
保育士不足もあって男性保育士の参加を望む声は高まっていますが、職員の多くが女性で占められている保育施設では、まだまだ男性保育士を受け入れる体制が十分に整っていないところもあります。
今回は、需要は増えているものの依然として課題の多い男性保育士の事情や割合、給料、年収アップの方法、転職などについて解説していきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 男性保育士の割合 | 全体の4〜6%程度(調査により異なる。国勢調査ベースでは約4%) |
| 人数の推移 | 2002年 1,000人未満 → 2012年 約1万人 → 2017年 1万6,000人以上(記事作成時点の調査) |
| 雇用形態 | 男性保育士の約9割が正社員(女性は約5割) |
| 平均年収 | 男性 約448万円、女性 約393万円(令和5年賃金構造基本統計調査)。保育士全体は約407万円(令和6年) |
| 役職手当 | 副主任保育士・専門リーダーで月4万円(処遇改善等加算) |
男性が保育士の割合はどれくらい?
保育士における男性の割合はアンケートや調査によって微妙に変わるものの、おおむね4〜6%程度と言われています。つまり大半が女性です。
保育士になる方法は女性も男性も同じですから、制度上は半分が男性保育士になっても不思議ではありません。しかし現実問題として、日本ではまだまだ「保育をするのは女性」という先入観があるので、男性保育士が増えるにはまだ時間がかかるでしょう。
男性保育士の人数、割合の推移
2002年は1,000人にも満たなかった男性保育士ですが、2012年には約10,000人、2017年には16,000人以上と2002年の約16倍になっています(記事作成時点の調査)。
この伸び率だけ見れば男性保育士の人数は大幅に増えているものの、同じ調査で女性保育士はそれを遥かに上回る約236,000人となっています。保育士全体の割合でみれば、やはり数%程度しかいないということになります。令和2年の国勢調査でも、保育士に占める男性の割合は約4%です。
ちなみに保育士と同じように女性の割合が多い看護師でも、男性は全体の約10%程度いますから、男性保育士の割合がいかに少ないかが分かります。これだけの割合しかいなければ、男性用の更衣室がなかったりトイレがなかったり、保護者が男性保育士に馴染めないというのも、ある程度は仕方がないのかもしれません。
男性保育士が働いている施設の割合
男性保育士が1人も働いていない保育施設も多いのが実情です。一方で、都市部の大規模園や株式会社運営の園、認定こども園では複数の男性保育士が在籍するところも増えており、施設による差が大きくなっています。
男性保育士を取り巻く労働環境の現実

まだまだ世間の理解がない
保護者の男性保育士に対する理解がないと、たとえばおむつ替えをしているだけでクレームがくることもあります。また、業務の一環として女の子と遊んでいても不安を訴えられたり、「担任を変えてほしい」と言われたりするケースも報告されています。
こうした保護者の不安に対しては、園として男性保育士の役割や配慮(着替えやおむつ替えの体制など)を事前に説明することが重要で、取り組みを進める自治体や園も増えています。
保育士の大半が女性なので環境が整っていない
保育施設で働く人はほとんどが女性ですから、施設の作りも女性向けになっていたり、男性は着替える場所がなかったり、休憩時に話す人がいなかったりします。
また、前述したとおり日本ではまだまだ「女性が保育をするもの」という先入観があるので、同じ保育士の中ですら男性というだけで距離を置かれるケースもあるようです。決して楽とは言えない保育士の仕事をするうえで、スムーズに働ける環境が整っていないのは、男性が保育士になるのを難しくしている要因でしょう。
女性の多い職場なので苦労が多い
女性保育士からすると「更衣室がなくても男性は気楽に着替えられる」と思われがちですが、実際には女性の多い職場で着替えをするのは想像以上に気を遣うものです。また、人間関係が固まっている職場だと、トラブルに巻き込まれてしまうこともあります。
