
「保育士は残業が多くてきつい」というイメージを持っている人は多いかもしれません。でも、実際の勤務時間はどうなっているのでしょうか。
保育園は、子どもを朝早くから夕方まで預かるため、保育士は早番・日勤・遅番などのシフト制で働くのが一般的です。この記事では、保育園の開所時間とシフトの仕組み、公立と私立の違い、残業や「時間どおりに帰れない」場面まで、保育士の勤務時間の実態を紹介します。


保育園の開所時間と保育時間

保育時間は「原則1日8時間」、開所は11時間以上が多い
国の基準(児童福祉施設の設備及び運営に関する基準)では、保育所での保育時間は1日8時間が原則とされています。ただし、2015年4月に始まった「子ども・子育て支援新制度」では、保護者の働き方に合わせて、次の2つの区分で保育の時間が決まります。
| 区分 | 主な対象 | 利用できる時間 |
|---|---|---|
| 保育標準時間 | フルタイムで働く保護者など | 最長11時間 |
| 保育短時間 | パートタイムで働く保護者など | 最長8時間 |
保育標準時間の子どもを受け入れるため、多くの保育園は1日11時間以上開いています。たとえば朝7時〜夕方6時を基本の開所時間とし、その前後を「延長保育」にしている園が多く見られます。
開所時間は自治体や園によって違う
開所時間や延長保育の時間は、自治体や園によってさまざまです。公立保育園の開所時間は、たとえば千葉県成田市のように、自治体のホームページで公開されていることが多いので、働きたい地域の情報を確認してみましょう。
なお、保育園は月曜日から土曜日まで開いているのが一般的で、日曜日・祝日・年末年始はお休みです。子どもがいつ登園し、いつ帰るかは家庭ごとに違うので、幼稚園や小学校のように全員が同じ時間で動くわけではありません。
保育士のシフト制の仕組み
基本は早番・日勤・遅番
朝早くから夕方まで子どもを預かるため、保育士は時間をずらしたシフトで働きます。よくあるのは、次のような3つのシフトです。
| シフト | 勤務時間の例 | 主な仕事 |
|---|---|---|
| 早番 | 7:00〜15:45 | 開園の準備、早く登園する子どもの受け入れ |
| 日勤(普通番) | 8:30〜17:15 | クラスの保育、行事の準備、記録 |
| 遅番 | 10:15〜19:00 | 夕方の保育、お迎えの対応、戸締まり |
1日の勤務時間は、休憩を除いて7時間30分〜8時間くらいが多いでしょう。法律では、労働時間は原則1日8時間・週40時間までと決まっていて、6時間を超えるときは45分以上、8時間を超えるときは1時間以上の休憩が必要です。
実際の勤務表の例
下の写真は、筆者の知人が勤めていた私立保育園の勤務表です(記事作成時点)。


この保育園では1日の労働時間を7時間45分とし、5つのシフトに分けて運営していました。
- 早番:7:00〜15:45
- 中早:7:30〜16:15
- 日勤:8:15〜17:00
- 中遅:9:15〜18:00
- 遅番:10:15〜19:00
園長などの管理職や看護師もシフトに入り、職員全員で負担を分け合っていることが分かります。シフトの数や時間は園によって違うので、応募するときは必ず確認しましょう。
保育士の1日の流れ(日勤の例)
| 時間 | 主な仕事 |
|---|---|
| 8:30 | 出勤、早番の保育士から子どもの様子を聞く |
| 9:30 | 朝の会、主な活動(外遊び、製作など) |
| 11:30 | 給食の準備と食事の援助 |
| 13:00 | 午睡(お昼寝)。その間に連絡帳や記録を書く |
| 15:00 | おやつ、自由遊び |
| 16:30 | お迎えの対応、遅番への引き継ぎ |
| 17:15 | 退勤 |
休憩は、子どもがお昼寝をしている時間に交代で取る園が多いです。ただ、その時間に連絡帳や記録を書くこともあり、休憩がしっかり取れているかは園によって差が出やすいポイントです。
正職員を支えるパート・非常勤の保育士

公立保育園でも私立保育園でも、正職員(正社員)だけでなく、パートや非常勤の保育士がたくさん働いています。正職員だけで朝から夕方までのすべての時間帯を回すのは難しく、早番や遅番が続くと負担が大きくなってしまうからです。
- 日中のパート:子育て中や、子どもが学校に通っている保育士資格を持つ人など
- 朝・夕方のパート:短い時間だけ働きたい人や、経験豊富なベテランの保育士など
こうしたパートの保育士がいることで、正職員の早番・遅番の回数を減らすことができます。公立保育園の非常勤職員は、2020年4月から多くが「会計年度任用職員」という制度で採用されています。
土曜日の出勤はどうなっている?

