
日本人が海外で働くというと、日本企業から派遣される駐在員を思い浮かべる人が多いかもしれません。でも、専門職の中には、現地で直接採用される仕事もあります。そのひとつが、保育士や幼稚園教諭です。
意外に思うかもしれませんが、海外には日本人の子どもが通う幼稚園や保育施設があり、日本人の保育士・幼稚園教諭を求める求人が出ています。この記事では、海外で日本人保育士が求められる理由、求人がある国、給与や働き方、採用されるために必要な条件と求人の探し方を紹介します。
なぜ日本人の保育士・幼稚園教諭が海外で求められるのか

駐在員の家族の保育ニーズ
いちばん大きな理由は、海外で暮らす日本人家族の保育ニーズです。駐在員は、数年単位で海外に住むことが多く、家族で一緒に赴任するケースも少なくありません。
小学生や中学生なら、現地の学校やインターナショナルスクールに通って語学を身につける道もあります。一方、幼児はまだ母語の日本語も育っている途中です。そのため、「日本語で保育や幼児教育を受けさせたい」と考える保護者も多く、日本人の多い都市には日本語で保育を行う幼稚園や保育施設があります。
- 日本企業の海外進出で、海外で暮らす日本人家族が増えた
- 日本語で保育・幼児教育を行う幼稚園や保育施設ができた
- 日本人の保育士・幼稚園教諭の求人が生まれた
海外で暮らす日本人は約130万人
外務省の「海外在留邦人数調査統計」によると、2025年10月1日時点で海外に住む日本人は1,298,170人です。国別の上位は次のとおりです。
| 順位 | 国 | 在留邦人数 |
|---|---|---|
| 1位 | アメリカ | 416,380人 |
| 2位 | オーストラリア | 105,566人 |
| 3位 | 中国 | 92,928人 |
| 4位 | カナダ | 75,316人 |
| 5位 | タイ | 72,113人 |
日本人が多く住んでいる国や都市ほど、日本人向けの幼稚園や保育施設も多く、求人が出やすいと考えられます。
インターナショナルプレスクールの求人もある
数は少ないものの、現地のインターナショナルプレスクールから、日本人の保育士が求められることもあります。日本の文化や日本語に関心を持つ家庭が増えていて、日本語や日本の遊びをカリキュラムに取り入れる園もあるためです。この場合は、日本人以外の子どもも多いため、英語など現地の言葉で保育をする力が求められます。
海外の保育士・幼稚園教諭の求人事情

日本人の保育士・幼稚園教諭の求人が見られる国には、たとえば次のようなところがあります。
- アメリカ、カナダ
- イギリス、オランダなどのヨーロッパの国
- オーストラリア
- 中国、台湾
- シンガポール、タイ、ベトナム、マレーシアなどの東南アジアの国
- インド
ただし、求人の数は時期によって大きく変わります。日本人向けの園は規模が小さいことが多く、1つの求人で募集するのは1〜数名ということも少なくありません。人気の国や条件のよい求人には応募が集まりやすいので、早めに情報を集めておきましょう。
海外での給与は?

海外の保育士・幼稚園教諭の給与は、国や都市、園の運営元によって大きく違います。物価の高い国では給与も高めに設定されていることが多い一方、生活費もかかります。物価の安い国なら、給与の額は日本より低くても、暮らしにゆとりが出る場合もあるでしょう。
給与を比べるときは、次の点もあわせて確認しましょう。
- 住まいの補助や、社宅があるか
- 渡航費(航空券代)を負担してもらえるか
- 現地の医療保険に加入できるか
- 税金や社会保険料がどのくらい引かれるか
勤務条件は?

