
仕事を楽しいと思えたら、仕事とポジティブに向き合えたら、それは理想的なことだと思います。
しかし現実はそうではありません。仕事は楽しいことばかりではなく、何かのきっかけで「もう仕事に疲れた…」と思ってしまうこともあるでしょう。
同僚や上司との人間関係、限度を超えた業務量の多さ、追っても近づかないノルマ、やりがいの無さ、頑張っても上がらない給与…。人によって事情は様々だと思いますが、色んなことへの不満や不安が積もり積もると、精神的に疲弊してしまいます。
ですが、生きていく上ではお金を稼がなければなりません。たとえ疲れていたとしても、仕事と上手に向き合いながら生活していかなければならないんです。
そこで今回は、「仕事に疲れてしまった…」と思ったときの原因と対処法について紹介していきます。
「疲れた」が休んでも回復しないときは、気力の問題ではないかもしれません。ひとりで抱えきれないときは次の窓口が使えます。無料で、匿名でも相談できます。
- こころの健康相談統一ダイヤル:0570-064-556(電話をかけた地域の公的な相談窓口につながります)
- こころの耳(厚生労働省委託):0120-565-455 — 働く人のメンタルヘルスや過重労働の相談窓口
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」:電話・SNSの相談窓口をまとめて確認できます
仕事に疲れる主な8つの原因と理由

職場の人間関係に疲れた
下記は転職サイトが公表していた退職理由ランキング(記事作成時点)です。
転職理由の1位と3位は、人間関係へのストレスに起因する理由ということが分かる。
実は人間関係への疲れは、退職を誘発する重大な原因。

- 1位:上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった(23%)
- 2位:労働時間・環境が不満だった(14%)
- 3位:同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった(13%)
- 4位:給与が低かった(12%)
- 5位:仕事内容が面白くなかった(9%)
職場には、様々な人間関係があります。上司や部下、同僚、顧客、取引先…。必ずしも気が合う人やコミュニケーションが円滑に取れる人ばかりではないでしょう。
日本社会はビジネスライクな関係よりも、仕事関係の相手でも密接に関わることが良しとされているような傾向にあります。
「良い関係性を築かなきゃ」「気に入られるようにしなきゃ」と考えすぎてしまうと、プレッシャーも感じやすくなります。誰しも、自分と合わない人と無理に関係性を築くのは少なからずストレスを感じてしまうでしょう。
頑張っても給与が上がらず、希望が持てない…
下記は1990年からの27年間の各国の実質賃金指数の推移(記事作成時点のデータ)。
日本のみ実質賃金が下がっています。

- スウェーデン…138.4
- オーストラリア…131.8
- フランス…126.4
- イギリス(製造業)…125.3
- デンマーク…123.4
- ドイツ…116.3
- アメリカ…115.3
- 日本…89.7
日本人の年収は、1990年からの27年で、平均約7万円しか上がっていません。たったの7万円です。上の表は、1990年を100として、27年間の各国の実質賃金指数推移を示したもの。各国が15%以上伸ばす中で、日本は唯一10%も下げています。
日本企業の内部留保(利益剰余金)は年々増加し、財務省の法人企業統計では2023年度に600兆円を超えました(記事作成時点は約450兆円)。なお、2024年以降は春闘で5%台の賃上げが3年連続で実現し、賃金が上がりにくい状況には変化の兆しも見られます。人口減少による経済の衰退や将来の景気への不安、その他様々なリスクを考えてのことでしょう。
内部留保が膨れ上がる一方、その金額が人件費に回されていないという批判も、よく目にするようになりました。
「給与が上がらない」「頑張りが評価に反映されない」「将来給与が上がっていくか不安」そんな風に感じている方も少なくないでしょう。給与が上がらないとなれば、当然ですが頑張ること自体に疲弊してしまいます。
仕事で成果が出せない…

努力をしているのに、なぜか成果につながらない…。結果がでないと、自分の頑張りが否定されているようで、精神的にもツラいですよね。
成果が出せない背景には、様々な理由があると思います。例えば、提案する商材・サービスの難易度が高い場合や、顧客が少ない場合、ライバル企業が多い場合、不況など社会的要因がある場合…。
もちろんこれ以外に、自分自身に要因がある場合も考えられます。努力不足や要領の悪さ、言われたことをやっていないなど。いずれにしても、まずは要因を特定することから始めましょう。
残業が多くて、プライベートが充実しない…

