保組合から1年6か月までならもらえます)
  • 働ける状態まで回復させる
  • 貯金等を切り崩して生活する

ということが必要です。

失業手当は働ける人のもの、ということをまず知っておいてください。

失業手当はいくらもらえる?金額、計算方法

失業手当がいくらもらえるのか、みなさんの関心はそこにあると思います。
ハローワークのHPを見ても難しくてよくわかりません。

ハローワークインターネットサービス – 基本手当について
「失業手当 計算」で検索するとヒットするサイト(個人運営)で見ていただいたほうがいいかもしれませんが、こんな感じです。

  • 辞める6か月の月給の合計÷180=「賃金日額」
  • 賃金日額には年齢に応じて上限がある
  • 賃金日額×60%弱=失業手当

となります。

つまり、外資系で年収1000万円以上もらっていたような人でも、失業手当をもらおうとすると上限があるため、それに見合った金額はもらえないということです。

失業手当(一日あたり)の上限はこのようになっています。

~29歳6710円
30歳~44歳7455円
45歳~59歳8025円
60歳~64歳7042円

下限は共通で一日当たり1976円となっています。
これらは毎年、平均賃金等を考慮して改定されます。

参考:厚生労働省 雇用保険の基本手当日額が変更になります

基準額MAXもらえたとしても月額24万円ほど。これでは家族を持っている人はかなり厳しいです。

ちなみに私ですが、退職まで年収500万円超ありましたが以下のような金額になりました。

  • 離職時賃金日額:約10000円
  • 基本手当日額:約5700円

つまり、毎月16万円くらいしかもらえないことになります(失業手当は4週間に1回支給されます)。

保険金なので税金がかからないとはいっても、毎月16万円ならば働いたほうがいいわけで、当然転職、就職を促すようになっています。

遊んで暮らせるほどはもらえないということですね。

ちなみに、休職していたときの傷病手当金は毎月20万円超でした。

つまり、金額的には 傷病手当金>失業手当なんですね。

だからうつ病などの場合は、無理に働こうとせず、まず傷病手当金でじっくり療養した方がいいんです。

失業手当の期間は障害者手帳を持っていると最長300日

離職票提出後

自己都合退職の場合

給付

7日間の待機

3か月給付制限

人により期間は異なる

健康な人は失業手当をもらうまでが長い

続いて失業手当がもらえる期間ですが、健康な人は「90日」です。

3か月しかもらえないので、さっさと就職先を決める必要があります。

※雇用保険の被保険者の期間により異なります。

しかもハローワークに登録してすぐに3か月もらえるわけではなく

  • 受給資格決定日から7日間が「待期期間」
  • そこから3か月が「給付制限期間」

となっていて、この間、計3か月と1週間は失業手当をもらえません。

その期間中は自腹で生活することになります。

失業手当がもらえるのは、3か月と1週間経過後90日。
つまり、転職活動をしてもそれでも決まらない人にちょっとだけサポートしてあげる、という制度に過ぎません。

最初の失業手当がもらえない3か月ちょっとは、家で寝ていればよいわけではなく既定の転職活動をして、毎月指定日にハローワークに行かないといけません。
3か月以内に転職先が決まれば失業手当はもらえないんですよ。

※給付日数を1/3以上残して、安定した職業につき諸条件を満たせば再就職手当がもらえます。

自己都合による退職の場合

被保険者の期間

1年未満

1~5年未満

5年~10年未満

10年~20年未満

20年~

全年齢

90日

120日

150日

※受給期間についてはコチラ
参考:雇用保険手続きのご案内
参考:基本手当の所定給付日数

うつ病だと色々メリットあり

健康な人は以上のような期間になりますが、私はうつ病ですでに障害者手帳を以前の会社から(半ば強引に)取得させられていたので、「就職困難者」という扱いになります。

就職困難者とは各種障害者手帳を持っている人(身体障害者や知的障害者なども該当)などで、少なくとも1年近くは職が見つからなくても最低限の生活はできそうです。

  • 失業手当給付期間が90日ではなく「300日」(45歳以上は360日)
  • 3か月の給付制限がなくすぐにもらえる
  • 失業期間中の就職活動が4週に1回でよい
  • 障害者専用の窓口が利用できる

でも、300日経過後はどうしようもないので、障害年金なども考えないといけないケースも出てくると思います。

  • 普通の人はハローワーク登録3か月経過後から失業手当をもらえる
  • 障害者の人などはすぐに最大300日失業手当をもらえる

と覚えておきましょう。

失業手当をもらっているときにバイトをしてもいいの?

