転職と労働組合の関係について、ネット上では「労働組合がある企業=ブラックではない企業」、「転職するなら労働組合がある企業を選ぶべき」といった論調が数多くみられます。

果たしてこうした見方は完全に正しいと考えて良いのでしょうか。

確実に言えることは、全ての労働組合が組合本来の目的を果たしているとは言えないケースがあるということです。

それだけに、ネット上の論調を盲目的に信頼することは転職活動において危険ですらあると言えます。

そこで今回はこれまで組合員としての経験がない方が、労働組合のある企業へ転職する、もしくは検討されているといった場合に労働組合をどのように捉えておくことが適切なのか、転職における労働組合に対する正しい見方や留意点などを中心にお届けして参ります。

労働組合とは?

労働組合について理解を深めて頂けるよう、改めて労働組合とは何かということを確認しておきましょう。

労働組合は労働三法の一つである労働組合法で明確にその定義が定められています。

労働組合法第2条で労働組合とは

「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」

と定義されています。

この条文を踏まえ、その特徴を噛み砕いて補足しますと次のように整理できます。

img組織の主体:労働者であって、経営側が内部に関与する組織ではないこと

img活動目的:労働者の労働条件の維持や改善、向上を目的としていること。

img会社との関係:労働者の労働条件改善のため、対立する場合もあること。労使協調の名の下に仲良くすることを前提としていないこと。

このような特徴が”本来の”労働組合であることを、まずは理解しておいてください。

労働組合の実態を数値でみた場合

厚生労働省が公表している「平成27年労働組合基礎調査の概況」から、労働組合の実態を数字から見てみましょう。

img労働組合数:24,983(前年より1.2%減)

img労働組合員数:988万2千人(前年より0.3%増)img推定組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合):17.4%

これらの数字からわかるとおり、日本全国にいる雇用者(労働者)の方々の内、労働組合員となっている割合は2割にも達していないことがわかります。

つまり8割以上の方が労働組合とは無縁の状態で働いていることになります。

どのような企業に労働組合が多いのか?

労働組合は団結することが前提となりますので、二人以上の労働者がいれば組合を組織することはできます。

従って中小企業であっても働いている方々が労働組合を作ることは可能です。

しかしながら中小企業全体の労働組合組織率は少数に留まっており、その推定割合は百人未満の中小企業で約1%(2013年データ)と言われています。

つまり労働組合の大半は大企業に集中している状況にあり、従業員数1千名以上の大企業における加入状況は4割~5割程度とみられています。

管理職は労働組合に入れないので、大企業の管理職以外の社員に着目した場合、加入割合は6割から7割程度が加入していると考えられます。

そのため、転職において中小企業から大企業へと転職される場合には「労働組合がない企業」から「労働組合がある企業」への転職となるケースが増えることになります。

労働組合がない大手企業とは?


労働組合がない大手企業としては任天堂などが有名ですが、現状、上場している大手企業などで労働組合がないケースは珍しい部類に入ります。

そうした状況からか、「労働組合がない大手企業はブラック企業だ」といった根強い噂があるのですが、実情を正確に捉えようとしない短絡的な見方と言わざるを得ません。

一例としてあげた任天堂は社員満足度が高い企業として知られています。

また大企業でありながら労働組合があまりないことで有名なのが外資系企業ですが、こうした噂に従えば「大手外資系企業=ブラック企業」といった乱暴な話になってしまいます。

大手外資系企業に組合がない理由

外資系企業の特徴は御承知のとおり実力主義であり、仕事上で成果をあげれば入社年数に関係なく高い収入が得られます。

その一方、成果をあがられなければ低い収入のままとなり、それが長期に及べば解雇される場合もあります。

要は社員各人の能力で収入が決まるため、労働条件改善のために一丸となれる統一的な基準が定めにくいことが、外資系企業に労働組合があまり見られない理由の一つです。

また、外資系企業は新卒採用より中途採用主体という場合が多く、入社する側も再び転職することや独立することを前提に入社される方々が多いこと、つまり長期に居座って労働条件を改善しようという機運が生まにくいことも理由としてあげられます。

こうした理由から大手外資系企業では労働組合はあまりみられないのですが、申し上げるまでもなく外資系企業=ブラック企業との見方は正確とは言えません。

外資系に転職した方は仮にハードワークになってもそれに見合った高額報酬を得るために自らすすんで努力している面があり、低賃金で労働を強要されるブラック企業とは本質的に異なります。

また、外資系企業の場合、成果をあげた社員には日本企業では考えられないような長期休暇を与えている場合もあります。

こうした事例からも「労働組合がない=ブラック企業」との見方は適切とは言えないのです。

労働組合があるのに機能していない企業が実は危険?!