残業や休日出勤が多いと、プライベートが削られていきます。結果として心を休めたり、リフレッシュしたりという時間が無くなってしまい、精神的な疲労が抜けません。
厚生労働省の毎月勤労統計調査では、一般労働者(フルタイム)の所定外労働時間は月13〜14時間程度ですが、転職サイトの利用者調査では平均20〜25時間前後、業種によっては月45時間を超えるという結果もあります。統計には表れないサービス残業や持ち帰り仕事も含めると、1日2時間以上の残業をしている人は少なくありません。
この記事を読まれている方の中には、この平均時間をはるかに超える残業をしている方も、きっと多いと思います。
残業が多くて、家に帰ったら寝るだけ。土日も出来るだけ身体を休めたいから、プライベートな時間がなかなか取れない。そんな負のスパイラルに陥っている方も少なくないでしょう。
自分の仕事に意義があると思えない…

「今の仕事が誰かの役に立っていると思えない」
「人をだましているような気持ちになってしまう」
「こんな仕事に就きたくて就職したんじゃない」
そんな風に、納得して今の仕事に取り組めていない方も多いと思います。
例えば、断られてもお客様の家に訪問し続ける、飛び込み営業。クレーム対応ばかりを受け続ける、コールセンタースタッフ。
明らかにお客様に損をさせることが分かっているのに、会社の業績を優先しなければならないような仕事。
自分の仕事に意義を感じられないと、心は充足せず、疲労がたまっていきます。もちろん、お金がもらえればそれでいいという方もいるかもしれません。
ですが、価値観は人それぞれ。自分が納得できないのであれば、それはストレスとなって蓄積していきます。
社風が合わない

会社の雰囲気・社風になじめないときも、精神的に疲れがたまります。
イケイケな社風、体育会系のノリ、下ネタやセクハラが横行、飲み会が大好き…。特に、そういったノリについていけないときは、心に疲れを感じてしまいがちです。
社風はどうしても入社前に確認しにくいものなので、ギャップに感じてしまう人は少なくありません。
そして当然それがストレスにもつながっていきます。
パワハラやセクハラが横行している…

後輩や部下への心無い発言、力で抑え込むようなものの言い方、人格を否定するようなしかり方…。
こうしたパワハラ・セクハラもストレスをため、心を疲れさせていきます。
もちろんいずれも現代において許されるものではありませんが、残念ながら体育会系の会社や、如実に縦の関係性が築かれている会社などでは、当たり前のように残っていることも…。
明確な理由は分からないけどなぜか疲れている…

何か大きな理由がなくとも、いくつもの小さな要因が重なって疲れているというケースもあります。
仕事へのプレッシャー、人間関係、長い通勤時間、上司からの叱責…。
例えば小さくてもストレスがじわじわと溜まっていけば、あるとき許容量を超えてしまう日が来ます。
仕事に疲れた原因別の適切な対処法
人間関係に疲れた人は気を遣うのをやめる

人間関係へのストレスは、人付き合いが苦手な人だけが感じるものではありません。人当たりが良い人も、周りに気に入られよう、関係性を良くしようと思うがゆえにストレスを感じやすい傾向にあります。
確かに仕事では、周りの人との関わりも大切です。しかしあくまで仕事は仕事。過度に好かれる必要も、プライベートまで交流を持つ必要も、一切ありません。
もし人間関係に疲弊してしまっているのなら、思い切って気を遣うことをやめてみましょう。飲み会やプライベートの集まりに顔を出す必要はありませんし、仕事上もビジネスライクな付き合いで構いません。
「自分に与えられた仕事をきちんとこなしていれば問題ない」くらいに堂々と割り切って仕事をすれば、心が軽くなるかもしれません。あまりに人間関係がストレスなら、苦しくなる前に辞めたっていいのですから。

将来が不安なら上司に相談や転職する

まず第一に、仕事の対価として報酬をもらうのは、正当なこと。
企業は頑張りをきちんと評価し、それに見合った給与や賞与を支給するべきです。
つまり労働者として報酬を主張するのは、当たり前のことなんです。昇給の話などは上司にしづらいと思いますが、頑張ってもなかなか給与に反映されないときは、自分から昇給や評価の話をしてみましょう。
話をする上で大切なのは、会社側に昇給基準のコンセンサス(同意)を取ることです。何をすれば、何ができるようになれば昇給するのかを明確にしておき、それに向けて努力をしていきましょう。
会社に同意を取っていれば、きちんと給与も上げてもらえるはずです。それでも上がらないようであれば、明らかに不当な可能性もありますので、きちんと評価してもらえる会社への転職も視野に入れるべきかもしれません。

仕事の成果が出せない時は打ち手を考える
成果が出ないときは、なぜ成果が出ないかという理由をきちんと見極めて、正しい打ち手を考えることが大切です。
正しい打ち手についても、自分ひとりで考え込むのではなく、上司や同僚など同じような悩みを乗り越えた人にアドバイスしてもらうことが大切です。
気合や根性、努力だけでは成果は出ません。『正しい打ち手』を考えることを、常に心掛けてください。

