
旅行先で見た景色が忘れられない、気候や食べ物が自分に合っている、新しい環境で暮らしてみたい――。海外への移住を考える理由は、人によってさまざまですよね。仕事、留学、結婚、老後の暮らしなど、海外で暮らす日本人の生き方も多様になっています。
この記事では、日本人が海外でどの国に多く住んでいるのか、住みやすい国の条件、おすすめの移住先、ビザの種類、移住前にやっておきたい手続きをまとめて紹介します。
結論:まずは「どう暮らしたいか」と「ビザ」から移住先を考える
先に結論をお伝えします。
- 海外に住む日本人は約130万人。人数が多いのは米国、オーストラリア、中国、カナダ、タイなど
- 住みやすさは、ビザ・治安・食事・気候・物価・医療のバランスで考える
- 物価を抑えて暮らしたいなら東南アジア、生活の水準や自然の豊かさを重視するならカナダなどが候補になる
- ビザの条件はよく変わるため、必ず各国の大使館などで最新の情報を確認する
- いきなり移り住むのではなく、短期の滞在で生活を試してから決めるのがおすすめ
データで見る日本人の海外での暮らし
外務省の「海外在留邦人数調査統計」によると、2025年10月1日時点で海外に住む日本人は129万8,170人でした。そのうち、3か月以上滞在する「長期滞在者」が70万9,684人、その国の永住権を持つ「永住者」が58万8,486人です。
日本人が多く住む国・地域(上位10)
| 順位 | 国 | 在留邦人数 |
|---|---|---|
| 1 | 米国 | 416,380人 |
| 2 | オーストラリア | 105,566人 |
| 3 | 中国 | 92,928人 |
| 4 | カナダ | 75,316人 |
| 5 | タイ | 72,113人 |
| 6 | 英国 | 62,270人 |
| 7 | ブラジル | 49,037人 |
| 8 | ドイツ | 44,648人 |
| 9 | 韓国 | 44,471人 |
| 10 | フランス | 36,023人 |
※外務省「海外在留邦人数調査統計」(2025年10月1日現在)
日本人にとっての「住みやすさ」とは?
移住先を選ぶときに、確認しておきたいポイントを整理しました。
ビザが取得しやすいか
大前提となるのが、ビザ(査証)や在留資格の取りやすさです。観光目的の短期滞在ならビザなしで入国できる国は多いものの、働くためのビザや長く住むためのビザは、条件が厳しくなります。永住権となれば、さらにハードルは上がります。
治安の良さ
治安は、毎日の暮らしの安心に直結します。国際的な研究機関である経済平和研究所(IEP)が発表する「世界平和度指数(Global Peace Index)」の2025年版では、163の国・地域のうち、上位は次の国々でした。
| 順位 | 国 |
|---|---|
| 1 | アイスランド |
| 2 | アイルランド |
| 3 | ニュージーランド |
| 4 | オーストリア |
| 5 | スイス |
| 6 | シンガポール |
| 7 | ポルトガル |
| 8 | デンマーク |
| 9 | スロベニア |
| 10 | フィンランド |
食事
毎日の食事が口に合わないと、暮らしを続けるのは大変です。お米を主食にする文化がある国は、日本人がなじみやすいといわれます。アジアの国々には、お米や麺を日常的に食べる国が多くあります。
気候や環境
日本に近い気候や、一年を通じて穏やかな気候の国は暮らしやすいといわれます。ただし、同じ国でも地域によって気候は大きく違います。米国のように、四季のある地域もあれば、一年中暑い地域もある国もあります。カナダのように、冬の寒さは厳しくても、豊かな自然が魅力で人気を集める国もあります。
物価と生活費
物価が安ければ、日本より生活費を抑えて暮らせる可能性があります。東南アジアの国々は経済が成長を続けており、都市部では日本と変わらない便利な暮らしができる一方で、地域や暮らし方によっては生活費を抑えることもできます。ただし、為替相場や現地の物価の上昇によって、生活費は大きく変わります。
医療
病気やけがをしたときに、安心してかかれる医療機関があるかも大切です。都市部には日本語が通じる病院がある国もあります。海外では医療費が高額になる国もあるため、保険の備えが欠かせません。
日本人コミュニティや日本の情報
日本人が多く住む都市では、日本人会や日本語の情報誌、日本食のスーパーなどがあり、困ったときに相談できる相手を見つけやすくなります。初めての海外暮らしなら、日本人のコミュニティがある都市から始めると安心です。一方で、日本人とばかり過ごしていると現地の言葉が身につきにくいこともあるため、バランスを考えましょう。
日本人が住みやすいおすすめの移住先