保育園は土曜日も開いているため、保育士は土曜日に出勤することもあります。土曜日の扱いは、公立と私立で違いが出やすい部分です。
| 公立保育園 | 私立保育園 | |
|---|---|---|
| 土曜日の出勤 | 交代で出勤し、平日に代休を取るのが一般的 | 園によって違う(月1回、隔週など) |
| 週休 | 実質的に週休2日になりやすい | 完全週休2日制でない園もある |
平日に代休を取れると、役所や銀行、病院に行きやすいというメリットもあります。私立保育園に応募するときは、土曜出勤の回数と、代休の取り方を確認しておきましょう。

保育士の残業は多い?
シフト制なので、つきあい残業は少なめ
保育士はシフトによって帰る時間がばらばらなので、「周りが帰らないから自分も残る」というつきあいの残業は起こりにくい働き方です。
行事の前や、持ち帰りの仕事に注意
一方で、運動会や発表会などの行事の前は、準備のために残業が続くこともあります。また、子どもを見ながらでは書類の作成が進まず、連絡帳や指導計画、行事の飾りづくりを持ち帰ってしまうという悩みもよく聞かれます。
どれくらい残業があるかは、園長の方針や、職員の人数、ICTの活用の度合いによって大きく変わります。応募する前に、月の平均の残業時間や、持ち帰りの仕事があるかを聞いておきましょう。
保育園と幼稚園の違い

- 保育園(保育所):こども家庭庁の所管(2023年3月までは厚生労働省)。児童福祉法にもとづく児童福祉施設
- 幼稚園:文部科学省の所管。学校教育法にもとづく教育施設
幼稚園は、担任の先生が1人でクラスを受け持ち、幼稚園教育要領にそって教育を行うのが基本です。保育園も保育所保育指針にそって保育をしますが、シフト制で複数の保育士が関わるため、比較的帰る時間を分散しやすいと言えるかもしれません。
時間どおりに帰れない場面もある

保育園は、保護者が働いている間に子どもを預かる場所です。そのため、保護者が迎えに来るまでは、保育士は帰ることができません。遅番の日に、交通機関の乱れなどで保護者のお迎えが遅れると、勤務時間を過ぎても残ることになります。
台風や大雪の日も原則として開園する
学校や幼稚園は、台風や大雪のときに休校・休園になることがあります。一方、保育園は「保護者が仕事に行く可能性がある以上、子どもを預かる」という役割があるため、原則として開園することが多いです。
ただ、近年は、警報が出たときに保護者に登園を控えるようお願いする自治体や園もあります。保育士自身が出勤できない場合に備えて、園の近くに住む職員が出勤する体制をとっている園もあるようです。
感染症がはやっても閉園しにくい
学校では、インフルエンザがはやると学級閉鎖になることがあります。保育園は学校ではないので、たとえクラスの半分が休んでいても、預ける必要のある家庭がある限り、閉園にはなりにくいのが原則です。ただし、自治体の判断で一時的に休園になることはあります。
公立と私立の保育士で違うこと
| 項目 | 公立保育園の正職員 | 私立保育園の正職員 |
|---|---|---|
| 身分 | 地方公務員 | 運営する法人の職員 |
| 勤務時間 | 自治体の条例で決まる(週38時間45分の自治体が多い) | 法人の就業規則で決まる |
| 休日 | 土曜出勤は代休で、実質週休2日になりやすい | 園によって違う |
| 給与 | 自治体の給与表にもとづき、昇給や賞与の仕組みがはっきりしている | 法人によって差が大きい |
| 異動 | 同じ自治体の中で、ほかの公立保育園へ異動がある | 同じ法人の別の園へ異動があることも |
| なり方 | 自治体の採用試験に合格する | 法人の採用選考を受ける |
公立保育園の正職員は公務員なので、身分が安定しているのが大きなメリットです。ただし、自治体の中で異動があるため、近所の園から遠くの園へ移ることもあります。私立保育園でも、複数の園を運営する法人では異動があるので、どちらの場合も確認しておきましょう。