失業手当だけでは生活できないので、単発のバイトをしてはいけないの?と思う方、安心してください。
毎回、ハローワークに提出する書類にアルバイトを何日していくらもらったのか記入すれば大丈夫です。
安定した雇用関係を結べるところに転職するのが目的ですから、一時しのぎの単発バイトはしていただいて構いません。

ただし、「就労」(4時間以上のアルバイト)と「内職」(4時間未満のアルバイト)では失業手当受給の内容が変わってきます。

「就労」の場合は、その日働いたものとみなすので、その日の失業手当は出ませんが、失業手当を受給できる日数は持ち越しされます(つまり、失業手当受給日数は減らない)。

しかし「内職」の場合は{「基本手当日額」-「その日の内職で得たバイト代」}に失業手当として支給されてしまうので、失業手当をもらえる日数が減ってしまいます。

3時間のバイト3日間よりも9時間のバイト1日のほうが、失業手当をもらえる日数が減らないことになります。
何か腑に落ちませんが、こういう制度なので仕方がないですよね。

バイトをした場合しっかり届け出ないと「失業手当の不正受給」になってしまいます。
バイト先から足が付くこともありますので正直に申告してください。

妊娠中の失業手当はどうする?

妊娠をきっかけに退職した場合、当然ですが出産まで働くことはできません。

転職活動もできないわけですが、その場合、「特定理由離職者」というものに該当し、受給期間を最長3年間延長できる特例措置があります。

妊娠している旨を申し出れば(産婦人科医の診断書付き)、3年間失業手当をもらう権利が延長されます。
出産して赤ちゃんがある程度大きくなってから、失業手当をもらって転職活動することができますので安心してください。

妊娠中は転職活動しなくてOK。3年後まで失業手当の権利を延ばせるです。

失業手当受給に必要な「求職活動」実績

失業手当を受給するためには、毎月決まった曜日決まった時間(平日)にハローワークに行き「失業認定」を受ける必要があります。
いつでも働ける状態の人たちなのですから、当然「都合が悪い」とか「旅行へ行く」などの理由で欠席はできません。欠席してもいいですが、以後失業手当がもらえなくなる可能性があります。

もちろん、親族の急な不幸や冠婚葬祭関連ならば証明を出せば別の日になりますし、病気の場合は医師の診断書があればOKです。失業認定日の無断欠席ができない、と解釈してください。

健康な人(障害者、就職困難者ではない人)は、前回の失業認定日から最低2回「求職活動」をしていることが必要です。

求職活動とは

  1. 求人への応募(書類送付、面接)
  2. ハローワークが実施するイベントへの参加
  3. ハローワークでの職業相談
  4. 民間転職会社経由の応募、イベント参加
  5. 地方自治体の転職イベントへの参加
  6. 就職に直結する検定試験等の受験

などとなっています。
所轄のハローワークによって裁量があるようで、認められるもの、そうでないものがあります。
応募はハローワーク経由でなくても大丈夫で、転職サイトや転職エージェントから応募していただいて構いません。

それが2回必要になります。失業認定の申請書にどこにいつ応募して面接したか書く欄がありますので、ウソがばれると大変なことになるみたいです。

なお、障害者(就職困難者)の場合、この求職活動が1回でよく、その1回も失業認定時に何か担当者に話せば「職業相談1回」になるので、実質求職活動は必要ないということになります(でも働くために失業手当をもらっているので、その辺は真面目にやりましょう)。

扶養に入っていても失業手当はもらえる?

女性の場合、退職を機に専業主婦になり扶養に入ることもありますが、失業手当をもらっていると扶養に入れない可能性があります。
失業手当の給付も収入になるので、それが扶養のラインを超えていたら失業手当はもらえますが扶養からは外れます。

扶養に入れる条件は、具体的には、
「現時点から将来に向かっての収入見込みが130万円未満であること」
で、その収入には失業手当も含みます

そのためには直近の月間の収入が108,333円以下であること(130万円÷12カ月=108,33≒108,333円)が必要なため失業手当の基本手当日額が3,612円以上になる場合には扶養から外れることになってしまいます。

細かく計算すると、一時的に扶養を外れて失業手当をもらうこともできますが

・失業手当をもらう→しっかり共働き
・扶養に入る→専業主婦
と割り切った方がいいでしょう。「いいとこどり」は難しいようです。

自己都合退職とそうでない会社都合退職(首になった)場合の失業手当の違い

転職活動をするに至った経緯も人それぞれです。自分から辞めた人は計画的に退職したわけですが、中には会社が倒産したりリストラに遭ったりした人もいます。

自己都合退職の人は、上で書いたように3か月経過しないと失業手当をもらえず、日数も90日ですが、会社都合の人は「特定離職者」に該当して

・3か月経たずにすぐに失業手当がもらえる
・日数も120日以上もらえるケースが多い

特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要という特徴があります。でも、自分の意思に反して退職したわけで「メリット」とまでは言い切れません。もう少し手厚いサポートがあってもいいように思います。

