
アジアの金融都市として知られる香港。「海外で働いてみたい」と考えたとき、候補に挙がる人も多いのではないでしょうか。
日本から飛行機で4〜5時間ほどと近く、日系企業も数多く進出しています。とはいえ、ビザの取り方や給与・税金の仕組みは日本とかなり違うので、事前にしっかり知っておきたいところです。
香港で働く日本人はどれくらいいる?

在香港日本国総領事館の資料によると、香港に住む日本人(在留邦人)は23,228人(2025年10月1日時点)です。進出している日系企業は1,550社(2025年)にのぼります。
| 項目 | 数 | 時点 |
|---|---|---|
| 香港に住む日本人 | 23,228人 | 2025年10月1日 |
| 香港に進出している日系企業 | 1,550社 | 2025年 |
日系企業が多いということは、日本語や日本の商習慣を理解している人材が求められる場面も多いということ。駐在員として赴任する人だけでなく、現地の会社に直接採用される「現地採用」で働く日本人もいます。
香港で働くために知っておきたい基本情報
就労ビザは「内定」があってこそ取れる

日本人が香港で働く場合、多くは香港入境事務処(イミグレーション)の「一般就労政策(GEP)」にもとづく就労ビザを取得します。主なポイントは次のとおりです。
- 香港の雇用主からの内定(雇用契約)が必要:ビザは本人ではなく、雇う会社がスポンサーとなって申請する
- その仕事に必要な学歴や専門性があるかが審査される
- 地元の人材では代わりにくい仕事かも見られる
- 許可された滞在期間が終わる前に、延長の申請ができる
- 現在はオンラインでの申請も可能
つまり、まずは香港で働ける会社を見つけ、内定をもらうことがスタートライン。ビザの申請は会社が手続きを進めてくれるケースが一般的なので、費用の負担も含めて、内定の段階で確認しておきましょう。
現地採用と駐在員の違い
香港で働く日本人には、大きく分けて「現地採用」と「駐在員」の2つの働き方があります。
| 比較ポイント | 現地採用 | 駐在員 |
|---|---|---|
| 雇用元 | 香港の会社(日系の現地法人を含む) | 日本の本社 |
| 給与・待遇 | 現地の基準で決まる。住宅手当がないことも | 日本の給与に海外手当や住宅補助が加わることが多い |
| 働く期間 | 自分で決められる | 会社の辞令で決まり、数年で帰任することが多い |
| なりやすさ | 香港の求人に応募すれば挑戦できる | まず日本の会社に入り、選ばれる必要がある |
待遇面では駐在員が有利なことが多い一方、「すぐに香港で働きたい」「長く住み続けたい」なら現地採用が現実的な選択肢になるでしょう。
給与の特徴「ダブルペイ」とは

香港の会社には、旧正月の時期などに1か月分の給与を上乗せして支払う「ダブルペイ(13か月目の給与)」の習慣があります。
ただし、ダブルペイは法律で決められたものではなく、会社ごとの雇用契約しだい。業績に応じたボーナスとは別に支給されることもあれば、ダブルペイがない会社もあります。雇用契約書をしっかり確認しておきたいですね。
給与の水準は、職種や会社、語学力、経験によって大きく変わります。日本語を活かせる仕事でも、マネジメント経験や専門スキルがあるかどうかで条件はかなり違ってくるでしょう。
税金は「自分で申告して納める」仕組み

香港の給与所得税(Salaries Tax)は、日本と仕組みが大きく異なります。
| 項目 | 香港 | 日本 |
|---|---|---|
| 税率 | 累進税率(2〜17%)と標準税率のうち、低いほうで計算 | 所得税(5〜45%)+住民税(約10%) |
| 納め方 | 毎月の天引きはなく、年に一度の申告後に自分で納付するのが基本 | 会社が毎月天引き(源泉徴収) |
税率は日本より低めですが、毎月天引きされないぶん、納税の時期にまとめて支払うお金を準備しておく必要があります。ダブルペイ分を税金の支払いに回す人も多いですよ。
MPF(強制積立年金制度)とは

MPFは、香港で働く人が加入する年金の積立制度です。日本人を含む外国人も、原則として加入の対象になります。
- 雇用主と本人が、それぞれ給与の5%を積み立てる
- 月収がHK$7,100未満なら、本人の負担はなし(雇用主の負担はあり)
- 月収がHK$30,000を超える場合、本人負担は月HK$1,500が上限
香港を永久に離れる場合などには、条件を満たせば積立金を引き出せることもあります。詳しくは勤務先やMPFの運用会社に確認しておきましょう。
香港で日本人が働く主な仕事

香港で日本人が活躍している主な業種・職種を見てみましょう。
| 業種 | 主な仕事 | 求められやすいこと |
|---|---|---|
| 金融 | 営業、リサーチ、バックオフィス | 金融の実務経験、英語力 |
| 商社・物流 | 日系企業向けの営業、貿易事務 | 日本語と英語でのやりとり |
| メーカー | 営業、品質管理、技術職 | 専門知識、中国本土とのやりとりの経験 |
| ホテル・観光 | 日本人客向けの接客、営業 | 接客経験、語学力 |
| 飲食 | 日本食レストランのスタッフ、調理 | 調理技術、店舗運営の経験 |
香港での就職に役立つスキル


