
保育士をかつては「保母」と呼んでいたことを皆さん憶えているでしょうか?つまり、保育園の先生はかつては「女性の仕事」だと認識されていたということですよね。
1977年から男性も保母の資格を取れるようになりましたが、まだまだ男性保育士は珍しい存在です。
ここでは男性が保育士として働くことのメリット、デメリットについて述べたいと思います。
男性保育士はどのくらいいる?

かつて「保母」と呼ばれていた職業ですが、「保育士」と男女とも呼ばれるようになったのは1999年の「児童福祉法」改正からです。
- それまでは:職業は「保母」。男性保母を便宜上「保父」と呼ぶ
- 1999年以降:男女共「保育士」に統一
という流れです。
男性が保育士として働けるようになってから、まだ50年ほどしか経っていないんです。
男性保育士の割合ですが、少ないながらも増加しています。
『国勢調査』によると
平成12年 全保育士36万1,488人,男性は4,666人 割合は1.3%
平成22年 全保育士47万4,900人,男性は1万3,160人で 割合は2.8%
となっています。
その後も男性保育士は少しずつ増えており、令和2年(2020年)の国勢調査ベースでは男性の割合は約4%です。
しかし、まだまだ少数派です。


男性看護師の場合、体力が特に必要なICUや手術室、万が一の事態に備える閉鎖病棟のある精神科、男性向け形成外科など「男性であること」が強みというか女性だと避けられてしまう職場があります。
だから、積極的に男性看護師を採用していますが、男性保育士の場合はどうなのでしょうか?
ココが本記事の核心であり、メリット、デメリットを考えるうえで重要な要素になります。
保育園で働くには保育士免許が必要

保育園で保育士として働くには、当たり前ですが「保育士」の資格が必要になります。
なぜ当たり前のことを書くかというと、保育士は「女性の資格」であったため、女子大や女子短大など男性が入ることができない学校に保育士養成課程があることが多いからです。
保育士になるには下記ののいずれかが必要になります。
- 4年制大学の保育士養成課程で所定の単位を取得し、卒業する。
- 短大の保育士養成課程で所定の単位を取得し、卒業する。
- 専門(専修)学校の保育士養成過程で所定の単位を取得し、卒業する。
- 上記以外の養成施設の保育士養成過程で所定の単位を取得し、卒業する。
- 保育士試験に合格する。
女子大や女子短大は男性の入学はできませんし、専門学校でも女性に限っているところもあります。
男性が保育士になるには、男性OKの学校へ行き、その学部の過程を履修しなければなりません。

男性保育士を巡る話題

2017年に話題になったのが「男性保育士が女の子の着替えやおむつ替えをすること」についての賛否です。
千葉市長が問題を提起して議論が巻き起こりました。
男性保育士の女児担当外しは性差別? 熊谷俊人千葉市長の発言で議論
女性保育士が男の子の着替えやおむつ替えをしても何の批判も出ていません。
というか何十年もそうだったわけで批判はないですよね。
でも、男性保育士が増える中で、「男性にはそういうことをされたくない」という親の意見が出てくるようになりました。


でもこのことが提起されたのは、保育園に男性保育士が増えてきていることの証左でもあるんですね。
男性医師が診察のために女の子の服を脱がせても問題にならないですが、違いは何なんでしょう?必要なことに違いはありませんよね。
年齢別の年収

保育士の年収はかなり低いのが現実です。
平成28年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省
賃金構造基本統計調査:職種別(一般労働者)|独立行政法人 労働政策研究研修機構
等によると保育士の2016年の平均年収は約320万円。
同じ「女性の職業」の看護師が約470万円ですから、もう全然安い、安すぎると言っていいでしょう。

