サービス残業の実態と平均時間に迫る!サビ残の請求方法と相談先も紹介

サービス残業の実態と対応策

グラディアトル法律事務所の弁護士、藤本大和です。
この記事は私が監修しています。

厚生労働省では、毎月勤労統計調査を行なっています。2017年の毎月の残業平均時間は11時間という結果が出ています。

しかし、口コミをもとに残業時間の統計を取った結果、残業時間の平均は35時間でした。定時を超えた労働には残業代を支払わなくてはいけません。

厚生労働省が統計発表している11時間は、残業代がしっかり払われているということです。

【35時間―11時間=24時間】

つまり、平均して1ヶ月24時間はサービス残業をしているということです。

サービス残業のアンケートグラフ

  • タイムカードは見届人が2人以上いないと押せないから不正はできない(20代女性 アパレル)
  • 必ずつけているけど、残業し過ぎないように意識している(30代男性 営業)
  • 残業をしていいのは週2日だけだから、効率よく仕事するように意識している(20代男性 IT)
  • エントランスの指紋認証で出退勤管理されているから確実につけている(30代男性 外資系)

残業代を全てつけている人の割合が1番多いようです。取り組みをしっかりしている会社では残業にならないよう仕事量の調節&しっかりつけられるように取り組みをしている会社が多いようです。しかし、わずかの差でサービス残業をしている人がかなりいました。

  • 上司に頼まれた雑用で残業代につけるのは気がひける(20代男性 営業)
  • 30分だけ面談しても、残業代の話がでなかったからスルーする(20代女性 事務)
  • 1~2時間程度だったらつけないし、先輩の手前そんな勇気はない(30代男性 商社)
  • 仕事としてつけていいのか微妙なラインのときはつけない(30代女性 出版)

コピーや、違う部署に書類を持ってくなどのちょっとした頼まれごとを残業とは認定しづらかったり、短時間ならまあいいやと見過ごす人も多いようです。

しかし中には10時間以上もサービス残業をしている人だっています。
短時間でも仕事は仕事です。もちろん残業代を請求することができます。

ちなみにこんなこともサービス残業の対象になります。

サービス残業の対象となる業務

  • お昼休みに来客があった時の対応する人を当番制で儲けているが休憩時間は変わらない
  • 始業前後の義務付けられた会社の掃除
  • 休みの日にトラブルがあって1時間ほど呼び出された
  • 出社しても制服に着替えてからじゃないとタイムカードを押せない
  • 15分未満の残業は切り捨てられる

仕事ではとてもありがちなことですが、これも給与が発生します。

特に制服に着替えるような仕事は、着替えの時間も勤務時間とみなされます。

残業代は1分ごとに発生し、労働基準法では切り捨ては認められていないので、違法になります

サービス残業の残業代は請求できます!

知らない人も多いと思うのですが、契約上の就労時間を超えて労働した場合、会社側は割増賃金を支払う義務があります。

また労働基準法により1週間あたりの上限も決められているのです。

基本的な労働時間の上限は1日8時間、1週間で40時間までとなります。

1日8時間か1週間で40時間を超える労働については、割増賃金(残業代)を支払わなければなりません。

割増の比率は契約内容によりますが、原則1時間あたりの賃金×1.25です。
※残業をした合計時間や勤務時間によっては1.5倍以上になるケースもあります。

仮に時給換算して1時間当たりの労働賃金が2000円なら、残業分の賃金は2500円となります。

社内の圧力から未払いの残業代に目をつぶっている人も多いですが、働いた分の残業代はしっかりと請求したいですよね。

でも何をどうすればいいのかわからないし…
という不安や気持ちもあるでしょう。

まずは自分がどれくらい残業していたのかを明確にする、物的証拠を集めておくことをおすすめします。

後ほど残業代の請求に関する相談を受け付けている窓口を紹介するのですが、その際に根拠となる勤務時間データなどの証拠がそろっていたほうが有利に動けるのです。

逆にそれらの証拠がそろっていないと、会社側の隠ぺい工作によって未払いのままになってしまう可能性が高くなります。
会社側も訴えられたりしたときの対策を考えた上で、サービス残業を強いているケースも多いためです。

サービス残業の残業代を請求したいけどどこに相談すればいい?