- 語学力:香港の公用語は中国語(主に広東語)と英語。ビジネスでは英語が広く使われ、北京語(普通話)ができると中国本土との仕事にも強くなる
- 論理的に説明する力:多国籍の職場では、結論から筋道立てて話す力が大切
- 会計・経理の知識:簿記や国際会計基準の知識は、国が変わっても活かしやすい
- 専門スキル:ITや金融、技術系の資格や実務経験
語学力や経験に自信がない場合は?
語学力や実務経験に自信がない場合でも、日本人であることを活かせる仕事はあります。日本食レストランや、日本人観光客向けのサービス、日系企業向けのカスタマーサポートなどがその例です。
ただし、就労ビザの審査では「その仕事に必要な専門性があるか」が見られます。誰でもできると判断される仕事では、ビザが下りにくいことも考えておきましょう。まずは日本で経験を積んでから挑戦する、日系企業に入って駐在をめざすといった道もありますね。
香港の職場で知っておきたいビジネス文化
香港の職場は、日本と似ているところもあれば、大きく違うところもあります。働き始めてから戸惑わないよう、よく言われる特徴を知っておきましょう。
- 役割分担がはっきりしている:ジョブディスクリプション(職務内容書)に書かれた仕事を担うのが基本
- 転職でキャリアアップする文化:より良い条件を求めて転職する人が多く、日本ほど長く同じ会社にいるとは限らない
- スピード感がある:意思決定や仕事の進め方が速く、自分から意見を伝える姿勢が求められる
- 多国籍のメンバーと働く:香港の人だけでなく、さまざまな国の人と英語でやりとりする場面も多い
【架空の事例】日系商社の現地法人に転職したBさん
イメージしやすいように、架空の事例を紹介します。
日本の専門商社で5年間、アジア向けの営業事務をしていたBさん(29歳・架空)。英語でのメール対応の経験を活かし、海外就職に強い転職エージェントを通じて香港の日系商社の現地法人に応募しました。オンライン面接で内定をもらい、会社がビザの申請を進めてくれたそうです。
入社前に、住宅手当がないことや税金を自分で納める仕組みを確認し、渡航後の生活費を計算してから決断したのがポイント。「条件を確認してから決める」ことで、入社後のギャップを小さくできた例ですね。
香港で働くメリット

共働きが当たり前で、女性も働きやすい
香港では共働きの家庭が多く、住み込みの家事労働者(ヘルパー)に家事や育児を頼みながら働く人も珍しくありません。
食事や生活環境が整っている
飲食店が多く、外食しやすいのも香港の魅力です。交通機関も発達していて、都市としての生活環境は整っています。日本食のお店やスーパーも多いので、日本の味が恋しくなっても安心でしょう。
香港で働くデメリット

家賃が非常に高い
香港で働くうえで、いちばんの悩みになりやすいのが住宅費です。土地が限られているため家賃が高く、日本の都市部よりも狭い部屋に住むことになるケースが多いでしょう。
内定が出たら、給与だけでなく住宅手当の有無も必ず確認しておきたいですね。
税金や年金の手続きを自分で把握する必要がある
先ほど紹介したように、税金は毎月天引きされません。納税の時期に慌てないよう、毎月の給与から計画的に取り分けておくことが大切です。
香港就職の準備ステップ
香港で働くまでの流れを、ステップごとにまとめました。
- 働きたい業種・職種を決める:これまでの経験を活かせる分野を中心に考える
- 英語の職務経歴書(CV)を準備する:香港の応募では英文のCVを求められることが多い
- 求人を探して応募する:転職エージェントや求人サイトを活用し、オンライン面接を受ける
- 内定・条件の確認:給与、ダブルペイ、住宅手当、ビザの費用負担を雇用契約書で確認
- 就労ビザの申請:会社を通じて申請し、許可が下りるのを待つ
- 渡航・生活の準備:住まい探し、日本での住民票や年金・保険の手続きを済ませる
香港で仕事を探す方法と注意点

香港の仕事を探す主な方法は次のとおりです。
- 海外就職に強い転職エージェントに相談する:現地の求人事情に詳しく、条件交渉も任せられる
- 日系企業に入社して駐在をめざす:時間はかかるが、待遇面では安定しやすい
- 求人サイトで直接応募する:選択肢は広いが、会社の実態は自分で見極める必要がある
インターネット上の求人だけでは、会社の内情まではわかりません。面接では、次のことをしっかり確認しましょう。
- 仕事内容(ジョブディスクリプション)
- 給与、ダブルペイ、ボーナスの有無
- 住宅手当や医療保険などの福利厚生
- 残業代の扱い
- 就労ビザの申請と費用を、会社が負担してくれるか
香港就職でよくある質問
Q. 英語が話せなくても香港で働けますか?
日本語だけで完結する仕事もありますが、選べる求人はかなり限られます。社内のメールや会議は英語という職場も多いので、少なくとも読み書きの基本はできるようにしておくと、仕事の幅がぐっと広がりますよ。
Q. 広東語は話せたほうがいいですか?
必須ではない仕事も多いですが、日常生活や現地のお客さんとのやりとりでは広東語が使われる場面が多くあります。あいさつや簡単なフレーズだけでも覚えておくと、職場や近所の人との距離が縮まりやすいでしょう。
Q. 日本の年金や健康保険はどうなりますか?
日本の住民票を抜いて香港に住む場合、国民年金は任意加入となり、国民健康保険からは外れるのが一般的です。将来の年金額や、香港での医療保険(会社の福利厚生など)をどうするか、出発前に確認しておきましょう。
まとめ:香港での就職は「内定」と「条件確認」がカギ
香港で働くためのポイントを振り返っておきましょう。
- 香港には約2.3万人の日本人が住み、日系企業は1,550社ある
- 就労ビザは、香港の会社から内定をもらって申請するのが基本
- ダブルペイは会社しだい。雇用契約書で確認する
- 税金は天引きされないので、納税資金を計画的に準備する
- 家賃が高いので、住宅手当の有無も確認する