
介護職の退職理由で多いのは、やはり重労働なのにお給料が少ないというものです。しかしそれ以外にも、介護職ならではの人手不足や腰痛、人間関係、利用者とのトラブルなどさまざまな退職理由がありますので、今回はそれらをランキング形式で紹介していきます。
あわせて、今の職場をやめたい・転職したいときの退職理由の伝え方や、円満退職のポイントも紹介しますので参考にしてください。
| 項目 | 数値(令和6年度介護労働実態調査、2025年7月公表) |
|---|---|
| 介護職員の離職率 | 12.4%(前年度13.1%) |
| 採用率 | 14.3% |
| 人材の不足感がある事業所 | 65.2% |
| 前職を辞めた理由の1位(労働者調査) | 職場の人間関係に問題があった |
介護職の離職率は全産業平均(雇用動向調査で15%前後)と比べて特別に高いわけではありませんが、「人間関係」「法人・施設の理念や運営への不満」「収入」「結婚・出産・介護などの家庭の事情」が毎年の上位を占めています。
介護職の退職理由ランキング!
| 順位 | 退職理由 | 背景 |
|---|---|---|
| 1位 | お給料が少ない | 処遇改善で上がってはいるが、看護師などとの差は残る |
| 2位 | 利用者・家族とのトラブル | 人手不足で対応が追いつかず、クレームやハラスメントが起きやすい |
| 3位 | 職場の人間関係 | 統計上は毎年トップ。忙しい現場で摩擦が起きやすい |
| 4位 | 施設の運営方針が合わない | 理想の介護と利益優先の方針のずれ |
| 5位 | 家庭との両立が難しい | シフト・夜勤・急な出勤要請 |
1位:お給料が少ない
介護職員の給与は、医療・福祉関係の他の職種と比べると少ないという結果が出ています。厚生労働省の令和6年度介護従事者処遇状況等調査(2024年9月、処遇改善加算を取得している事業所・常勤月給)では、介護職員の平均給与額は338,200円(基本給+手当+一時金の月割)で、看護職員の384,620円、介護支援専門員の375,410円とは月4〜5万円の差があります。
もちろん資格取得の難易度や医療行為ができるかなどで差が付くのは仕方がないのですが、それでも重労働かつ利用者の安全を守らなくてはいけないという責任の重さはほとんど変わりありません。それなのに、似たような立場の職種と比較して年収が低いのは、十分な退職理由になるでしょう。
なお、2013年度以降の処遇改善により介護職員の給与は大きく上がっており、保有資格別では介護福祉士350,050円、実務者研修327,260円、初任者研修324,830円、資格なし290,620円(同調査)と、資格によって月2〜6万円の差があります。「給料が低い」と感じる場合、資格取得や加算の配分が手厚い事業所への転職で改善できる余地があります。
また、職場によっては介護士としての仕事以外の雑用をさせられることもあるので、給与が少ないという不満に加え、仕事の序列に納得できず辞めたいと思う方も多いようです。
2位:利用者とのトラブルが多い
介護業界の人手不足問題はいまだに解決の目処がたっておらず、少ない人数で多くの介護を担当しているのが一般的な状況です。令和6年度の介護労働実態調査でも、65.2%の事業所が人材不足を感じています。
そのため、利用者とのトラブルが絶えず悩んでいる方も多いでしょう。介護を必要としている方や家族も状況は分かっていても待ち時間が長くていらいらしたり、人によっては何かとクレームをつけてきたりします。利用者や家族からの暴言・暴力・セクハラといった「カスタマーハラスメント」も問題になっており、国も事業所に相談体制の整備を求めています。
現場の介護士からすればいっぱいいっぱいの状況の中で仕事をしているのですから、文句を言われてしまっては仕事が嫌になるのも当たり前です。人手不足解消に関しては会社だけのせいではなく制度面の課題もありますが、その施設にいる限りは解決できないことなので、利用者とのトラブルが原因で退職し、より条件のいい施設に転職する人も少なくありません。
3位:職場の人間関係のトラブル
人手不足にも関連しますが、忙しく重労働な介護の現場では人間関係のトラブルも起きやすいです。介護労働実態調査の労働者調査では、前職を辞めた理由として「職場の人間関係に問題があった」が毎年上位に挙がっています。
ベテラン職員に仕事を押しつけられたり、医療機関であれば介護以外の仕事を看護師に上から目線で指示されたりすることもあるようです。また、同僚であっても要領が良い人はうまく仕事を押しつけられないようにしたりするので、職場の上司だけでなく同僚間でも人間関係のトラブルが起きることも珍しくありません。
仕事量に関して上司に相談しても仕事の不満としてしか受け止められないこともありますから、状況を改善するのを諦めて、より良い環境での労働のために退職を選ぶ人も多いのです。
