
出産や子育て、介護などで仕事を離れ、「そろそろ薬剤師として復職したいけれど、ブランクがあって不安…」と感じている方は多いのではないでしょうか。
薬剤師は女性が6割を占める職業で、ライフイベントによるブランクは珍しいことではありません。この記事では、ブランクのある薬剤師の復職事情や、ブランク中に変わった制度、復職前にやっておきたいこと、職場選びのポイントをまとめて解説します。


結論:ブランクがあっても薬剤師の復職は十分に可能
- 薬剤師の有効求人倍率は3.12倍(令和7年度、ハローワーク)と、求人が多い状況が続いている
- ブランク中に、電子処方箋やリフィル処方箋、オンライン服薬指導などの新しい仕組みが始まっている
- 復職前に、制度の変化や新薬の情報を確認しておくと安心
- 「ブランクOK」「研修あり」「子育て中の方歓迎」などの求人を選ぶと、復職しやすい
- パートや短時間勤務から始めて、少しずつ慣れていく方法もある
ブランクのある薬剤師の復職は難しい?
薬剤師は女性が6割、ブランクは珍しくない
厚生労働省の「令和6(2024)年医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、届け出をした薬剤師329,045人のうち、女性は62.0%です。また、仕事をしていない(無職の)薬剤師は11,975人いて、全体の3.6%にあたります。
出産や子育てで一時的に仕事を離れ、その後に復職する薬剤師は少なくありません。職場の側も、ブランクのある薬剤師を受け入れることに慣れているケースが多いでしょう。ブランクがあることは、決して特別なことではないのです。
求人が多く、ブランクがあっても採用されやすい
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)によると、薬剤師の有効求人倍率は3.12倍(令和7年度)です。地域によっては薬剤師が不足していて、ブランクのある人でも歓迎される職場が多いのが実情です。
ただし、ブランクが10年以上と長い場合や、都市部の人気の職場では、知識の学び直しや条件の調整が必要になることもあります。
ブランク中に変わった主な制度

ブランクの間に、薬剤師の仕事にかかわる制度は大きく変わっています。復職の前に、主な変化を確認しておきましょう。
| 時期 | 主な変化 |
|---|---|
| 2020年9月 | オンライン服薬指導が、改正薬機法にもとづいて本格的に始まった |
| 2022年4月 | 一定期間内なら同じ処方せんをくり返し使える「リフィル処方箋」が導入された |
| 2023年1月 | 電子処方箋の運用が始まった |
| 2024年12月 | 従来の健康保険証の新規発行が終わり、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行した |
| 毎年 | 薬価の改定(2021年度からは毎年改定) |
| 2026年6月 | 調剤報酬の改定。かかりつけ薬剤師の評価の見直しなどが行われた |
すべてを完璧に覚える必要はありませんが、どんな変化があったかを知っておくだけでも、職場での戸惑いはぐっと減ります。たとえば、マイナ保険証での資格確認や電子処方箋の受付は、多くの薬局で日常の業務になっています。実際の操作は職場で教わりながら覚えていけば大丈夫です。
復職前によくある不安と解消法
知識や制度についていけるか不安
調剤報酬は2年に1度、薬価は毎年改定されるので、ブランクの年数によっては、働いていたころとはかなり違っています。新しい薬も次々に登場しています。
復職前にできること
- 薬剤師向けの雑誌や情報サイトで、最近の制度改正や新薬の情報を確認する
- 都道府県の薬剤師会などが行っている研修やeラーニングを利用する
- 研修認定薬剤師の単位を取るための研修に参加する
- よく処方される薬の添付文書を読み直しておく
ブランクが選考で不利にならないか
子育てなどによる数年程度のブランクであれば、選考で大きく不利になることは少ないでしょう。面接では、ブランクの理由を正直に伝え、復職に向けてどんな準備をしてきたかを具体的に話すと好印象です。
