現在(2017年3月現在)テレビ朝日系で放送されている連続ドラマ「就活家族-きっとうまくいく-」。毎回就職活動に奮闘する家族の姿が丁寧に描かれていて、就職活動経験者の目から見ても大変リアルです。
そんな「就活家族-きっとうまくいく―」の第一話では縁故採用者とその家族に振り回される主人公の姿が描かれていましたが、縁故採用は古くから存在する日本の採用方式です。
「コネ」と呼ばれることも多く、一般的にはあまりいいイメージのない縁故採用ですが、実際に採用活動を行う人事部にはどのように思われているのでしょうか。日本の縁故採用事情を説明するとともにメリット、デメリットを紹介します。

縁故採用とはいったいどのようなものか?

縁故採用とは企業が従業員を募集する際に、求職者本人にその企業との間に何らかの縁故があることを採用の条件とすることを言います。
縁故の範囲はあいまいであり、企業の重役や取引先企業の家族や親戚のみを指す場合もあれば、一般社員の友達や知り合い程度の関係であっても縁故採用枠とみなされる場合があります。英語で「つながり」を意味する「connection」からとって「コネ採用」と呼ばれることも多いです。

変わりつつある縁故採用

かつては縁故採用といえば、企業の採用基準に満たない重役の子息や令嬢を特別に合格にする理不尽なイメージがありましたが、これは社員のモチベーションを下げてしまったり、会社の不利益を生み出してしまったりするという理由で近年では減少傾向にあります。
しかしそうであるからと言って決してコネ採用がなくなったわけではありません。近年では縁故者の紹介状があることを前提として、就職試験を課す企業が増えてきています。この方式を採用することによって、殺到する応募者を絞り込めるのです。

縁故採用のメリット

マイナスイメージのある縁故採用ですが、人事部の立場から見ると決して悪いことばかりではありません。意外と多い縁故採用のメリットを紹介します。

身元がしっかりとしている求職者を雇用できる

社内の重役やOBであれ、取引先企業であれ、紹介先がしっかりしていれば求職者の身元が明確であるため、安心して雇用できます。求職者の性格や特徴といった情報が入ってくることも多いので、履歴書と数分の面接で人物の判断しなければならない一般の受験者よりも信頼して選ぶことができるでしょう。

入社後も信頼関係を築きやすい

人事部は入社前に縁故採用者の情報を知っていることから入社後も会話をしやすく、信頼関係を築きやすいというメリットがあります。信頼関係を築くことによって、会社への忠誠心が縁故採用者の心の中に芽生え、離職を防ぐことができるでしょう。

採用コストを抑えられる

人事部にとって採用活動は時間もコストも大幅にかかる憂鬱なもの。しかし縁故採用に限っておくことで、選考がスムーズになり時間やコストを削減できます。特に大企業であればあるほど応募者は殺到する傾向にあるため、縁故採用を積極的に採用する大企業の人事部が増えてきています。

縁故採用のデメリット

縁故採用にはメリットが意外と多いことがわかりましたが、それでもやはりデメリットも存在します。一体どのようなことにあるのでしょうか。

著しく能力が低い者も雇わなければならない

採用基準よりも著しく低い能力を持つ求職者も、重役や取引先からの圧力で雇わなければならず苦労する人事部は少なくはありません。また能力だけではなく遅刻の常習であったり、怠け癖があったりするなど社会常識が見についていない人もいて、教育に苦労することがあるでしょう。

一般社員から目の敵にされがち

妬みとやっかみから「コネ入社」と陰口をたたかれることは少なくはありません。その陰口を払しょくするためには人の何倍も努力して、結果を出さなければならずプレッシャーで入社後に苦労する人もいます。
人事部も「能力ではなくコネを優先する汚い部署」として白い目で見られることがあります。

知りたい!人事部が漏らすリアルな縁故採用事情

実際に人事部で勤務している人たちは縁故採用をどのようにとらえているのでしょうか。リアルな声を紹介します。

「入社後に縁故採用者の待遇が悪いと、紹介してくれたOBから怒りの連絡がきて困ってしまった。」

「縁故採用者はとてもわがままで、嫌なことがあると紹介してくれた父親に言いつけると脅しのように言ってくる。おかげで強くしかることができず、他の社員からは差別と思われている。」

「縁故採用者に気を遣って仕事をしなければならず、業務が滞りやすいという苦情が来た。」

「他に優秀な人材がいても、縁故採用者が優先されて、やむなく落としてしまうことがある。一所懸命受けているのに申し訳ないと良心が痛むことがある。」

大企業の縁故採用事情とは?どんな企業が行っているの?

転職市場において縁故採用はここ数年で増加傾向にあります。2015年にマイナビ転職が行った中途採用状況調査によると転職者の61.2%が縁故採用を決めており、求人サイト経由の採用に続いて2番目に多い採用形態であることがわかりました。
縁故採用が見直されるようになったきっかけは2012年の岩波書店の求人募集です。この際に岩波書店は「社員または著者の紹介状」を応募条件に設定し、縁故採用を堂々と打ち出しました。異を唱える人も続出しましたが、厚生労働省は違法ではないと判断。この事件をきっかけに縁故採用を堂々と打ち出す企業が増加しているのです。

縁故採用を行っている大企業の代表と言えば広告代理店の電通や博報堂。新卒でも既卒でも内定者のほとんどは縁故採用というのだから驚きですね。電通も博報堂もオーナー企業の子息や令嬢を優先して雇用し、取引先と強固な関係を作り上げることで安定した広告収入を得ています。こう考えると縁故採用は企業や人事部にとってメリットが多いと言えそうですね。

新しい縁故採用!大手ベンチャー企業ではリファラル制度が活発!

アメリカの企業の30%が採用していると言われるリファラル制度はご存知でしょうか?わかりやすく説明すると「社員の知り合いや友達が自分の勤める会社を紹介して入社を促す制度」です。日本の縁故採用よりもずっとカジュアルなイメージのあるリファラル制度ですが、アメリカに習ってこの制度を採用する日本のベンチャー企業が増加しています。
その内の一つはフリマアプリで右肩上がりの成長を遂げている「メルカリ」で、社員は紹介者を食事会に誘って、人事担当者と会食を行い、その場で採用の可否を決定します。食事会の費用はすべて会社持ちだそうなので、至れり尽くせりの採用制度ですね。
また同じベンチャー企業である「もしも」では求人情報を記載したカードを社員に渡し、求人を募っています。カードがあるため、社員は気軽に転職の勧誘がしやすいのです。見事採用された場合には、紹介した社員に最大30万円の報奨金が支払われます。これは大きな魅力ですね。
人手不足が叫ばれる中、こうしたリファラル制度はますます活発になっていくと予想されます。

転職ナビ

縁故採用は必ずしも悪いことばかりではなく、人事部からもある程度認められていることがわかりましたね。転職者のうちの多くは縁故採用で転職先を決めているということなので、頼れる人がいそうであればさりげなく聞いてみてはいかがでしょうか。求人サイトを見て応募するよりもはるかに簡単に転職先を決めることができるのかもしれません。

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