4位:施設の運営方針
介護士の多くは、社会貢献など自分の仕事にプライドを持っています。そのため、施設の運営方針と自分の理想の介護にずれがあることで退職を決意する方も多いでしょう。介護労働実態調査でも「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があった」は退職理由の上位常連です。
もっと一人ひとりのケアを丁寧に行いたいという理想を持っていても、施設の運営方針が利益追求であれば、多くの人の介護が必要となるのでケアが十分にできません。プライドを持って仕事をされている介護士であれば、利益優先の介護を続けるのは苦痛でしかありませんし、その施設で働けないと思うのも当然です。掲げている運営方針と実際の現場が違うことを退職理由として挙げる方も多くなっています。
5位:家庭との両立が難しい
介護士の仕事は重労働であると同時に、シフトのスケジュールもかなりハードです。人手が少ない職場であれば一人欠員するだけで休日出勤を余儀なくされたり、残業をするのも当たり前という状況になってしまいます。
独身であれば多少は対応できるかもしれませんが、家族がいる場合は急なシフト変更に対応するのは難しいことも多いでしょう。そのため、主婦の方や子どもがまだ小さいという方は、介護の仕事自体に問題がなくても家庭との両立が難しいせいで退職する人が多くいます。「結婚・出産・育児」「家族の介護」は介護労働実態調査でも上位の退職理由です。
特に女性が多い現場では似たような環境の人が多いため、自分で管理をしてスケジュールに合わせなくてはいけない風潮があることから、その職場にいる限りは環境の改善は期待できないのです。
そのほかの退職理由
- 腰痛・体力の限界:移乗や入浴介助による腰痛は介護職の職業病。ノーリフトケアや福祉用具の導入状況は施設によって差がある
- 夜勤の負担:月4〜6回の夜勤で生活リズムが崩れる
- キャリアが見えない:昇進や役職の道筋が示されない
- 他に良い仕事・職場があった:条件の良い施設への転職
今の介護施設を退職したい時の理由の伝え方3選!

やめる理由は人それぞれですが、不満や不平をそのままぶつけるのは避けましょう。どんなに嫌な上司でも辛い職場でも、退職理由は相手に不快感を与えないことが大切です。うそをつく必要はありませんが、事実の中から前向きに伝えられる理由を選んで、言い方を工夫しましょう。
| 本音の理由 | 前向きな伝え方の例 |
|---|---|
| 給料が安い | 「介護福祉士の資格を活かして、より専門性を高められる環境で働きたい」 |
| 人間関係が悪い | 「別の施設形態(訪問介護・デイサービスなど)で経験の幅を広げたい」 |
| 運営方針が合わない | 「一人ひとりに向き合う個別ケアを実践できる職場で働きたい」 |
| シフトがきつい | 「家庭の事情で夜勤のない働き方に変える必要がある」 |
ライフステージの変化
一番納得が得られて、引き留めにもあいづらいのはライフステージの変化です。結婚をする、引っ越しをする、親の介護が必要になった、子どもの学業をサポートするなど、ライフステージの変化に対しては誰も文句を言えませんし、会社側としても了承するしかありません。
ただし、事実でない理由を伝えると、後で説明がつかなくなったり信頼を失ったりすることもあるので避けましょう。実際にライフステージの変化があるときは、そのまま伝えれば納得してもらいやすいはずです。
キャリアアップのために違う現場で働きたい
介護職にもいろいろな資格がありますから、その資格の取得のために転職したいという退職理由であれば好意的に受け止められるでしょう。
収入面の不満がきっかけでも、資格取得や収入アップなどキャリアアップを目指しているのであれば、それを前向きな理由として伝えることができます。介護福祉士になれば資格手当が付き、前述のとおり無資格者より月6万円近く平均給与が高くなりますから、単にお給料が低いから辞めたいというのではなく、介護福祉士を目指すために違う職場での経験をしたいと伝えれば、理解を得やすいでしょう。
中には実務者研修の受講費用を補助したり、介護福祉士の取得で手当を支給したりする会社もありますから、今の職場では叶えられないことがあると伝えても問題ないでしょう。
夢を叶えるために勉強をしたい
介護以外にやってみたい仕事や取りたい資格がある場合は、それを退職理由として伝えるのもよいでしょう。たとえばネイリストやトリマーなど、実際に目指している仕事があるなら、正直に伝えれば応援してもらえることもあります。
異業種への転職は年齢を重ねるほどに難しくなりますし、資格取得のためには早くその業界で実務経験を積むことが大事なのは誰でも知っています。常識的な考えを持っている上司であれば異業種に転職したいという人を引き止めることはしませんし、周りも理解してくれるでしょう。
