今後10年から20年程度の間で、AI(人工知能)や産業用ロボットの発展や進化により自動化される仕事、即ち機械に取って代わるためになくなる可能性がある仕事について、英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授が論文で発表しましたが、その論文内容はあまりにも衝撃的でした。

米国の47%、英国の37%、日本ではなんと労働人口の最大49%(日本は野村総研が同じ手法を用いて分析した結果)が人工知能やロボットに代替される可能性が高いという結果だったのです。

あまりに衝撃的な内容だったことからこの論文はニュースとして日本や先進諸国のマスコミで大きく取り上げられましたが、予測結果だけが注目され、そうした職業に従事している方々への具体的な処方箋はほとんど提示されていません。

そこでこの記事では、なくなる仕事だけでなく、残る仕事についても明らかにし、両者の違いを明らかにすると共に、なくなる仕事に現在従事している方々が仮に10年後を見据えた場合にはどうすれば良いかの処方箋を提案して参ります。

将来なくなると予測されている仕事とは

オックスフォード大学で発表された、今後10年から20年程度でなくなると予測された仕事の一部(調査対象となったのは全702職種)をご紹介しましょう。

将来なくなると予測された仕事の例

銀行の融資担当者
スポーツの審判
レストランの案内係
動物のブリーダー
電話オペレーター、電話営業マン
給与・福利厚生業務
レジ係
娯楽施設の案内係、チケットを切る係
カジノのディーラー
ネイリスト
クレジットカード申込者の審査業務
弁護士助手
ホテルの受付係
電話販売員
時計修理工
税務申告代行業務
データ入力作業
彫刻師
苦情の処理・調査担当者
薄記、会計、監査の事務員
検査、分類、見本採集、測定作業
映写技師
メガネ、コンタクトレンズの技術者
殺虫剤の混合、散布の技術者
義歯制作技術者
測量技術者、地図作成技術者
造園・用地管理の作業員
建設機器のオペレーター
塗装工、壁紙張り職人

(英オックスフォード大学のオズボーン准教授の論文より抜粋)

なぜなくなるのか。事例で解説

ではなぜなくなるのか、事例でいくつか解説しましょう。

例えばスポーツの審判は、ビデオ撮影による映像判定が既にプロスポーツの世界に浸透しています。

映像解析技術や動体を自動追尾して撮影する技術などは急速に進化を遂げており、試合進行を管理する主審にあたる仕事以外は、現時点で既に機械に代わることも可能になっていると言っても過言ではありません。

また、レジ係については例えばイトーヨカドーやマルエツ、ヤオコーをなどを利用したことがある方なら御存知の方もいるでしょうが、スーパーマーケットではすでにセルフレジを部分的に導入しています。
しかもその成果は著しく、レジ係の人件費削減に成功した事例として経済新聞紙などでも取り上げられています。

また「彫刻師」ですが、彫刻作業の代表的事例といえば日本では印鑑や表札があげられますが、印鑑や表札はすでにパソコン画面で指定したとおりに刻印できる機械があり、年々進化を遂げ、その仕上がりレベルは「巧」と呼ばれる職人レベルの域に既に到達しています。

その他にも例えば

測量や用地管理

首相官邸に落下したことで注目を集めたドローンを使った測量や建設用地の管理は既に建設現場の一部で利用開始されている

電話オペレーター

人件費を抑制するためにAIを活用したコールセンターの技術開発にみずほ銀行が開発に着手している

ネイリスト

機械に差し込むだけで自動的にネイルを施せる機械が登場し、導入しているサロンが増えてきている

等々、オズボーン氏の論文を裏付ける数々の事実を現時点で多数あげることができる状況であり、単なる「予測」として片付けることができない、現実的な指摘であることを理解しておく必要があります。

将来なくならない仕事とは

では逆に、将来においても人工知能やロボットに取って代わられる可能性が低い職業とはどのような職業でしょうか。

野村総研が定量分析を行い、公表した日本の職業の一部を事例として紹介します。

将来AIやロボットに代替される可能性が低い職業例

アートディレクター
アロマセラピスト
医師
インテリアコーディネーター
映画監督
カウンセラー
ケアマネージャー
経営コンサルタント、中小企業診断士
ゲームクリエイター
コピーライター
シナリオライター
社会福祉施設指導員
獣医師
柔道整復師
商業カメラマン
ソムリエ
教師
俳優
はり・きゅう師
美容師
保育士
マンガ家
ミュージシャン
料理研究家
レストラン支配人 等

(NRIニュースリリースより一部抜粋)

なくならない仕事の特徴とは?

同じ分析・調査方法に基づいて導き出された10年後になくなる可能性が低い職業の特徴をあげるなら

・創造性や独創性が問われる仕事

・他者への人間的な理解が問われること、あるいは前提となる仕事

といったことをあげることができます。

例えばアートディレクター、映画監督、ゲームクリエイター、コピーライター、シナリオライター、マンガ家などは創造性がなければ務まりません。

また、医師やカウンセラー、ケアマネージャー、保育士、福祉指導員などが代表的例ですが、これらの仕事は、機械的な分析だけでは容易に理解できない「他人の気持ち」を理解できることが必須の仕事であり、ロボットには代替困難です。

なくなる仕事となくならない仕事の違いを判断するポイントは?