女性保育士との距離感や話す内容に関して相当な気を遣うという男性保育士も少なくありません。愚痴を言い合える男性の同僚もいないので、人によっては孤独感や疎外感から保育士を辞めてしまうこともあるそうです。近年は自治体や保育士会が男性保育士の交流会・ネットワークを設けるケースもあるので、同じ立場の仲間を見つける場として活用するとよいでしょう。
男性保育士の雇用形態について
大半が正社員で働いている
男性保育士の雇用形態は、ほとんどが正社員となっています。ある調査では、女性保育士の正社員の割合は5割程度なのに対し、男性保育士は約9割が正社員で働いているので、雇用形態における労働環境としては男性保育士のほうが安定しているといえます。
保育士に限らず一般的な業種でもいえることですが、女性の場合は結婚や出産などライフステージによって働き方が変わるので、最初は正社員として働いていたとしても、パートや非正規社員になる人が多くなります。一方、男性はライフステージで働き方を変える人がまだ少ないため、一度正社員として働けばそのままの雇用形態で働き続ける人が多いです。
男性保育士の需要について
保育士は性別に関係なく同じ仕事をしますが、男性保育士ならではの得意分野を活かせる場面もあります。基本的な保育においての役割はどちらも同じです。一方、男性保育士がいれば防犯面に役立ちますし、重たい物を運んだり園児と思い切り遊んだり、体力的な面で頼ることができます。
保育施設に男性保育士がいることで、職員それぞれの得意なことを活かした役割分担がしやすくなります。男性保育士にとっては働きづらい環境が多いかもしれませんが、男性ならではの役割があるので、今後も需要はさらに伸びていく可能性が高いのです。
保護者によっては抵抗感がある人もいる
もともとが女性メインの職場ですから、初めて男性保育士を知った保護者からは、いわれのない偏見を持たれることもあります。特に保護者対応は女性保育士でも苦労するぐらいですから、偏見というフィルターをかけて男性保育士を見ている保護者からは、普通の保育であっても行動を細かくチェックされることもあるようです。
もちろん、きちんとした保育施設では事前に保護者に男性保育士を紹介したり、男性保育士がいるメリットを伝えたりして、働きやすい環境を整えてくれます。男性保育士がいれば防犯という点でも安心ですし、元気の良い園児の相手を思い切りしてくれるというのは保護者にとってもありがたいことです。保護者の理解を得るための環境づくりをしている施設も増えているので、今後は保護者からの抵抗による働きづらさは改善されていくでしょう。
男性保育士の給料(年収)の相場について

記事作成時点(平成30年度)の賃金構造基本統計調査では、男性保育士の平均給与は約26万円、年間賞与は約77万円で、年収は380万円ほどでした。その後の処遇改善で保育士の給与は上がっており、令和5年の同調査では男性保育士の平均年収は約448万円、女性は約393万円となっています(令和6年の保育士全体の平均は約407万円)。
| 区分 | 平均年収 | 出典 |
|---|---|---|
| 男性保育士 | 約448万円 | 令和5年賃金構造基本統計調査 |
| 女性保育士 | 約393万円 | 同上 |
| 保育士全体 | 約407万円(月給27.7万円+賞与74.2万円) | 令和6年賃金構造基本統計調査 |
| 全産業の男性平均 | 約570万円 | 令和5年賃金構造基本統計調査 |
男性保育士の年収が女性より高いのは、正社員比率が高いことと、園長・主任などの役職に就く割合が高いためです。独身であれば十分な水準ですし、共働きなら家族を養うことも難しくありませんが、同年代の男性の全産業平均と比べると120万円ほどの差があるのが現状です。
ただ給与の不満で辞める人も多い
統計上の数字は良くても、実際の仕事量とお給料のバランスで考えると十分とはいえないのが実情のようです。保育士は子どもの保育以外にも事務作業やイベントの企画、会議、行事準備などたくさんの仕事があるため、残業が多くなりがちな職業です。