特定受給資格者の場合

被保険者の期間

1年未満

1~5年未満

5年~10年未満

10年~20年未満

20年~

30歳未満

90日

90日

120日

180日

30歳~35歳未満

120日

180日

210日

240日

35歳~45歳未満

150日

180日

240日

270日

45歳~60歳未満

180日

240日

270日

330日

60歳~54歳未満

150日

180日

210日

240日

うつ病が回復しない、その場合は治るまで受給延長をしましょう

最後、私のようにうつ病で退職した人は、そのままでは転職活動できませんから、妊娠した人と同じように失業手当の受給期間延長をする必要があります。

これは、ハローワークでもらえる書類(フォーマット)に主治医の診断を書いてもらい提出すればOKです。
でも振り返ってみると、当時は書類をもらいにハローワークへ行くことすら大変でした。ハローワークが空いている時間にそこに行く、ということ自体がうつ病の人には大事なんです。

結局私は、3年近く受給期間の延長をする羽目になってしまいました。

受給延長を解除して失業手当をもらうためには、やはり医師の診断書が必要です。最低でも週20時間以上働けるという診断がないと、ハローワークで転職活動も失業手当の受給もできません。

ただ、受給期間延長期間が終わってしまったら・・・、選択、決断しないといけなくなります。

特定理由離職者とは?

記事中で少し触れた特定理由離職者とは、以下にあるような正当な理由で、離職をした方を指します。

以下の正当な理由のある自己都合により離職した者(※)
① 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者
② 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第 20 条第 1 項の受給期間延長措置を受けた者
③ 父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合
又は常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭
の事情が急変したことにより離職した者
④ 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者
⑤ 次の理由により、通勤不可能又は困難となったことにより離職した者
ⅰ) 結婚に伴う住所の変更
ⅱ) 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼
ⅲ) 事業所の通勤困難な地への移転
ⅳ) 自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと
ⅴ) 鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等
ⅵ) 事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避
ⅶ) 配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避
⑥ その他、上記「特定受給資格者の範囲」のⅡの⑩に該当しない企業整備による人員整理等で希望退職者
の募集に応じて離職した者等
(※)給付制限を行う場合の「正当な理由」に係る認定基準と同様に判断されます。

出典元:厚生労働省

特定理由離職者も勿論、失業保険の受給ができます。

ハローワークで就職の努力をしている、離職前に6ヶ月以上の雇用保険の被保険者期間がある、という条件を満たす必要がありますが、必ず受給するようにしましょう。

特定理由離職者はうつ病でも認められる?

結論から言うと、うつ病の特定理由離職者であっても失業保険を受給することが可能です。

① 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者

厚生労働省のページに上記のように記述されているように、心身の障害(うつ病)として条件を満たしています。

うつ病の人の失業手当ロードマップ

うつ病になった人(メンタルを病んだ人)が暮らしていくためのロードマップを以下に書きます。

  1. 傷病手当金

    退職しても傷病手当金を満期(1年6か月)までもらい療養に専念。同時に障害者手帳を申請、入手する

  2. ハローワークへ

    傷病手当金をもらい終わったら、ハローワークに行き登録。同時に回復するまで受給期間の延長届を出す

  3. 治療に専念

    何とか回復させる。

  4. 診断書を提出

    働けるという診断書を提出。就職困難者として300日失業手当をもらいながら徐々にいい仕事を探していく(無理はしない)

  5. 転職

    転職をする。できない場合は障害年金がもらえるか医師に相談(働けないくらい具合が悪いなら障害年金しか残された手段はないです)

傷病手当金と失業手当300日が最後の「セーフティーネット」になります。活用できるものはとことん活用して何とか人生のレールに復帰していきましょう。

私も何とかライターとして戻ることができました。ハローワークの障害者窓口の人も「300日の間は無理しないで本当にいい案件しか応募しなくていいから」と言ってくれました。「慣らし期間」と割り切って徐々にエンジンをかけていく、でいいと思います。

健康な人は、失業手当をもらうこと前提ではなく早期の転職を決めてください。失業手当を3か月経過後もらうまでに転職が決まれば「再就職手当」というものがもらえます(失業手当受給中に決まっても多少出ます)。

ハローワークへの失業手当は必ず行おう

つまり、ハローワークを利用せず、転職サイトや転職エージェントで転職しようとしている場合も、ハローワークに失業登録だけはしておいた方が得ということです。

利用できるものはすべて利用しておきましょう。

うつ病経験者が語る失業手当の全知識! まとめ

    • 失業手当の金額は結構少ない
    • 健康な人で自己都合退職は3か月ちょっと経過しないと失業手当がもらえない
    • 失業手当は基本90日分しかもらえない
    • 毎月「求職活動」をする必要がある
    • ハローワークの指定日時に行き「失業認定」を受ける必要があり
    • うつ病の場合は失業手当300日などメリットがある
    • 就職困難者や特定理由離職者に自分が該当するかどうか事前に確認する
    • 働けない状態ならば失業手当受給延長を申請する
    • 転職活動はしっかりと行うこと
    • ハローワーク経由の応募でなくても、転職サイトや転職エージェントで「求職活動」OK

筆者紹介

元うつ病で退職し、闘病後にライターをしています。
得意分野は「婚活」「アニメ」「メンタルヘルス」など。
講師経験もあり、人前でお話しできます。
Twitter ⇒ https://twitter.com/makken64833215