日本人向けの幼稚園では、平日の日中に保育を行い、土日と現地の祝日が休みというところが多いようです。夏休みや冬休みなど、まとまった休みがある園もあります。労働時間や有給休暇のルールは国によって違うので、現地の法律で守られる部分と、園独自の条件を分けて確認しておくと安心です。
求人の状況と、採用のハードル

海外で働く日本人保育士の多くは、就労ビザなどの在留資格を得て働いています。ビザには期限があり、帰国する人も定期的に出るため、日本人向けの園では入れ替わりにともなって求人が出ます。
一方で、1つの求人の募集人数は少なく、人気の国では応募が集まりやすいのも事実です。アメリカやオーストラリアなど人気の国をめざすなら、「狭き門」になることも覚悟しておきましょう。
海外で採用されるために必要な条件

保育士資格・幼稚園教諭免許
日本の保育士資格または幼稚園教諭免許は、ほとんどの求人で必須です。国によっては、ビザを取るために、短大・大学などの学歴や、資格の証明書の提出を求められることもあります。
実務経験

海外の園は、すぐに一人前として働ける人を求めていることが多いです。また、国によっては就労ビザを取るときに、学歴や職歴が条件になることもあります。必要な経験の年数は国や求人によって違うので一概には言えませんが、日本の保育園や幼稚園で数年の経験を積んでおくと、選考でもビザの面でも有利になりやすいでしょう。
現地の言葉の力
日本人向けの園では、保育は日本語で行うのが基本です。それでも、現地のスタッフや保護者とのやりとり、地域の行事、生活の手続きなどで、現地の言葉を使う場面は必ずあります。日常会話くらいはできるようにしておくと、採用でも生活でも心強いでしょう。
あると有利な資格・スキル