年収が 女性≒男性 であることです。
サンプル数が少ないので確定的なものではありませんが、職業情報サイトCareer Gardenによると保育士の平均年収は、男性340万円・女性320万円と他の職業と比較して男女差がありません(男女が逆の調査もありますがいずれにせよ絶対値が低いです)。
特に新卒~結婚くらいの年齢では変わらず、男性の方が年収が低い調査もあります。
30代で男性保育士はほとんど昇給していないのに対して、女性保育士はぐんぐん上がり、30代後半の年収は400万円を超える調査もあります。
- 20代前半の男性保育士 約270万円
- 30代前半の女性保育士 約400万円
この調査では、女性は看護師ほどではないもののある程度の稼ぎが得られるのに対して、男性はあまり稼げていませんでした。
普通は逆ですよね?なぜこんなことが起きるのでしょうか?
最新データでは男性保育士の年収が女性を上回る
上記は記事作成時点(2016年前後)の状況です。令和5年の賃金構造基本統計調査では、保育士の平均年収は男性 約448万円・女性 約393万円となり、男性のほうが高くなっています。令和6年の保育士全体の平均年収は約407万円で、2016年の約320万円から大きく上昇しました。
| 時点 | 男性保育士 | 女性保育士 | 保育士全体 |
|---|---|---|---|
| 2016年(記事作成時点・民間調査含む) | 約340万円(20代前半は約270万円) | 約320万円(30代前半は約400万円の調査も) | 約320万円 |
| 令和5年(2023年)賃金構造基本統計調査 | 約448万円 | 約393万円 | — |
| 令和6年(2024年) | — | — | 約407万円 |
処遇改善加算の拡充や公定価格の引き上げが続いたこと、男性保育士に主任や園長といった役職者が増えてきたことが背景にあると考えられます。それでも全産業の男性平均(約570万円)には届いておらず、「一馬力で家庭を養うのは厳しい」という状況は大きくは変わっていません。
男性保育士は家庭を養えない!?~年収が低く、続かない理由
実は似たような調査で、男女それぞれの保育士の平均年齢、平均勤続年数もわかっています。
| 平均年齢 | 勤続年数 | |
|---|---|---|
| 男性 | 31.4歳 | 6.3年 |
| 女性 | 35.1歳 | 7.7年 |
上の表のようになっています。
つまり男性保育士は長続きせずどんどん辞めていくのではないか?という仮説が成り立ちます。
なぜ、男性の方が若くて続かないのでしょうか?
①男性に開かれてから日が浅い
上でも書きましたが「保母」から「保育士」に変わって四半世紀あまり、それ以前の「保父」として働いている人はとても少なかったはずです。

こういうことならば、今後、男性が増えていき、ベテラン勢も増えていけば平均年収も上がっていきそうですが。
②収入が低く家庭を養えないので辞めて転職する
保育士等に関する関係資料|厚生労働省によると、男性保育士の平均年収は、男性看護師や男性の幼稚園教諭に遠く及ばず、介護士やホームヘルパーと同等の水準になっています。


結婚や出産をきっかけに働き方を変える人もいますが、家計を支える立場の人にとっては、収入の低さは大きな問題です。
男性保育士の中には、せっかく就職しても給料が上がらないことに不安を感じて、転職して辞めてしまう人もいます。
③女性の職場なので居づらくて辞めてしまう
95%以上が女性という環境ですから、就職した保育園で男性は自分一人ということもあります(後の男性は事務の人とか用務員のおじさんとか)。


- 保育士の年収は低い
- その年収だと「一馬力」で家庭を養うのは難しい
- 結婚するなら共働き必須
なのは事実でしょう。
介護の仕事以上に、保育の仕事の特殊性によってこのような男女逆転状態が起きているとも考えられます。
転職するメリット、デメリット
それでは男性保育士になるメリットや男性保育士そのもののメリットはないのでしょうか?またデメリットについても見てみましょう。
男性保育士そのもののメリット
1.防犯上助かる
女性保育士しかいない保育園よりも、男性保育士がいる保育園の方が防犯上安心ということもあります。
子どもだけではなく保育士の人に変なことをする人がいないとも限りません。
男性がいるだけである程度抑止力になります。
2.力仕事で助かる
保育園では年中行事が盛んに行われます。
飾りつけや高いところの仕事、モノを運ぶなどする場合、男性の方が助かるのは言うまでもありません。
これは男性看護師のメリットとも似ています。
3.男児のトイレの介助ができる
最初に挙げた女児の介助の逆です。
女性保育士が男児の下のお世話をしても、男性→女児よりもクレームは付きにくいですが、それでも嫌がる子どもや親もいるでしょう。
保育園の中ならばそれでもいいかもしれませんが、遠足などに行った場合、外のトイレに女性が入るのは(保育士本人も含めて)嫌ですよね。
男性保育士がならば男の子と一緒にトイレに入ることは何の問題もありません。
4.子どもの成長にとってプラス
社会を学ぶ上で男女双方の先生がいた方がマイナスにはならないと思います。
両親から離れて保育園に預けられている子どもですから、女性の先生だけでなく男性の先生もいることで、いろいろな大人と関わる経験ができ、心の発達にもプラスになるでしょう。
男性が保育士に転職するメリット
「保育園に男性がいるメリット」は以上になりますが、「男性として保育士に転職するメリット」はあるのでしょうか?ないなら給料の高い他の職業の方がいいですよね。
1.体力を活かせる
元々保育園はほぼ100%女性の職場でしたから、それでも回せる=男性の力が必要な場面が少ないのかもしれません。
子どもと思い切り遊んだり、行事の準備で力仕事をしたりと、保育の仕事には体力を活かせる場面がたくさんあります。
2.父親になる準備、父としての経験を活かせる
保育園の中で父親代わりをしますから自分が父親になったときにその経験を活かせます。
また、すでに子育てを経験しているのであれば、それを活かすこともできます。
即戦力が期待されていますので、実際の子育ては役に立つはずです。
3.出世コースに乗りやすい?