残業代がもらえれば問題ありませんが、保育施設によってはサービス残業が多いこともあり、仕事量に見合ったお給料がもらえないと感じている保育士は少なくありません。とはいえ、ICT化や保育補助の配置で業務負担を減らす保育施設も増えていますし、お給料は働く場所によっても変わりますから、転職による違いが大きいといえるでしょう。
男性保育士が年収アップする方法
男性保育士は女性保育士と比べると正規職員の割合が多いので年収は高くなりますが、仕事の負担や同年代の男性の年収と比較すると高いとはいえないのが現状です。保育士の待遇改善政策はあるものの、それだけに頼っていても大幅な年収アップは見込めません。待遇を改善するには、自分から行動することも必要です。
| 方法 | 年収アップの目安 |
|---|---|
| 副主任保育士・専門リーダーになる | 月4万円(年48万円)の加算 |
| 主任保育士・園長を目指す | 主任で年収450〜550万円、園長で500〜700万円程度(園による) |
| 公立保育園の正規職員になる | 公務員給与で年収500万円超も(自治体・年齢による) |
| 運動・スポーツ系の資格を取る | 資格手当(月数千円〜)+専門性による評価 |
| 待遇の良い園に転職する | 自治体の独自手当や宿舎借り上げ支援で実質年収が50万円以上変わることも |
キャリアアップで役職を目指す
保育士の処遇改善政策の柱の一つが、2017年度に始まった「処遇改善等加算Ⅱ」です(2025年度からは加算Ⅰ〜Ⅲが一本化されましたが、役職に応じた加算の仕組みは続いています。最新の制度は勤務先や自治体で確認してください)。
これまでの保育施設の役職は園長と主任保育士の2つしかないのが一般的でしたが、この加算により副主任保育士と専門リーダー、職務分野別リーダーなど新たな役職が設けられました。中堅役職ができたことで、より多くの保育士が役職につきやすい環境が整えられたので、管理職を目指せば給与アップにつながります。
副主任保育士や専門リーダーになれば月額4万円の手当がもらえるので、年収に換算すると48万円のアップです。役職につくには経験年数の条件があり、マネジメントや職務分野などのキャリアアップ研修を修了する必要もありますが、キャリアアップをしていけば年収も着実に上がるので、ぜひチャレンジしてみましょう。
スポーツインストラクターなどの資格を取得する
環境や生活の変化により、子どもの体力低下が問題になっています。これを受けて、子どもの体を動かすプログラムを取り入れる保育施設が年々増加しています。そこで需要が高まっているのが、スポーツインストラクターや幼児体育指導者などの資格を持つ運動保育士です。
もともと保育園や幼稚園では鉄棒や跳び箱などの運動をさせるプログラムがありますが、スポーツの知識がないとうまく指導できません。最初はできなくても頑張ってできるようになる、という達成感を味わうことは教育上とても大切なことです。幼児のスポーツに力を入れている保育施設が増えていますから、こうした資格を取っておけば、資格手当や専門リーダーとしての評価による年収アップが期待できます。
公立保育園など待遇の良い求人案件を探す
記事作成時点の厚生労働省の調査(平成28年)では、私立保育園の年収が約330万円(月給約22万円・賞与約60万円)であるのに対し、公立は約560万円(月給約32万円・賞与約170万円)と、平均年齢の差(私立36歳・公立45歳)を考慮しても200万円以上の開きがありました。
公立保育園の正規職員は公務員給与が適用され、定期昇給があるので長く勤めればしっかりお給料が上がります。採用試験はありますが、男性保育士の採用に積極的な自治体もあるので、年収を重視するなら挑戦する価値があります。
私立保育園は普通の企業と同じく実力主義で、主任保育士や副主任保育士など役職がつけば高額な給与も狙えます。いずれにしても働く施設によって年収は違うので、待遇の良い求人案件を探して転職をすることで確実な年収アップにつながります。
男性保育士は将来性は?