残業が多いなら待遇改善を要請or転職する

まずは会社側に業務量の調整を伝えてみましょう。企業には『安全配慮義務』というものがあります。これは従業員が健康・安全に働けるように労働環境を整える義務のことです。
業務過多はプライベートが充実しないだけでなく、体力的・精神的な疲弊につながり、病気を発症することなども考えられます。
従業員が体調を壊してしまえば、この安全配慮義務に違反しているともいえるでしょう。
会社に言っても改善されない場合や、伝えたことで処遇を悪くされてしまう場合などは、その会社の社員への不誠実さが見えたということ。
無理にその会社にしがみつく必要はありません。世の中に働きやすい会社はたくさんありますので、ゆとりを持てる仕事に転職するのもアリだと思います。

仕事に納得できない時は異動を頼むか転職する
もし社内異動や公募などで、自分が納得して働ける仕事に就けるのであれば、まずは手を挙げてみましょう。希望が通れば、今まで以上に高いモチベーションで仕事ができるかもしれません。
しかし、そもそも今の企業では納得して働けないという方も多いはずです。その場合は、転職サイトや転職エージェントを活用して、希望の求人を探すのが近道だと思います。
新卒で入社する場合は総合職採用が中心なので希望が通らないことも多いと思いますが、中途の場合はある程度自分の希望に沿った求人を選ぶことができます。

社風が合わないときは割り切るか転職する
社風は自分が変えようと思って変えられるものではありません。
また、自分の性格を変えることもなかなかできません。社風が合わないと感じたら、無理に合わせる必要はなく、『仕事だから』と割り切って周囲と接するのが精神衛生上も良いでしょう。
どうしても耐えられない場合などは、ストレスをためてまで無理に働き続けるよりも、自分に合った転職先を探すべきかもしれません。

パワハラやセクハラがある時は労基署に駆け込む
パワハラやセクハラは、個人で対処が出来る範疇を超えています。
かといって同僚や先輩に相談しにくこともあるでしょう解消法となると、労働組合や労働基準監督署に相談をしてみるのがベターです。

要因が分からない疲弊は我慢せず休養する
要因を絞ることができないので打開策を考えるのも難しいですが、まずは休養を取ってみましょう。疲れる要因となる仕事・職場と少し距離を置くことで、心をリフレッシュさせることが大切です。
とはいえ原因から離れるだけで、直接的に取り去るわけではありません。休養を取っても精神的な疲労感が変わらないのであれば、仕事そのものを変えるために転職活動を行うことも視野に入れてみましょう。

自分が仕事に疲れているか分からない時の判断方法
義務化されているストレスチェックを参考にする
平成27年に『労働安全衛生法』が改正になり、その年の12月には、『ストレスチェック制度』が施行されました。これは労働者50人以上の事業所に、年1回のストレスチェックを義務付けるというもの。質問に回答することで、現在のストレス状態を把握できるというテストです。
厚生労働省の「労働安全衛生調査」では、仕事や職業生活で強い不安・悩み・ストレスを感じている労働者は8割を超えています(令和5年調査 82.7%)。うつ病などを含めたメンタルヘルスについては、日本全体の問題として考えられるようになってきました。

産業医に相談してみる
労働者が50人以上の事業場では、産業医を1名以上選任することが義務付けられています。産業医とはその企業の従業員が健康的に働けるように、専門的な立場から助言や指導をする医師のこと。もし精神的な疲労を感じた場合は、産業医に相談することも可能です。
ストレスチェックも産業医が中心となって行われるため、テスト結果をもとに産業医と一緒に改善方法を考えていくこともできます。

架空ケース:休養と上司への相談で立て直したAさん(架空の例)
法人営業のAさん(33歳)は、月40時間の残業と達成困難なノルマが続き、休日も気分が晴れない状態が2か月続いていました。会社のストレスチェックで高ストレス判定を受けたことをきっかけに産業医面談を申し込み、「業務量が許容範囲を超えている」という助言をもとに上司と担当顧客数の見直しを相談。有給を5日まとめて取得して休養した後、担当を2割減らしてもらい、半年後には体調が戻ったという想定です。状況が変わらなければ転職も考える、と期限を決めていたことが気持ちの余裕につながりました。
仕事に疲れた人にオススメの職種
仕事に疲れてしまうなら、できるだけ疲れない仕事を選ぶと良いかもしれません。
もちろん仕事内容は、その企業や社風、立場などによって異なると思いますが、ここでは代表的なものを紹介します。参考にしていただければ幸いです。
プライベートの時間が取りやすい『事務・アシスタント』