保育園の役職はすべて「平保育士」ではありません。
リーダーや主任、その後管理職になり、園長になる可能性もあります。
日本では女性管理職が非常に少なく問題になっています。
※参考役職別管理職に占める女性割合の推移|内閣府男女共同参画局
「女性は管理職になりにくい」の裏返しは「男性は管理職になりやすい」であり、本当はそうあってはならないのですが、園長や理事など出世の先にあるゴールへは男性の方がたどり着きやすい社会です。
95%以上が女性の保育園ですから、男性保育士として転職すれば「将来の園長候補」として遇されるかもしれません。
普通の企業では係長止まりでも、保育園では園長になれるかもしれません。尤も、それが幸せかどうかは別の話ですが。
そこまで行けば年収も大きく上がるはずです。最初は低く、後でどーんと高く、ですね。
デメリット
男性が保育士に転職するデメリットもあります。
1.社会の評価が低い
男性看護師もそうですが、「男性がなる仕事ではない」と考える人がいます。一段低く見られてしまうわけです。
学校の先生ならば男女関係ない評価になりますが、保育士の場合は、これまでほぼ女性が担ってきた職業だからか、男性というだけで偏見を持つ人も残念ながらいます。
2.収入がやはり低い
これは上で述べたとおりです。管理職になれず平の保育士のままであれば年収300万円台。
これでは生活していくのも、家庭を維持するのも大変です。
3.好奇の目で見られる
最初に書いた「女児のおむつ替え」批判にも直結しますが、「女性の職場」に敢えて入ってきたと思われます。相手が小さな子どもであることから、男性というだけで動機を疑うような視線を向けられることがあります。
女性が男児の裸を見ても批判はありませんし、「男性の職場」に女性が乗り込むとむしろ喝采されるのとは正反対です。誤解を招かないよう、園と相談しながら行動することが求められます。
敢えて保育士に転職するメリットはない?
ここまで考察して「保育園に男性保育士がいることのメリット」はありますが、「男性が敢えて保育士に転職するメリット」はそこまでないようにも思えます。

看護師ならば「男性であること」を売りにできる職場はたくさんありますが、保育士の場合はそこまでなさそうです。
「男の子だけの保育園」とかなさそうですしね。何が何でも男性保育士に預けたいという親も少ないでしょう。困りました。
男性保育士の将来を展望します~男性が特に活躍できる職場はある?

保育士の資格を男性が活かして転職する、というのは難しいのでしょうか?
現役の保育士の意見も参考にしながら考えてみました。
1.児童養護施設
親がいない子ども(祖父母にも育てられない)、あるいは親に問題があり手元に置いておけない子どものために「児童養護施設」というものがあります。
児童養護施設では、保育士や児童指導員(教員免許や社会福祉士などで任用資格を満たす人)が子どもの生活を支えています。
つまり、教員免許がなくても、保育士の資格があれば保育士として応募できます。