ここまでのポイントをふまえて、日本人の移住先として人気のある国を紹介します。在留邦人数は、外務省の2025年10月1日時点の統計です。
タイ

仏教国のタイは、近代的な首都バンコクと、寺院が立ち並ぶ古都チェンマイが印象的な国です。日本でいえば、東京と京都のような関係と考えるとイメージしやすいでしょう。
在留邦人は72,113人で、日本人の多い国の第5位。日本企業も多く進出していて、日本食のお店やスーパーも充実しています。お米や麺の食文化があり、日本人の口に合う料理が多いのも魅力です。一年を通して気温は高いものの、変化が少ないため慣れやすいでしょう。
注意点:ビザなしで滞在できる日数は変更が続いています。2026年には、60日間のビザ免除の措置を廃止し、30日間の措置に戻す方針が報じられました。長期滞在者向けのビザの制度もありますが、条件は変わることがあるため、在タイ日本国大使館やタイ大使館で最新の情報を確認してください。
マレーシア
マレーシアは、比較的治安がよく、多民族の国らしく外国人を受け入れる雰囲気があるのが特徴です。在留邦人は19,690人です。
マレー系、中華系、インド系などの料理が楽しめ、主食はお米。英語が広く使われているため、英語を使って暮らしたい人にも向いています。気温は高めで雨も多いものの、一日中雨が降り続くことは多くありません。
注意点:長期滞在者向けの「MM2H(マレーシア・マイ・セカンドホーム)」という制度がありますが、2024年に条件が大きく見直されました。必要な資産や預金の条件などは、マレーシア政府の公式情報で確認しましょう。
インドネシア
インドネシアは、多くの島からなる世界有数の人口大国です。在留邦人は15,266人で、首都ジャカルタやバリ島などに日本人が暮らしています。
親日的な人が多いといわれ、日系企業も多く進出しています。物価は地域によって差が大きく、都市部では生活費が上がっていますが、暮らし方によっては日本より生活費を抑えることもできます。
注意点:長期滞在のためのビザにはいくつかの種類があり、条件も変わることがあります。退職者向けなどの制度を含め、インドネシア大使館などで最新の情報を確認してください。
フィリピン
フィリピンは、英語が公用語のひとつで、英語で生活しやすい国です。在留邦人は13,342人で、そのうち永住者が4,592人と、東南アジアの中では永住者の割合が高いのが特徴です。
退職者向けの特別居住ビザなど、長期滞在のための制度があります。生活費を比較的抑えやすいのも魅力のひとつです。
注意点:地域によって治安の状況が大きく違います。外務省の海外安全ホームページで危険情報を確認し、住む地域を慎重に選びましょう。
カナダ
カナダは、在留邦人が75,316人で、そのうち51,569人が永住者です。移民を受け入れてきた国で、アジア以外では日本人にとって住みやすい国の代表といえるでしょう。
経済や文化の水準が高く、日本と同じように四季があるのも魅力です。若い人には、働きながら滞在できるワーキングホリデーの制度もあります。
注意点:物価や家賃は高めで、近年は上がる傾向にあります。資金の計画をしっかり立てておきましょう。働くためのビザや永住権の取得は簡単ではないため、まずは短期の滞在で視察してみるのもよいでしょう。
そのほかの人気の移住先
| 国 | 特徴 |
|---|---|
| 米国 | 在留邦人が最も多い国。仕事の機会は多いが、物価や医療費は高い |
| オーストラリア | 在留邦人が2番目に多い。温暖な地域が多く、自然も豊か。ワーキングホリデーも人気 |
| ニュージーランド | 世界平和度指数で上位。穏やかな暮らしを求める人に人気 |
目的別に見るおすすめの移住先
| 重視したいこと | 候補になりやすい国の例 | 理由 |
|---|---|---|
| 生活費を抑えたい | タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア | 暮らし方によっては、日本より生活費を抑えやすい |
| 英語で暮らしたい | マレーシア、フィリピン、カナダ、オーストラリア | 英語が広く使われている |
| 日本人が多い環境がいい | 米国、オーストラリア、タイ | 日本人のコミュニティや日本食のお店が多い |
| 自然や四季を楽しみたい | カナダ、ニュージーランド | 豊かな自然があり、季節の変化を楽しめる |
| 治安を最優先したい | ニュージーランド、シンガポールなど | 世界平和度指数で上位に入っている |
どの国にも良い面と大変な面があります。同じ国でも、都市部と地方では暮らしやすさが大きく違うことも覚えておきましょう。自分が何を一番大切にしたいかを決めてから候補を絞ると、移住先を選びやすくなります。