既婚男性はもちろん独身男性であっても仕事は一生続けるものですから、将来性があるかどうかはとても重要です。ここでは男性保育士に将来性があるのかについてご説明します。
結婚や出産で退職しない男性保育士の需要は高い
保育業界で働いているのは9割以上が女性なので、結婚や出産、育児で退職したり長期間休暇を取ったりしても、臨時職員や保育補助で補うのが当たり前となっています。しかし、ただでさえ保育士が不足している状況の中では、ライフステージの変化による人手不足に柔軟に対応するのは非常に難しくなってきています。
保育士不足はいまだに解消のめどがたっていないので、保育施設側としては離職や休職のリスクを少しでも下げるために、長く働いてくれる保育士の雇用に力を入れています。また、父親の役割を担ってくれる男性保育士の必要性も徐々に認知されていますから、将来的に保育士不足が解消されたとしても、一定の需要は続くでしょう。
男性が少ない職場だからこそ希少価値がある
保育業界では男性保育士を求めているのに、働き手がいない状況が続いています。男性保育士の割合は全体の4〜6%しかいないことからも分かるように、保育業界は男性が圧倒的に少ないので、そのぶん希少価値が高いのです。必要とされる男性保育士が少ない現状を踏まえれば、今後男性保育士への待遇は良くなっていくと考えられ、将来性は十分にあるといえるでしょう。
仕事における男性保育士ならではのメリット
男性だからこそ頼られることが多い
仕事をするうえで、頼られるのは大きなやりがいになります。保育施設は女性が多い職場なので、力仕事など負担が大きい作業に対して男性は即戦力として頼られます。新人は覚えるのが仕事で、最初はミスや失敗も多く落ち込むことも多いですが、最初から即戦力となれる仕事があるのは保育施設ならではのメリットです。
年中や年長の園児からの人気が高い
年中や年長の園児はとにかく体力があるので、遊びに付き合うのにとても体力を使います。体力勝負の遊びで男性保育士が頼りにされることも多く、園児からの人気がとても高いです。子どもが主役の職場ですから、園児から人気があれば園長や上司のうけもいいですし、より働きやすい環境になります。
また、園児の人気が高いと保護者からの偏見がなくなるというメリットもあります。自分の子どもが好きな先生に対して文句を言う親はほとんどいません。「男性保育士がいてくれて良かった」と思われることのほうが多いでしょう。
男性保育士が転職先を選ぶときのチェックポイント
- 男性保育士がすでに在籍しているか(複数いれば環境が整っている可能性が高い)
- 男性用の更衣室・トイレがあるか
- おむつ替えや着替えの担当について園の方針が明文化されているか
- 保護者への男性保育士の紹介・説明を園が行っているか
- 役職への登用実績(副主任・専門リーダーに男性がいるか)
- 残業時間と残業代の支給方法、処遇改善加算の配分
保育士専門の転職エージェントに「男性保育士が活躍している園」という条件で相談すると、園の内情を踏まえて紹介してもらえます。
男性保育士に関するよくある質問
Q. 男性でも保育士資格は取れますか?
取れます。資格取得の方法は女性と同じで、養成校の卒業か保育士試験の合格です。保育士試験の実技ではピアノが苦手でも「造形」「言語」を選べます。
Q. 男性保育士は結婚して家族を養えますか?
令和5年の男性保育士の平均年収は約448万円で、役職に就けば500万円以上も狙えます。共働きが前提になるケースは多いものの、自治体の宿舎借り上げ支援や独自手当を活用すれば、生活の見通しは立てやすくなっています。
Q. 園児の着替えやおむつ替えはしてもいいのですか?
業務として行うことに問題はありませんが、園によっては保護者の希望に応じて女性保育士が担当する方針をとることがあります。入職前に園の方針を確認しておくと、トラブルを避けられます。
男性保育士の給与や転職まとめ
- 男性保育士の割合は4〜6%程度だが、人数は増加傾向
- 約9割が正社員で、平均年収は約448万円(令和5年)と女性より高いが、全産業の男性平均には届かない
- 副主任・専門リーダーの加算(月4万円)、公立への転職、資格取得で年収アップが可能
- 職場環境は園によって差が大きいので、男性保育士の在籍状況や設備を確認して転職先を選ぶ
男性保育士を取り巻く職場環境や労働条件は課題が多く、条件の良い職場を見つけるのは簡単ではないかもしれません。しかし需要は確実に高まっていますし、男性保育士の必要性もどんどん認知されてきていますので、求人の条件や職場の環境をよく確かめれば、やりがいのある職場はきっと見つかります。