日本が直面している超高齢社会という現実は、先進国でも例をみないほどの事態です。
そこで問題になっているのが「介護」にまつわること。
介護は多くのエネルギーや時間を必要とし、場合によっては仕事自体を辞めなくてはならない可能性もあるのです。
この介護離職が、キャリアや生活の質、収入面に影響を与えるとして社会問題化しつつあります。
なぜ今、介護離職が増えているのか、そして介護離職のために貧困に陥ることを防ぐにはどうしたら良いのか考えてみたいと思います。

介護離職とは?

介護離職とは、肉親や身近な人の介護を理由として、仕事を辞めてしまうことを指します。
介護はつきっきりで1日の時間の大半を費やすことが多く、外に働きに出ること事態が難しくなってしまうのです。
日本では現在、この介護離職が年間10万人程度発生していると考えられており、今後の大きな課題となることは明白です。
いったん介護離職をしてしまうと、キャリアに空白ができたり社会とのつながりが途切れたりして、再就職が難しくなる可能性が高いのです。
また、仕事を失うことで収入が激減し、貧困という新たな問題にもつながります。

介護離職者が激増!その理由は?

介護離職者数がここ数年、増加の一途をたどっています。
総務省の平成24年版「就業構造基本調査」によると、仕事を持っている人で介護をしている人は239万9千人、そのうち女性が137万2千人、男性は102万7千人に上るのだそうです。
このうち、介護が理由で仕事を辞めた人の数は10万1100人とのこと。
平成20年頃は8万人から9万人の間で推移していたのですが、たった4年で1万人以上も介護離職者が増えてしまいました。
なぜこれほどまで急激に介護離職者が増加しているのでしょうか?
その理由のひとつは、冒頭でも述べた「超高齢社会」の深刻化です。
日本の高齢化率(全人口に占める65歳以上の割合)はなんと26.7%。
よく「高齢化社会」という言葉を耳にするかと思いますが、高齢化社会とは65歳以上の人口が7%から14%の状態を指し、14%から21%は高齢社会、
21%を超えると超高齢社会となります。つまり、日本は「高齢化社会」の2ランク上の状態にあるわけですね。
これだけ高齢者が増えれば、自然と介護が必要な人数も増えます。

また、核家族化や少子化による「面倒を見る人」の減少も理由としてあげられるでしょう。
介護を分担できれば良いのですが、そもそも身内の数が少なく、一人で介護を続けなければならない状況が続いては、仕事を辞める必要もでてきます。

介護離職者ゼロに向けての防止策は?

深刻な社会問題となりつつある介護離職ですが、2017年時点で政権を維持している安倍政権では「介護離職ゼロ」を政府の方針として掲げています。
具体的には…
・介護施設の整備と人材の育成
・在宅介護の負担軽減
といった防止策を打ち出しました。

また、厚生労働省では介護と仕事の「両立支援制度」も定めています。

介護休業制度

労働者が要介護状態にある家族1人につき、要介護状態にいたるごとに年間93日の介護休業を取得できる制度。

介護休暇制度

労働者が要介護状態の家族1人につき、介護・通院などの世話を行う場合に、年間5日まで介護休暇を取得できる制度。
また、要介護状態の家族が2人以上の場合は年間10日が限度となる。

勤務時間短縮

要介護状態の家族1人につき、介護休業と合算して年間93日の勤務時間短縮が可能。形態は単純な短時間勤務やフレックスタイム勤務、勤務時刻繰り上げなどが選択可能。

こういった国が掲げる防止策や制度は、介護離職を防ぐための防波堤になるため、ぜひ活用したいところですね。
知っていて活用するのとしないのとでは、雲泥の差がでてきます。
年間93日の休業、年間5日から10日の休暇をフル活用すれば、年間勤務日数の4割程度を介護に充てることができ、仕事を辞めずとも介護ができる可能性が見えてきます。