「ブランクOK」の求人に応募する
求人に「ブランクOK」「ブランク歓迎」と書かれている職場なら、ブランクを理由に不利になることはまずありません。同じように復職した先輩薬剤師がいることも多く、相談しやすい環境が期待できます。
子育てとの両立を理解してもらえるか

子どもが小さいうちは、急な発熱や行事などで、休んだり早退したりすることが増えがちです。子育てへの理解がない職場だと、気まずい思いをするかもしれません。病児保育やファミリー・サポートなど、地域の子育て支援の仕組みも調べておくと、いざというときに頼れる先が増えます。
子育てに理解のある職場を選ぶ
「子育て中の方歓迎」「託児所あり」などと書かれている求人や、子育て中の薬剤師が多く働いている職場を選ぶと安心です。チェーンの調剤薬局やドラッグストアでは、近くの店舗から応援を出してもらえることもあり、急な休みにも対応しやすい傾向があります。
シフトの調整に応じてもらえるか
学校の行事や急な休校、PTAの活動など、子育て中は予定が変わりやすいものです。勤務時間やシフトの変更に柔軟に対応してくれるかどうかは、求人票だけではわかりません。転職エージェントを通して確認してもらうのがおすすめです。
研修制度があるか
ブランクが長いと、独学だけで勘を取り戻すのは大変です。入職後に研修を受けられる職場や、先輩が付いて教えてくれる職場を選ぶと、安心して仕事に慣れていけます。チェーン薬局の中には、ブランクのある薬剤師向けの復職研修を用意しているところもあります。研修の期間や内容、その間の給与についても確認しておきましょう。
ブランク明けにおすすめの働き方・職場
| 働き方・職場 | 特徴 |
|---|---|
| パート・短時間勤務 | 1日数時間、週数日から始められる。生活のリズムを整えながら慣れていける |
| チェーンの調剤薬局 | 研修制度が整っていることが多く、店舗間で応援し合える |
| ドラッグストア(調剤併設) | 店舗数が多く、家の近くで働きやすい。営業時間が長いのでシフトを選びやすい |
| 派遣薬剤師 | 勤務の期間や時間を選びやすい。派遣会社の担当者に相談できる |
まずはパートなど無理のない働き方から始めて、慣れてきたら勤務日数を増やしたり、正社員に切り替えたりする方法もあります。最初から長時間働くと、仕事と家庭の両方で疲れがたまりやすいので、無理のないペースで始めることが長く続けるコツです。
パート薬剤師の時給の目安
job tagによると、令和7年賃金構造基本統計調査をもとにした薬剤師の1時間あたりの賃金は、短時間労働者(パートなど)で2,540円です。薬剤師のパートは、ほかの職種と比べても時給が高い水準にあります。地域や職場によって差があるので、求人を比べながら相場をつかみましょう。
職場見学で確認したいこと
求人票だけではわからないことも、見学に行けば見えてきます。次の点を確認してみましょう。
- 薬剤師の人数と、1日の処方せんの枚数
- 子育て中の薬剤師が働いているか、急な休みのときの対応
- 電子薬歴や調剤機器など、使っているシステム
- 新しく入った人への教育の仕組み(マニュアル、先輩の指導など)
- 休憩が取れているか、残業がどのくらいあるか
ブランクのある薬剤師が復職するときの注意点

以前のやり方にこだわりすぎない
ブランク前にバリバリ働いていた人ほど、「前はこうだった」と考えてしまいがちです。制度や職場のやり方は変わっているので、まずは今の職場のやり方を素直に学ぶ姿勢が大切です。生活の環境も変わっているので、周りの協力を得ながら、今の自分に合った働き方を見つけていきましょう。
ゆずれない条件を1〜2個に絞る
勤務時間、休みの取りやすさ、通勤時間、給与など、すべての希望を満たす職場はなかなかありません。絶対にゆずれない条件を1〜2個に絞って探すと、職場を見つけやすくなります。
ブランクを引け目に感じすぎない