海外移住のメリット・デメリット
| メリット | デメリット・注意点 |
|---|---|
| 新しい文化や価値観にふれ、視野が広がる | 言葉や習慣の違いで、ストレスを感じることがある |
| 国によっては生活費を抑えられる | 為替や現地の物価の変動で、生活費が上がることがある |
| 語学力や海外での経験が身につく | 家族や友人と離れて暮らすことになる |
| 気候や自然など、好きな環境で暮らせる | ビザの条件が変わると、住み続けられなくなることがある |
| 働き方の選択肢が広がる | 医療や行政の手続きが、日本ほどスムーズでないことがある |
海外移住の主なビザの種類
移住の方法は、どのビザ(在留資格)で暮らすかによって変わります。
| ビザの種類 | 主な対象 | ポイント |
|---|---|---|
| 就労ビザ | 現地の会社で働く人 | 雇ってくれる会社が必要なことが多い |
| 駐在(企業内転勤) | 日本の会社から派遣される人 | 会社が手続きを進めることが多い |
| 配偶者ビザ | 現地の人と結婚した人 | 結婚の実態の確認がある |
| 留学ビザ | 現地の学校で学ぶ人 | 働ける時間に制限があることが多い |
| ワーキングホリデー | 協定国の若い人(年齢の上限あり) | 働きながら一定期間滞在できる |
| 退職者・長期滞在向けビザ | 年金生活者や、一定の資産がある人 | 年齢、資産、収入などの条件がある |
| 永住権 | 長く住み続けたい人 | 一定の滞在期間や収入などの条件があり、取得は難しい |
移住先の国で働くには?
現地での生活には、当然ながら生活費が必要です。日本で築いた資産で暮らすのでなければ、長い生活を支えるために仕事が欠かせません。
仕事を見つける方法は、大きく分けて次の2つです。
- 日本にいるうちに仕事を決める:海外勤務の求人を扱う求人サイトや、海外の日系企業の採用情報を調べる
- 現地で仕事を探す:日本人が創業した会社や、日本向けのサービスを行う会社に問い合わせる
リモートワークで移住する人も増えている
インターネットを使って日本の仕事を続けながら、海外で暮らす人も増えています。国によっては、リモートで働く外国人向けの「デジタルノマドビザ」などの制度を設けているところもあります。ただし、観光目的のビザで現地に滞在しながら働くことは認められない場合があるため、働き方に合ったビザを確認することが大切です。
移住前にやっておきたい手続き
| 手続き | 内容 |
|---|---|
| 海外転出届 | 住んでいる市区町村に、海外への転出を届け出る。翌年1月1日に日本に住所がなければ、その年度の住民税はかからない |
| 年金 | 海外に住む間は国民年金の加入義務がなくなるが、任意で加入を続けることもできる |
| 健康保険 | 海外転出届を出すと国民健康保険を抜ける。現地の保険や海外旅行保険などで備える |
| 在留届 | 外国に3か月以上滞在する人は、現地の日本大使館・総領事館に在留届を出す。災害や事件のときに安否の確認や連絡を受けるためにも大切 |
| 銀行・クレジットカード | 海外に住む人の扱いを確認し、必要な口座やカードを準備する |
| 運転免許 | 国際運転免許証や、現地の免許への切り替えの方法を調べる |
※手続きの細かな条件は、各窓口で確認してください。
子どもと一緒に移住する場合
子どもと一緒に移住する場合は、学校選びが大きなポイントです。
- 日本人学校:日本の学習指導要領にもとづいて学べる。主に大都市にある
- インターナショナルスクール:英語などで学ぶ。学費は高めのことが多い
- 現地の学校:現地の言葉で学ぶ。言葉の壁はあるが、現地にとけこみやすい
将来日本に戻る可能性があるかどうかも考えて、学校を選びましょう。
医療と保険の備え
海外転出届を出すと、日本の国民健康保険は使えなくなります。現地の公的な医療保険に入れる国もあれば、民間の保険で備える必要がある国もあります。長期の滞在に対応した海外旅行保険や、現地の医療保険を比べて、病気やけがに備えておきましょう。
移住までのスケジュールの例
| 時期の目安 | やること |
|---|---|
| 1年〜半年前 | 移住先の候補を絞り、短期の滞在で生活を試す。ビザの条件と必要な書類を調べる |
| 半年〜3か月前 | 仕事や住まいを探す。ビザの申請を始める。資金の計画を立てる |
| 3か月〜1か月前 | 引っ越しの準備、荷物の整理。保険や銀行の手続きを進める |
| 出発の直前 | 海外転出届、年金や税金の手続き。たびレジや在留届の準備 |
| 到着後 | 在留届の提出、現地での住民登録や銀行口座の開設など |