介護離職ゼロに向けた企業や自治体の取り組み

民間企業や自治体でも、介護離職を防ぐための取り組みが見られるようになりました。
例えば、大手住宅総合メーカーの「大和ハウス」では、期間の上限がない独自の介護休業制度を導入。
2012年から取り組みを開始しています。さらに「親孝行支援制度」として、年間4回の帰省旅費を補助する制度も導入。
遠隔地の肉親を介護するための負担を軽減しています。

また、自治体では企業と共同で在宅勤務制度の導入を検討するなど、介護離職を防ぐ対策を講じているケースもあります。
例えば、日本生命やマイクロソフト社などが北海道を対象としてテレワークを実施し、遠隔地での在宅勤務と介護の両立を目指した実験を行いました。
こうした試みは、介護離職を防ぐだけではなく、地方の過疎化防止や地方創生にも役立つとして注目されています。
特にITの発達した現在ですから、テレワークによる在宅勤務へ決して不可能ではありません。
在宅勤務やテレワークを導入している企業に転職するという働き方も、ひとつの方法なのです。

介護で利用できる給付金は?

介護のために休業した被保険者が受け取ることのできる給付があります。
これは「介護休業給付」と呼ばれているもので、1年以上の勤務実績がある労働者を対象として、1か月の賃金の67%が支払われるというもの。
(厳密には賃金日額×支給日数×67%)
この制度を利用すれば、休業によって給与が支払われない状態であっても、収入を途絶えさせることなく、貧困を回避できます。

また、平成28年には「介護離職防止支援助成金」が創設され、介護と仕事を両立できる職場環境を整備する事業主に対し、助成金の給付が行われるようになりました。
これにより、介護休業や介護給付が受けやすくなっている企業もあるため、会社へ相談してみるというのも一つの方法です。

再就職をあきらめないで!やむなく離職してしまった後の再就職は?

これまで、紹介した制度を利用できない、もしくは利用しても限界があるという場合は、やむなく離職してしまうこともあるでしょう。
では、離職してしまった場合、再就職は不可能なのでしょうか?

これは年齢やスキル、経験、市場動向などにもよりますが、あきらめない限り再就職は可能です。
前述した大和ハウスのように介護に協力的な企業も増えていますし、国全体で介護と仕事の両立をサポートする流れがあります。
また、時間的に融通の利く仕事を選択することで、社会とのつながりを維持できる可能性もあるのです。
例えば、在宅ワーカーでライティングやデザイン、営業サポート、秘書業務などを請け負うことができれば、仕事を続けることは可能です。
さらに、人手不足が深刻化する日本では、小売業や流通業でパートタイマーの募集なども盛んです。
転職サイトや転職エージェントを活用すれば、年齢不問の仕事が見つかるケースがあります。
それほど日本の人手不足は深刻で、景気が回復しつつある今、かつてのように厳しい年齢要件を撤廃する仕事も増えているのです。

こういった状況を考えると、再就職をあきらめ、貧困に陥ってしまうことは本当にもったいないこと。
介護が終了したあとの人生のためにも、仕事に対する情報収集は常に行っておくようにしましょう。

介護離職による貧困を防ぐための3か条

ここまで紹介した内容から、介護離職による貧困を防ぐためにできること3つにまとめると、以下のようになります。

1.国の制度を利用する

⇒両立支援制度による休業制度や給付金など、国が定めた制度はしっかりと利用するようにしましょう。

2.介護に協力的な企業の情報を集める

⇒万が一介護が発生しそうな場合、もしくは介護による離職が想定される場合などは、介護に協力的な企業に転職することでこれを回避できます。
国の制度に加えて企業の協力も取り付けられれば、仕事をつづけながらでも介護に従事することができるのです。

3.再就職に向けた情報収集・活動を怠らない

⇒一度社会とのつながりが途絶えてしまうと、そこでやる気をなくし、再就職への意思をなくしてしまう方がいます。
離職期間が長くなればなるほど、不利になりますからね。
しかし、これは人手不足の今、非常にもったいないこと。
優秀なパートタイマーを求める企業は数多く存在していますから、転職サイトや転職エージェントなどを通して、常に情報を集めつつ行動していきましょう。