事務やアシスタントの仕事は、基本的に残業がほとんどありません。あっても月に数時間程度なので、ワークライフバランスを重視しやすい仕事です。
プライベートが充実しないことから仕事への疲弊を感じている方にとっては、時間的な余裕のある仕事を選ぶのがオススメです。
残業が無ければ毎日終業後に買い物をしたり、友達と食事に行ったりということもできます。平日に疲労がたまらなければ、土日もプライベートを楽しんでリフレッシュできます!
また事務職は基本的に仕事の範囲が決められているので、指示されたことをちゃんとこなしていれば問題ありません。目標達成や難しいミッションへのプレッシャーもないので、気持ちも楽になるはずです。
営業目標のない『バックオフィス系職種』

営業をはじめ、売上を生み出す職種にはどうしても目標が付きまといます。目標を追いかけ続けることへの精神的疲労は避けられません。
もちろんそれが好きな人であれば問題ありませんが、プレッシャーを感じて心への負担が大きくなる人も多いのが実情です。
このプレッシャーから離れるために、業績目標のない職種でキャリアを描いていくという選択肢もあります。例えば経理や人事、総務、労務などのバックオフィス系の職種は、どんな業界・業種でも必要な職種です。
当然ながらいずれも楽な仕事というワケではありませんし、目標が全く無いということもありません。しかし営業目標を追うことに比べると、プレッシャーは遥かに低くなります。
やりがいを感じられる『NPO等団体職員』

自分の仕事が誰かの役に立っていると思えない、社会的意義を感じられない、という方には、NPOをはじめとした団体職員などの仕事がオススメです。
NPOは非営利団体で、社会活動を目的としています。現在の仕事に意義を感じず、続けていくことに疲弊を感じる方にとっては、社会貢献ができる仕事という選択肢もアリだと思います。
当然ながら楽な仕事ではありませんが、せっかく仕事をするなら、やりがいや貢献性を感じられたほうが納得して仕事に取り組めるのではないでしょうか。
人とのコミュニケーションのない『製造スタッフ』や『ドライバー』

社内の人や顧客、取引先とのコミュニケーションに疲れたなら、製造スタッフやドライバーがオススメです。
たとえば製造スタッフなら、業務時間のほとんどを目の前の製造機器や組み立て工程に向き合っています。もちろん業務の合間に上司や同僚と会話をすることはあるかもしれませんが、それもあくまで最小限。余計な気遣いも減ります。
ドライバーも同じです。短距離・長距離のドライバーであれば、業務のほとんどは運転のみ。またルート配送なども、決められたルートを回って商品を配送していくだけなので、面倒なコミュニケーションも少ないでしょう。
仕事に疲れたときのよくある質問
Q. 「疲れた」と「うつ」の違いはどう判断すればいいですか?
休養すれば回復するのが一般的な疲労ですが、休んでも気分が晴れない、眠れない、食欲がないといった状態が2週間以上続く場合は、医療機関で相談することをおすすめします。自己判断で診断名を当てはめるのではなく、専門家に状態を確認してもらいましょう。
Q. 休職はどうやって申請しますか?
医師の診断書をもとに会社の人事に申し出ます。休職制度の有無や期間は就業規則で決まっており、休職中は健康保険の傷病手当金(給与の約3分の2、最長1年6か月)を受け取れる場合があります。
Q. 疲れているときに転職活動をしても大丈夫ですか?
心身が消耗した状態での転職活動は判断を誤りやすいため、まずは休養を優先しましょう。ただし、転職エージェントに登録して情報収集だけしておくことは、「いつでも動ける」という安心感につながります。
仕事に疲れた時の原因や対処法まとめ
仕事に疲れてしまうことは、誰しもあります。そんなときに一番大切なのは、『無理をしない』こと。
無理して仕事をしても、集中できず、成果は残せず、ストレスはたまり、何もメリットはありません。
まずは無理しないことを第一に考え、その上で今回紹介したような解消法を試してみてください。
中には上司や会社側に対して言いにくいこともあると思います。ですが、最も大切なのはあなた自身の身体や心の健康。ときには勇気を出して、会社側に要望を伝えることも大切です。
もし要望しても変わらないときや、どうしても要望を伝えられないときは、転職を検討してみましょう。世の中にたくさんある会社の中には、あなたが過度に疲れを感じることなく働ける場所が、きっとあるはずです。
次のような状態が2週間以上続いているときは、受診を検討してください。
- 眠れない、あるいは眠っても疲れが取れない
- 食欲がない、体重が落ちた
- 朝、起き上がれない
- 理由もなく涙が出る
- 休日になっても気分が回復しない
相談先は心療内科や精神科のほか、会社に産業医がいれば産業医、地域の保健所や精神保健福祉センターでも相談できます。自己判断で「気の持ちよう」と片付けないことが大切です。