最初はわからないことがあっても当然です。わからないことはその場で質問し、メモを取りながら一つずつ覚えていけば十分です。とはいえ、薬剤師としての基礎知識と経験があるので、新人とは飲み込みの早さが違います。ブランクを必要以上に気にせず、経験者として条件の相談をすることも大切です。
面接でよく聞かれる質問と答え方
| よく聞かれる質問 | 答え方のポイント |
|---|---|
| ブランクの間は何をしていましたか? | 子育てや介護など、理由を正直に簡潔に伝える。学び直しの取り組みも添える |
| なぜ今、復職しようと思ったのですか? | 「子どもが小学校に上がり、働ける時間ができた」など、具体的なきっかけを話す |
| 復職に向けて準備していることは? | 受けた研修や、確認した制度改正、新薬の勉強などを具体的に伝える |
| 急なお休みのときはどうしますか? | 家族や病児保育など、頼れる体制を説明する。できる範囲を正直に伝える |
| どのくらいの時間、働けますか? | 勤務できる曜日・時間を具体的に。将来、増やしたい希望があれば伝える |
復職前のチェックリスト
□ 家族と、勤務時間や家事・育児の分担を話し合った
□ 子どもの預け先と、急な発熱のときの対応を決めた
□ ブランク中の制度改正や新薬の情報を確認した
□ 薬剤師の届出(2年ごと)を済ませているか確認した
□ 希望する働き方と、ゆずれない条件を整理した
□ 扶養や年収の壁の影響を確認した
復職までの流れ
- 働き方の希望を整理する:勤務日数、時間帯、通勤時間、家族の協力の体制
- 知識を学び直す:制度の変化や新薬の情報、研修の受講
- 求人を探す:「ブランクOK」「研修あり」などの条件で探す。転職エージェントに相談する
- 見学・面接:職場の雰囲気や、子育て中の薬剤師がいるかを確認する
- 入職・研修:最初は先輩に教わりながら、少しずつ業務に慣れていく
架空のケース:7年のブランクから復職したUさん
※以下は架空の例です。
Uさん(架空・30代後半)は、出産を機に調剤薬局を退職し、7年間子育てに専念していました。子どもが小学校に上がったのをきっかけに復職を考え、薬剤師会の研修で最近の制度の変化を学び直しました。
薬剤師専門の転職エージェントに相談し、研修制度があり、子育て中の薬剤師が多く働くチェーン薬局のパート求人を紹介してもらいました。週3日・1日5時間から始め、1年後には週4日に増やしています。
ブランクのある薬剤師の復職に関するよくある質問
Q.ブランクが10年以上あっても復職できますか?
復職している人はいます。ただ、制度や薬の知識の学び直しには時間がかかるので、研修制度が整った職場や、パートなど負担の少ない働き方から始めるのがおすすめです。
Q.派遣薬剤師から始めるのはどうですか?
派遣薬剤師は、勤務する期間や時間を選びやすく、派遣会社の担当者に職場との調整を任せられるのがメリットです。ただし、派遣の薬剤師は管理薬剤師にはなれず、同じ職場で働ける期間にも上限があります。まずは派遣で現場の感覚を取り戻し、その後にパートや正社員を考える方法もあります。
Q.薬剤師免許の更新は必要ですか?
薬剤師免許に更新の制度はありません。ただし、薬剤師は2年ごとに、氏名や勤め先などを届け出る義務があります(薬剤師法の届出)。働いていない期間も対象になるので、届け出を忘れていないか確認しておきましょう。
Q.復職すると、扶養の範囲を超えてしまいませんか?
パートで働く場合は、年収によって税金や社会保険の扶養に影響することがあります。2025年・2026年には年収の壁の見直しもあったので、最新の基準を確認したうえで、働く時間を決めましょう。
ブランクの長さ別の復帰の考え方や勉強法は、こちらの記事でも解説しています。
まとめ:準備をして、自分に合った職場で復職しよう
ブランクがあっても、薬剤師は復職しやすい職業です。ブランク中の制度の変化を知り、少しずつ知識を取り戻しておけば、自信を持って現場に戻れます。
職場を選ぶときは、「ブランクOK」「研修あり」「子育て中の方歓迎」などの条件を目安に、見学で実際の雰囲気も確かめましょう。パートなど無理のない働き方から始めて、少しずつ勤務を増やしていくのもおすすめです。