必須ではありませんが、次のような資格やスキルがあると有利になることがあります。
| 資格・スキル | 役立つ場面 |
|---|---|
| 語学の資格(TOEIC、英検、現地の言語の検定など) | 語学力の目安を示せる |
| ピアノ | 歌や行事の伴奏。応募の条件にしている園もある |
| 幼児安全法支援員(日本赤十字社) | 子どものけがや急病への対応 |
| 運転免許 | 送迎や移動で車が必要な地域 |
| パソコンのスキル | 連絡帳や園だよりの作成、保護者への連絡 |
特にピアノは、日本の園以上に重視されることがあります。弾けない人は、簡単な曲から練習しておくとよいでしょう。
海外で保育の仕事をする方法
海外で保育に関わる働き方には、いくつかの方法があります。それぞれの特徴を比べてみましょう。
| 方法 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 現地採用(就労ビザ) | 日本人向けの幼稚園などに直接採用されて働く。この記事で紹介している中心的な方法 | ビザの条件を満たす必要がある。契約期間が決まっていることが多い |
| 日本の運営会社から派遣・赴任 | 日本の会社が運営する海外の園に、社員として赴任する | 求人の数はかなり少ない |
| ワーキング・ホリデー | 協定を結んでいる国で、一定の期間、働きながら暮らせる | 年齢などの条件があり、働ける期間や職場に制限があることも |
| 現地の保育資格を取る | 現地の学校で学び、現地の保育施設で働く | 学費や時間がかかり、高い語学力が必要 |
まずはワーキング・ホリデーで海外の暮らしを体験してから、就労ビザでの就職をめざす人もいます。どの方法でも、ビザの条件は国ごとに違うので、最新の情報を大使館などで確認しましょう。
海外で保育士として働くメリットと注意点
| メリット | 注意点 |
|---|---|
| 日本での保育の経験をそのまま生かせる | ビザの期限があり、ずっと働き続けられるとは限らない |
| 現地の言葉や文化を、暮らしながら学べる | 家族や友人と離れて暮らすことになる |
| 海外で働いた経験が、帰国後のキャリアの強みになる | 医療や治安など、日本と生活環境が違う |
| まとまった休みに、近くの国へ旅行しやすい | 為替の変動で、日本円にしたときの収入が変わる |
海外の保育士求人の探し方
海外の日本人向け幼稚園や保育施設の求人は、次のような方法で探せます。
- 各園の公式サイトの採用情報を確認する
- 海外の求人を扱う求人サイトで探す
- 海外就職に強い転職エージェントに相談する
- 現地の日本人向けの情報誌や、日本人会のサイトを見る
面接を日本国内やオンラインで受けられる求人もあります。渡航費の負担も考えて、応募先を選びましょう。
海外で働くまでの準備スケジュール(例)
海外の園で働くまでの準備は、1年ほどかけて進めると余裕を持てます。あくまで一例として参考にしてください。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 1年前 | 行きたい国を決め、ビザの条件や生活費を調べる。語学の勉強を始める |
| 8〜6か月前 | 求人を探して応募する。履歴書や資格の証明書を準備する |
| 6〜3か月前 | 面接を受け、内定をもらう。ビザの申請を始める |
| 3〜1か月前 | 今の職場を退職する手続き、住民票や年金などの手続き、航空券や住まいの手配 |
| 渡航後 | 現地での登録や銀行口座の開設、園での研修 |
ビザの手続きは、思ったより時間がかかることがあります。内定が出たらすぐに手続きを始められるよう、必要な書類を早めにそろえておきましょう。
海外で働く前に確認しておきたいこと
- 就労ビザの種類と、取得にかかる期間・費用を、誰が負担するか
- 契約期間と、契約が終わったあとの更新の条件
- 住まいの手配(社宅の有無、家賃の補助)
- 現地の医療事情と、加入できる保険
- 治安と、通勤の方法
- 日本に帰国したあとのキャリアのイメージ
ビザや在留資格のルールは、国によって違い、変わることもあります。必ず各国の大使館などの最新の情報を確認してください。
帰国してからのキャリア
海外での勤務は、数年で区切りをつけて帰国する人も多くいます。帰国後は、次のようなキャリアが考えられます。
- 日本の保育園・幼稚園に戻り、海外での経験を生かして働く
- 英語の保育を取り入れている園や、インターナショナルスクールで働く
- 外国にルーツを持つ子どもが多い地域の園で、保護者との橋わたし役になる
日本でも、外国籍の子どもや保護者を受け入れる保育園は増えています。異なる文化の中で保育をした経験は、帰国後も強みになるはずです。
架空のケースで考える:海外で保育士として働く
ここで紹介するのは、架空の例です。
Xさん(30代)は、日本の保育園で7年働いたあと、「一度は海外で暮らしてみたい」と、東南アジアの日本人向け幼稚園に応募しました。オンラインで面接を受け、園がビザの手続きをサポートしてくれたことで、半年ほどで渡航できたそうです。
現地では、保育は日本語で行う一方、現地のスタッフとは英語でやりとりする毎日。最初は戸惑いましたが、日本での経験がそのまま生かせたことが自信になったと話しています。
海外の保育士の仕事に関するよくある質問
Q.保育士資格がなくても働けますか?
日本人向けの幼稚園や保育施設の多くは、保育士資格か幼稚園教諭免許を条件にしています。また、就労ビザを取るときに資格や学歴を求められることもあるので、資格は取っておくのが前提と考えましょう。
Q.何歳まで応募できますか?
年齢の条件は、国のビザのルールや園の方針によって違います。ワーキング・ホリデーには年齢の上限があることが多い一方、就労ビザでの採用では、経験の豊富な人が歓迎されることもあります。
Q.家族と一緒に海外へ行けますか?
国やビザの種類によって、家族が一緒に住めるかどうかが変わります。家族と行きたい場合は、応募の前に、ビザの条件と園のサポートの内容を確認しておきましょう。
まとめ:経験を積んで、海外の保育の現場をめざそう
- 海外には日本語で保育を行う幼稚園や保育施設があり、日本人保育士の求人がある
- 海外に住む日本人は約130万人。アメリカ、オーストラリア、中国などに多い
- 給与や勤務条件は国や園によって大きく違う。住まいの補助などもあわせて比べる
- 保育士資格・幼稚園教諭免許に加えて、日本での実務経験があると有利
- ビザの条件は国ごとに違うので、最新の情報を必ず確認する
海外で保育士として働くことは、決して夢物語ではありません。まずは日本で経験を積みながら、行きたい国の情報を集めるところから始めてみてくださいね。