冒頭でお伝えしたとおり、労働組合があっても組合が本来の目的どおりの役割や機能を果たしていない場合があります。

実は、こうした機能不全に陥っている労働組合がある企業は労働組合のない企業より働く環境として好ましくないこともあるのです。

「名ばかり労働組合」と言われる労働組合

労働組合には働く側の権利を守るため、働く側の立場になってまっとうな活動を行っている労働組合も勿論存在しています。

が、労働組合とは名ばかりで実態としては組合員からの組合費徴収だけのためにあり、たいした働きをしていない労働組合も存在します。

そのような労働組合のことを「名ばかり労働組合」と言います。

こうした名ばかり労働組合に限ってまともに働かないだけでなく、「収益源」となっている組合費が損なわれることから、組合から脱退しようとした場合にだけ猛烈な圧力をかけるなどして容易に組合から脱退できないといったケースも見られます。

つまり現状としては組合費だけが搾取するだけとなっている労働組合もありますので、働く側にとってはむしろ有害な組織と言って良いかも知れません。

「御用組合」と呼ばれる労働組合もある

もっとも、ただ働かないだけの労働組合ならまだマシと言える場合もあります。

更にたちが悪いのが「御用組合」と揶揄されている労働組合の存在です。

御用組合とは労働組合の本来の目的ではなく、会社側の言いなりとなって会社側の労働条件を働く側に呑ませたり、働く側の不平や不満を丸め込もうとするような役割を果たしている労働組合のことです。

更に悪質な御用組合になると、働く側を監視し少しでも落ち度や不注意があれば会社側へ密告するなどして解雇する場合に有利になりそうな情報収集を行なったり、酷い場合には会社を辞めるよう不当な圧力をかけたりする場合すらあります。

「労働組合=善の組織」と即断しないこと

誤解してはならないことですが、労働組合の全てが名ばかり労働組合や御用組合だという訳ではないということです。

本来の労働組合の意義や本質を踏まえて働く側の労働条件や経済的地位向上のために闘ってくれる頼りになる労働組合もちゃんと存在しています。

しかしながらその一方で、名ばかり労働組合や御用組合と揶揄されている悪質な労働組合が一部にあることもまた事実なのです。

大切なことは

img労働組合=善の組織である

img労働組合がある企業=ホワイト企業、ない企業==ブラック企業

といった断定や先入観だけで、安直に労働組合を捉えてはならないということです。

労働組合があっても名ばかりや御用組合の場合なら、労働組合がない会社よりも労働環境として悪くなる場合もあるという認識や前提が必要なのです。

転職における対策:ユニオン・ショップ協定を踏まえた対策が必要

困難だが可能な範囲で労働組合についても事前に情報を取ること

では労働組合が必ずしも善の組織とは限らないという事実を踏まえた上で、転職先を選ぶ場合にどうすれば良いかということですが、まずできる限り転職先候補の労働組合についても調べ、情報をとることです。

ただし、企業側へ労働組合のことを尋ねても御用組合ならは両者が結託していますので、正確な情報を得ることは残念ながら困難です。

外部から情報を得るにはどうしても限りがありますが、新聞等のマスメディア情報などを中心に、過去に労働組合絡みで何かトラブルが生じていなかったかなどは調べておくべきことと言えます。

ユニオン・ショップ協定の有無を踏まえた入社後の対策


労働組合の実態は外部から事前に見分けることが難しいため、入社してからはじめてわかるという場合が多くなってしまいます。

しかしながら、入社後に労働組合が悪質な組織だったという場合でも対策はありますのでご紹介しておきます。

採用と労働組合加入が条件となっている場合(ユニオン・ショップ協定)

採用時には必ず労働組合に加入することが条件となっている場合があります。

こうした条件をユニオン・ショップ協定と言います。

ユニオン・ショップ協定はいろいろと問題含みの協定であり、御用組合を生む要因にもなっているものですが、ユニオン・ショップ協定は労働組合が加入条件だと言っても、その会社の組合へ加入することが絶対条件という訳ではないのです。

社外であっても労働組合に加入していれば、ユニオン・ショップ協定の効力は及ばないとされています。つまり組合脱退を理由に解雇される心配はありません。

従って、一度加入させられたとしても社外にある、個人単位で加入できる労働組合に加入することで御用組合による支配を回避できます。

ユニオン・ショップ協定といった条件がない場合

ユニオン・ショップ協定といった条件がない場合には、労働組合への加入は強制されません。

従って労働組合の実態をよく確かめてから、働く側のために懸命に汗をかいてくれる本質的な組合であることを確証できたら加入するかどうかを決定することです。

労働組合を確かめもせず最初から善の組織と考え、誘われるまま加入することはできるだけ避けるようにすることが肝要です。

★こちらのページもよく読まれています!