働きやすい保育園を選ぶためのチェックポイント
勤務時間の面で働きやすい保育園かどうかは、次のポイントで見極めましょう。
- シフトの種類と、早番・遅番が月に何回くらいあるか
- 休憩を実際に取れているか、休憩中に記録を書くことが多くないか
- 月の平均の残業時間と、持ち帰りの仕事があるか
- 土曜出勤の回数と、代休の取り方
- パートや非常勤の保育士が十分にいるか
- 連絡帳や記録にICT(タブレットなど)を使っているか
国も、保育士の負担を減らすために配置の基準を見直しています。2024年度からは、4・5歳児は保育士1人あたり30人から25人、3歳児は20人から15人に改められました。職員に余裕のある園ほど、休憩や有給休暇も取りやすくなります。
働き方による勤務時間の違い
同じ保育士でも、雇用の形によって勤務時間の考え方は変わります。
| 働き方 | 勤務時間の特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 正職員(正社員) | フルタイムで、早番・遅番などのシフトに順番に入る | クラス担任として責任ある仕事をしたい人 |
| パート・非常勤 | 「9時〜15時」「朝だけ」など、時間を決めて働ける | 子育てや家庭と両立したい人 |
| 派遣 | 派遣会社と相談して、勤務時間や曜日を決められる | いろいろな園を経験したい人、短い期間で働きたい人 |
正職員でも、子どもが小さいうちは短時間勤務の制度を使える場合があります。育児・介護休業法では、3歳未満の子どもを育てる人が、1日原則6時間の短時間勤務を選べるように会社が制度を整えることになっています。
見学や面接で勤務時間を確かめる質問例
求人票だけでは分からないことは、見学や面接のときに聞いてみましょう。聞き方の例をまとめました。
- 「早番と遅番は、月に何回くらい担当することが多いですか?」
- 「休憩は、どの時間にどのくらい取れていますか?」
- 「行事の前は、どれくらい残業がありますか?」
- 「連絡帳や記録は、勤務時間内に書く時間がありますか?」
- 「土曜日の出勤は月に何回くらいで、代休はいつ取れますか?」
質問しにくいことは、保育士専門の転職サービスの担当者を通して確認してもらう方法もあります。実際に働いている保育士の様子を見学で見ておくと、職場の雰囲気もつかみやすいですよ。
架空のケースで考える:勤務時間で職場を選んだ例
ここで紹介するのは、どちらも架空の例です。
ケース1:持ち帰りの仕事に悩んでいたTさん(20代)
Tさんは、私立保育園で3年働いていました。シフトどおりに帰れる日は多かったものの、行事の飾りや指導計画を家で作ることが多く、休みの日も気が休まらなかったそうです。
転職では、記録にタブレットを使い、行事の準備を勤務時間内にする時間を決めている園を選びました。今は、持ち帰りの仕事がほとんどなくなったとのことです。
ケース2:子育てと両立するために公立の非常勤を選んだUさん(30代)
Uさんは、出産を機に正職員を辞めましたが、子どもが保育園に入ったのをきっかけに復帰を考えました。お迎えの時間に間に合うように、公立保育園の非常勤(9時〜15時)の仕事を選びました。
勤務時間がはっきり決まっているので、家事や子育ての予定も立てやすくなったそうです。子どもが大きくなったら、正職員の採用試験を受けることも考えています。
保育士の勤務時間に関するよくある質問
Q.シフト外で働くことはよくありますか?
多くの園では、シフトはきちんと守られています。早朝や夕方はパートの保育士も入れて、正職員の負担を減らす工夫をしている園がほとんどです。ただし、遅番の日に保護者のお迎えが遅れた場合など、園の性質上どうしても時間を過ぎることはあります。
Q.早番や遅番だけで働くことはできますか?
パートや非常勤なら、朝だけ・夕方だけといった働き方の求人もあります。正職員の場合は、ほかの職員とのバランスで、いろいろなシフトに入るのが一般的です。
まとめ:保育士の勤務時間はシフト制が基本
- 保育所の保育時間は原則1日8時間。保育標準時間の子どもに合わせ、1日11時間以上開いている園が多い
- 保育士は早番・日勤・遅番などのシフト制で、1日の勤務は7時間30分〜8時間程度が多い
- パートや非常勤の保育士が、正職員の負担を減らしている
- 公立保育園は土曜出勤を代休で取り、実質週休2日になりやすい
- 遅番は保護者のお迎えが来るまで帰れないなど、保育園ならではの事情もある
- 残業の多さは園長の方針や職員の人数で変わるので、応募前に確認する
保育士の働きやすさは、園によって大きく違います。シフトや残業、休日の取り方を確かめて、長く働ける職場を選んでくださいね。