本記事でご紹介したなくなる仕事となくならない仕事は、一部の事例に過ぎません。

なくなる仕事の事例に含まれていなかったからといって、喜ぶのは早計です。

なくなる仕事となくならない仕事のそれぞれの特徴を踏まえ、10年から20年程度の将来に「なくなる仕事」と「なくならない仕事」のどちらに該当する可能性が高いか、自身で自分の職業を判定しておく必要があります。

では簡易的な方法を一つご紹介しておきます。

次の質問に対して「はい」か「いいえ」かをセルフチェックし、「はい」が多ければ多いほどなくなならない可能性が高い仕事であり、「いいえ」の方が多ければ多いほどなくなる可能性が高い仕事と言えます。

セルフチェック用質問

・答えが明確ではない、あるいは正解がいくつもある仕事か

・仕事の結果に独自性や個性が求められる仕事か

・創造性や発想力、ひらめきなどが強く求められる仕事か

・他者の心を読み取った上で、臨機応変な対応が求められる仕事か

・仕事の手順をマニュアル化、ルーティン化できない仕事か

・他者とは容易に交代できない仕事か

・他者が行った場合には、全く結果が異なってくる可能性が高い仕事か

 

将来なくなる可能性が高い仕事に従事されている方へのアドバイス

では10年後から20年後になくなる可能性が高い仕事として紹介されていた仕事に従事している方々や、ご紹介した判断ポイントでセルフチェックした結果、その可能性が高いと考えられる仕事に就いている方々は今後どうすべきなのでしょうか。

有効な対策についてアドバイスさせて頂きます。

「100%ではない」と考えるのは禁物

オズボーン氏が指摘している仕事が消える確率は90%以上となっており、100%という訳ではありません。

少ないながら、消えない可能性も残されています。

しかし、そのわずかな可能性に期待を寄せ、何も取り組まないことは決して望ましいことではありません。

例えばドライバーが1年間で事故に遭遇する確率は1%弱に過ぎず、生涯で遭遇する確率でも約33%程度です。

それでも任意の自動車保険加入率は7割を超えています。確率が低くとも万一自動車事故に遭遇した場合に困らないようにするためです。

それと同じ事で、仕事がなくなっても困らない対策に取り組むことは、実際になくなる、なくならないの問題ではなく、自分自身に対する保険として大切なことです。

「まだ先のこと」と悠長に考えない

ではいつから対策に取り組むべきかですが、10年後から20年後ということを考えればまだ時間的な余裕があるように思えます。

では仮に5年後から対策をスタートさせれば間に合うものでしょうか。

なくなる仕事についてはお伝えしたとおり、既に現時点でなくなる可能性を示唆する事例を容易に確認することができます。

そのためもっと早まる可能性すらあるということです。従って5年後など論外です。

今から対策を始めても決して遅くはないということです。

対策(のゴール)は:なくなる仕事からなくならない仕事への転職

では何をすべきかということですが、対策のゴールから先にお伝えするなら「なくなる仕事からなくならない仕事へ転職を果たすこと」です。

10年後から20年後も仕事で食べてゆける状況を作るには、それしか方法がありません・・・と言いたい所ですが、正確には後1つだけ方法があります。

それは「10年後~20年後の未来で新たに誕生する仕事に就くこと」という方法です。

しかし、ある程度の想像はできても、10年後~20年後に誕生する仕事を明確に予見することも、それらの仕事に就く上で必要となる資質や能力を現時点で明らかにすることは困難です。

その点で、なくなる可能性が低いと言われる既存の仕事なら、仕事に就く方法や必要とされる資質、能力なども明確になっています。

従って「なくならない既存の仕事」を軸に転職を検討することが現実的な対策と言えます。

なくならない仕事を探り、自分の適性や気持ちをじっくりと考える

ではゴールに向けて今からどのような取組みを行なうべきかという点ですが、知らなければ転職も何もあったものではありません。

まずはなくならない可能性が高い仕事全般に対する知見を広め、理解を深めることが第一歩です。

そのためにはなくならない可能性が高い仕事の具体的な仕事内容や求められる適性や知識、条件、仕事に就くための方法などをネット上で調べたり、例えば転職エージェントといった転職のプロに相談するなどしたりしてよく理解することです。

また、自分が積極的に取り組める仕事であることが大切なので、どのような仕事なら積極的に仕事をしたいと思えるか、自己分析を通じて気持ちを整理してゆくという取り組みも並行して行なうことも必要です。

これらには一定の時間がかかります。

ぼんやりと考えていれば1年や2年はあっという間に過ぎ去ってしまいます。

繰り返しとなりますが「まだ先のこと」などと考えず、転職準備として、なくならない可能性が高い仕事へ目を向け、知見を広めてゆくことに今から取り組むことが大切なのです。

なくならない仕事を探すなら…