在職中・退職後どちらかによっても、残業代を請求することへの精神的ハードルは異なります。
退職後であれば精神的な負担も少ないのですが、在職中で残業代を請求する場合はその後の不安も多いです。

さまざま理由で未払いの残業代を請求できない人たちが、相談すべき窓口を紹介していきましょう。

全労連労働問題ホットライン

各地の労働組合が集まった労働者のホットライン

残業代の未払いや突然の解雇などはもちろん、社内でのパワハラや「雇用契約の変更について会社が相談に応じてくれない」といった問題に対したサポートを行っています。

フリーダイヤルで全国どこでもつながるため、相談事や労働に関して疑問に感じていることがあれば、メールや電話で問い合わせてみるといいでしょう。

労働基準監督署

企業が労働基準法をはじめとする法律を守っているかを監視し、違法している企業に対して行政指導を行ってくれます。公的機関として警察と同じように逮捕権・捜査権も持っており、事実上の警察と変わりありません。

パワハラや残業時間の相談をはじめ、労働に関わる多種多様な問題について相談することも可能です

ただ警察と同じように、明らかな違法行為(脱税や横領など)をしていない限りは「行政指導」にとどまるケースが多く、個人の残業代請求に直接関与することはほとんどありません。

そのため、労働基準監督署への相談だけでは問題が解決しない人も少なくないでしょう。
なお相談方法はメール・電話・対面です。

出典:労働基準監督署
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/kantoku/list.html(リンク切れ)

労働局雇用均等室

基本は他の相談口と同じで、労働者と経営者の間で発生した問題についてサポートを行う機関です。

パートタイムの管理問題や産休・介護休暇など、さまざまことに対応しています。
全国対応でどこからでも相談が可能。
メールでの問い合わせは対応しておらず。電話か面談での相談が基本となります。

出典:労働局雇用均等室
http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/hourei_seido_tetsuzuki/(リンク切れ)

社労保険労務士

各種労働問題の専門家であり、その分野の国家資格を持っているのが「社労保険労務士」です。
問題の当事者に話を聞いたうえで、社労保険労務士は「個別労働紛争のあっせん」という方法を用いてトラブルを迅速に解決してくれます。

労働側・経営側にはそれぞれの言い分があるため、双方の意見を取り入れた上で総合的にサポートされるのが一般的です。

弁護士

労働問題はもちろん、あらゆる法律問題のスペシャリストは弁護士です。
パワハラなどのオフィス内での人間関係に関わる問題はもちろん、残業代未払いや雇用問題などさまざまな問題に対応してくれます。

万が一未払いの残業代請求で裁判までなだれ込んだ場合でも、弁護士なら交渉・弁護まで一貫して対応することが可能です。

ただ相談時に費用が発生するケースもあるため、事前にホームページなどでチェックしておくようにしましょう。

弁護士によっても得意とする分野が異なるので、労働問題に関する実績が多い事務所を選ぶことをオススメします。

以上が残業代の請求に困ったときの相談窓口です。

より残業代を回収できる可能性が高いのは弁護士への相談となりますが、コストもかかるため会社側の動き方を見て調整するといいでしょう。

残業代を払ってもらうにはどんな手順・手続きが必要なの?

残業代を請求するための手順と手続き方法

未払いの残業代請求の時効は2年です。

支払ってもらうには言いにくいかもしれませんが、直接会社に伝える必要があります。穏便に済むことが一番良いのですが、「それは残業代には当てはまらない」などつっぱねられつことも多いです。

ここで諦めずに請求したい場合はしかるべき手段を取るために準備が必要になります。

サービス残業・みなし残業どちらでも使える方法なのでよくチェックしておきましょう。

その1:サービス残業代が未払いについて報告する

「残業代をもらっていないのでください」なんて口頭で言ってもしかたがありません。残業代をもらうために具体的な情報をメールや書面で提出しましょう。

  • 自分の名前や部署、どんな業務を担当しているのか?
  • サービス残業に当たる仕事内容や発生日時を具体的に伝える
  • サービス残業をしていたことにたいしての証人
  • サービス残業が一時的ではない場合、現在の職場の状況も伝える
  • 未払いの残業代がいくらなのか?計算式なども具体的に(残業時間数×時給×1.25)
  • いつまでに回答してほしいかもしっかり明記する

ケンカ腰で伝えるのではなく、あくまでも労働基準法にのっとった正当な請求であり、誠意ある対応をしてほしいことを伝えると◎!

もし労働組合の人とコンタクトがれるのであれば相談しながら交渉するのもいいですね。
サービス残業は直属の上司が絡んでくるパターンが多いので、もし上司に話をしたいときは、部署が違う信頼できる人だと協力してくれるかもしれません。

みなし残業の未払い残業代の計算方法

サービス残業の場合、月給から時給を計算して残業時間と割増率1.25をかければ計算できます。しかしみなし残業の場合、残業代を引いたそもそもの時給が明確にされていないことが多いです。

みなし残業の場合は、このように計算しましょう。

1:基礎時給を計算します。
基礎時給=(月給?みなし残業代?各種手当)÷(月平均所定労働時間)

2:本来発生している残業代を計算します。
本来の残業代=基礎時給×1.25×残業時間

3:未払い残業代を計算します。
未払い残業代=本来の残業代?みなし残業代

その2:直接交渉して相手にされない場合、内容証明を送る

メールや書面で報告しても、期日までに回答が得られない場合があります。

「そんなメールや書面は届いてない」とシラをきられることを防ぐために、郵便局から内容証明を送りましょう

同じ書面なのですが、郵便局が郵便物の内容を証明してくれるものなので、回答が得られなくても意思を伝えた証拠になります。もし裁判になったときに有利になることも!