※ビザの種類や国によって、必要な期間は大きく変わります。
生活費を見積もるときの項目
- 住まい:家賃、敷金にあたる費用、家具の購入やレンタル
- 食費:自炊か外食か。日本の食材は高くなりやすい
- 光熱費・通信費:暑い国ではエアコンの電気代がかさむことも
- 医療・保険:民間の保険料、病院にかかったときの費用
- 交通費:車を持つか、公共交通やタクシーを使うか
- ビザの費用:申請や更新の手数料、代行業者の費用
- 一時帰国の費用:日本に帰るための航空券
日本に帰国するときの手続き
移住したあとに日本へ戻ることになった場合は、住民登録(転入届)、国民健康保険や国民年金の手続き、運転免許の確認などが必要になります。現地の住まいや銀行口座の解約、税金の手続きも忘れずに行いましょう。
海外移住で失敗しないためのコツ
- まずは短期の滞在で試す:観光で行くだけでなく、1か月ほど暮らすように滞在してみる
- 雨季や暑い時期も体験する:一番良い季節だけで判断しない
- 生活費を細かく計算する:家賃、食費、保険、子どもの教育費などを見積もる
- 日本に戻る場合も考えておく:仕事や住まい、年金など、帰国したときのことも想定する
- 現地の言葉を少しでも学ぶ:あいさつや買い物の言葉だけでも、暮らしやすさが変わる。現地の人との距離も縮まる
- 相談できる人を見つけておく:現地に住む知人や、日本人会などとのつながりをつくっておく
架空のケース:お試し滞在で移住先を決めたXさん
※以下は架空の例です。
40代のXさん(架空)は、リモートで働ける仕事を生かして東南アジアへの移住を考えていました。いきなり移住するのではなく、まずはタイとマレーシアにそれぞれ1か月ずつ滞在。家賃や食費を記録し、病院やスーパーの場所も確かめました。
英語で暮らしやすく、子どもの学校の選択肢も多かったマレーシアを選び、ビザの条件を大使館で確認してから移住の準備を進めています。
海外移住に向いている人
- 新しい文化や習慣を楽しめる人
- 予定どおりにいかないことがあっても、柔軟に対応できる人
- 自分で情報を集め、手続きを進められる人
- 語学の勉強をこつこつ続けられる人
- 日本との違いを「不便」ではなく「違い」として受け止められる人
海外移住に関するよくある質問
Q.英語が話せなくても移住できますか?
日本人が多く住む都市では、日本語が通じるお店や病院がある場合もあります。ただし、仕事や役所の手続き、トラブルのときには現地の言葉や英語が必要になる場面も多いため、少しずつでも学んでおくと安心です。
Q.老後の海外移住は年金だけで暮らせますか?
国や都市、暮らし方によって大きく変わります。物価の安い国でも、日本人向けの住まいや医療を利用すると費用がかさむことがあります。為替の変動も考えて、余裕を持った資金の計画を立てましょう。
Q.海外に住んでいても日本の年金はもらえますか?
受給の条件を満たしていれば、海外に住んでいても日本の年金を受け取れます。手続きの方法は、日本年金機構などで確認してください。国によっては、日本と年金の加入期間を通算できる「社会保障協定」を結んでいる場合もあります。現地で働く予定がある人は、協定の有無も確認しておくとよいでしょう。
Q.家族に反対されています。
家族が心配するのは、安全やお金、将来のことがわからないからです。移住先の治安や生活費、仕事の見通し、帰国する場合の計画などを具体的に説明すると、理解を得やすくなります。短期の滞在に一緒に行ってもらうのもひとつの方法です。
Q.移住先で仕事が見つからなかったら?
現地で仕事が見つからないと、働くためのビザも取れず、滞在を続けられないことがあります。できるだけ日本にいるうちに仕事を決めておくか、当面の生活費を十分に用意してから移住しましょう。日本の仕事をリモートで続けられるかどうかも、選択肢を広げる大きなポイントです。
Q.移住先の情報はどこで集めればいいですか?
外務省の「海外安全ホームページ」で治安の情報を、各国の大使館のサイトでビザの情報を確認できます。現地の日本人会や、日本国大使館・総領事館が出している生活の案内なども参考になります。インターネットの体験談は便利ですが、古い情報も多いため、公式の情報とあわせて確認しましょう。
Q.永住権は取れますか?
永住権の条件は国によって大きく違い、一定の滞在期間や収入、語学力などが求められることが多くあります。すぐに取れるものではないため、長期の計画として考えましょう。
海外移住におすすめの国のまとめ
夢の海外移住をかなえるには、ビザや仕事、お金、手続きなど、いくつかのハードルを越えなければなりません。しかし、準備をしっかりして移住すれば、自分の人生をより納得のいくものにできるはずです。