公務員は年齢制限がありますが、児童養護施設は中途採用大歓迎なので、これまでの経験(保育以外の民間企業でも)を評価されて転職できるかもしれません。その時、保育士の資格が役に立ちます。
2.社会福祉法人
社会福祉法人の中には知名度も高く、地域の評価も篤いところがあります。
保育園を運営しているところも多いのですが、そうした社会福祉法人も転職先としてはアリかもしれません。
保育士として就職するのではなく「保育士もできる将来の法人幹部候補」として転職活動をします。
漠然と「福祉に興味があって」という人よりも、実際に保育を学び、実習をして資格を持っている人のほうが評価されるでしょう。
「福祉畑」ではなく「保育畑」をアピールできる男性というのは珍しいかもしれません。

看護師ならば、大学や企業の研究部門などもあるのですが、保育士はかなり働けるフィールドが限られている印象で、特に稼ぎたい男性はかなり戦略を持って転職活動する必要がありそうです。
将来を展望すると、保育士のニーズ自体は増加が期待されますが、待遇の改善や男性であることのメリットは漫然としていればそれほど期待できません。
男性保育士としてよい条件を求めるならば
単に保育園で働くならば、保育園が足りない、保育士が足りないと言われている現在、それほど難しいことはありません。
保育士が足りず、しかも薄給で辞めて行く人が多いので、保育士に転職するだけなら何とかなります。

せっかく「男性」「保育士」という組み合わせなのですから、それが活かせる職場に転職してください。
男性保育士の転職先の比較
| 職場 | 男性保育士の活かし方 | 収入の目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 認可保育園(私立) | 主任・園長候補として採用されることも | 保育士全体平均 約407万円(令和6年) | 園によって待遇差が大きい |
| 公立保育園(公務員) | 安定した昇給・退職金 | 自治体の給与表による | 採用試験に年齢制限がある |
| 児童養護施設 | 父親代わりの役割、夜勤手当 | 夜勤分で保育園より高くなることも | 不規則勤務 |
| 社会福祉法人の本部・幹部候補 | 保育経験を活かした運営・管理 | 役職により大きく上がる | 現場から離れる |
| 放課後等デイサービス・学童 | 体を動かす遊びの指導 | 保育園と同程度かやや低め | 小学生対象で保育とは異なる |
男性保育士に関するよくある質問
Q. 男性でも保育士試験に合格すれば保育士になれますか?
A. なれます。保育士試験に性別の制限はなく、受験資格(大学・短大・専門学校の卒業、または高卒で2年以上の実務経験など)を満たせば受験できます。養成校に通わず試験で取得する男性も多くいます。
Q. 男性保育士は本当に増えていますか?
A. 増えています。国勢調査では平成12年の1.3%から平成22年に2.8%、令和2年には約4%へと割合が上がっています。男性保育士の採用を積極的に打ち出す園や、男性保育士同士の勉強会・連絡会を設ける自治体も出てきています。
Q. 女児の着替えやおむつ替えはどう対応すればよいですか?
A. 園の方針に従うのが基本です。女性保育士と役割を分担する園もあれば、性別に関係なく担当する園もあります。保護者の不安には園として説明する体制があるかを、転職前に確認しておくと安心です。
男性保育士は将来どうなる?年齢別の年収と転職するメリットデメリット まとめ
- 保育士の年収は記事作成時点では介護職とほぼ同じ水準だったが、令和6年には全体平均約407万円まで上昇。令和5年は男性約448万円・女性約393万円
- 似たような仕事である「幼稚園教諭」や「小学校教諭」にはるかに及ばない年収
- 保育士は女性が95%以上を占める圧倒的な「女性の職場」
- 男性保育士は増加傾向にあるが、女子大や女子短大には行けないのでなれる学校が限られる
- 保育園で働く場合共働きしないとやっていけない給与水準
- 続かずに辞めていく男性も多く女性の方が勤続年数や年齢が高い
- 「男性が女児の保育をする」ことに抵抗感を持つ保護者もいる
- 男性保育士オンリーの職場はまずない
- 保育園側の「男性保育士がいるメリット」はあるが、男性保育士の「保育園で働くメリット」は少ない
- それでも保育士として働きたいならば、将来の園長や社会福祉法人の幹部など明確な目的を持つ
- 児童養護施設などでも保育士の資格を活かせる
- 求人票や見学で、給与やキャリアアップの道筋、職場環境をよく確認する