また、未払い残業代の消滅時効期間は2年と短いのですが、内容証明郵便によって支払いの催告をすることにより消滅時効の完成を半年間先延ばしにすることができます。

その半年の間に裁判上の請求等を行わなければ結局消滅時効が完成してしまうことにはなりますが時効期間満了が迫っているとき等にはとにかく内容証明郵便を送付することによって消滅時効の完成を先延ばしにすることが重要です(民法153条)。

その3:和解できなければ訴訟の準備や労働基準法違反として申告する

内容証明を送っても話し合いの機会が与えられない、あるいは交渉決裂してしまった場合は第三機関を利用します。いきなり裁判を起こすと費用もかかるので、【労働基準監督署】に問い合わせましょう。残業代が発生する証拠をしっかり揃えていれば、正確な残業代の計算もしてもらえますし、費用が発生することなく短期間で解決できます。

  • タイムカード
  • パソコンの起動時間や終了時間のデータ
  • 防犯カメラの映像
  • 業務報告書の作成時間
  • メールの送受信履歴
  • 電話などのやりとり記録

時間外に働いていたことを立証できるものをあらかじめ揃えておきましょう。タイムカードを押さないうちから働く、またはタイムカードで退勤をしてから残業するというときは、防犯カメラなどの映像はかなり有効的です。

サービス残業を請求したらどれくらい受け取れるの?

実際に残業代を請求したとして、一体どれくらいの金額を受け取れるのでしょう。

1日8時間を超える労働にはすべて残業代が発生するわけですが、残業代は普段の賃金よりも割増しで支払うことが労働基準法で定められています。
基本的な時間外労働であれば、割増率は1時間あたりの賃金の1.25倍です。

ただ残業代の割増率にはいくつか分類があり、どこに当てはまるかによって割増率が異なります。
それぞれの概要と割増率は以下の通りです。

時間外労働の分類残業代の割増率
時間外労働(法定労働時間を超えた場合)25%増
時間外労働(1ヵ月あたり60時間を超えた場合)50%増
深夜労働(PM10時からAM5時まで深夜料金)25%増
休日労働35%増
時間外労働+深夜労働50%増
時間外労働(月に60時間以上)+深夜労働75%増
休日労働+深夜労働60%増

午前6時から午後10時までに行った残業の割増率は1.25倍です。
しかし、1カ月に60時間以上の残業を行った場合は50%まで増額されます。

さらに深夜労働を行う場合も1.25倍となるため、60時間を超える深夜労働をした場合は最大75%までの割増賃金が発生するのです。

仮に時給換算した賃金が2000円なら、割増後の金額は3500円となります。

【弁護士が教える】サービス残業代請求のマメ知識

残業代を筆頭に、未払い賃金については退職時点から非常に高い年利が付されます。

一般的な債権であれば年5%(民法)若しくは年6%(商法)の年利しかつきませんが、退職後の未払い賃金については賃金の支払の確保等に関する法律という法律によって年利14.6%の利息が付されることとなります(同法6条1項,同法施行令1条)。

そのため、未払い賃金が思っていたよりも高額になっている可能性があります。

他にも「うちは裁量労働制だから残業代は出ないよ。」などと言ってくる経営者や上司もいるかもしれませんが、裁量労働制の適用にはいくつかクリアすべき障壁があります。そう簡単に適用されるものでもありません。

自分がどのような形態で働いているのか、会社の業務はどのようなものであるかを含め一度労働基準監督署や弁護士に相談することを強くお勧めします。

サービス残業に関して各相談窓口に相談したとき料金は発生する?

残業代に関して相談したいけど、相談すること自体に費用が発生するのか不安ですよね。
これは相談する窓口によって異なります。
国が運営している労働基準監督署や、各地の労働組合が集まった全労連労働問題ホットラインは無料で相談可能です。
弁護士や社労保険労務士は事務所によって料金体系が異なり、相談1時間あたり1万円程度の費用が発生することもあります。

電話相談は無料の弁護士もいるので、ご自身の状況に合わせて最適な相談窓口を選択してください。

 

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