今の介護施設を円満退職をする4つのポイント

待遇や人間関係の不満があるとしても、やっぱり辞めるときには円満退職が理想ですね。退職を申し出ても辞めるまでにはタイムラグがありますから、気まずい思いをしながら働くのは辛いものです。感情的になって辞めてもそれで気分がすっきりするわけではないので、自分のためにも円満退職できるポイントを押さえておきましょう。
周りが気持ち良く送り出してくれる退職理由にする
円満退職のためにもっとも重要となるのが退職理由です。退職は個人の自由ですが、どんな職場であれ一緒に働いてきた人、雇ってくれていた人たちへの思いやりも大切です。
人手不足だったり待遇が悪かったりする職場の場合、辞めるというだけで歓迎されないかもしれませんが、それでもできるだけ多くの人に気持ち良く送り出してもらえるような退職理由にしましょう。
ここで間違えやすいのが、退職理由を嘘の体調不良や病気、もしくは待遇への不満などにしてしまうことです。病気が原因の場合は会社側が診断書を求めることもありますし、嘘が明らかになれば信頼を失います。本当に体調を崩している場合は、無理をせず医師の診断を受けたうえで正直に伝えましょう。
退職希望は早めに出すこと
退職届を出してから辞める日までの期間はできるだけ短くしたい、と思っている方も多いでしょう。ですが、退職希望は少しでも早めに出すのが社会人としての常識です。特に介護職の場合は引き継ぎが重要になるので、辞める日までの日数が少ないと他のスタッフに迷惑がかかってしまうため印象が悪くなります。
法律上は、期間の定めのない雇用であれば申し出から2週間で退職できますが、職場への配慮としては最低でも1か月前に退職届を出すのが礼儀です。さらに介護職という特性を考えると、できれば3か月前に、遅くても2か月前には退職の意思を伝えるのがベストです。就業規則に「退職は○か月前までに申し出ること」と定められている場合は、その期間を目安にしましょう。
引き止めは上手に回避
介護業界は慢性的な人手不足ですし、これからの高齢化社会による需要を考えると、退職の意思を伝えても引き止めに遭う可能性は十分にあります。
自分が必要とされているというのは嬉しいことですが、だからといってそこに留まっても、退職しようとした理由が改善されるわけではありません。給与面などの不満が退職理由であれば少しはベースアップしてもらえるかもしれませんが、企業体質が変わらない限り、また同じ理由で転職したくなるでしょう。
かといって、引き止めを無下に断ると働きづらくなるだけです。そこでまずは引き止めてもらった感謝の意を伝え、そのうえで「転職しないと叶えられない夢がある」「家庭の事情なのでどうにもできない」「○月○日まではしっかり頑張ります」というように、退職の意思が揺らがないことを伝えましょう。
なお、「退職届を受け取らない」「辞めるなら損害賠償を請求する」「有給は使わせない」といった対応は法律上認められません。悪質な引き止めにあった場合は、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談できます。
引き継ぎスケジュールを考えておく
介護職員が一人いなくなるというのは、施設にとっては大きな痛手です。人員が少ない施設であれば他のスタッフの仕事量が増えますし、補充するにしても慌ただしくなるので、自分の仕事をどのように引き継ぐかスケジュールを立てておきましょう。
自分がやっている仕事内容は、大まかな部分は他のスタッフも理解しているかもしれませんが、細かい部分(担当利用者の特徴、家族との連絡事項、委員会や行事の担当など)は分からないので、事前に自分がスケジュールや引き継ぎメモを作っておけば、スタッフに余計な手間をかけることがなく、退職もより好意的に受け止めてもらえるでしょう。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 退職3か月前 | 上司に退職の意思を伝える(口頭→退職届) |
| 2か月前 | 退職日の確定、有給休暇の残日数確認、引き継ぎメモの作成開始 |
| 1か月前 | 後任への引き継ぎ、担当利用者・家族への挨拶の段取り |
| 最終出勤日 | 備品・制服の返却、離職票・源泉徴収票の受け取り方法を確認 |
仕事を辞めたいと思った時の対処法
仕事を辞めたいと思うと、そのことだけで頭がいっぱいになってしまいます。辞めるには退職理由を考えたり退職届を出すタイミングを調整したり、引き継ぎのことなどいろいろ考えなくてはいけませんが、その後のことも重要です。
辞めた後のアクションを決めておく
今の職場は辞めても仕事を続けるというのであれば、まずは介護職を続けるのか、違う業種で働くのか、辞めた後のアクションを決めておきましょう。
介護職で働く場合は、退職理由を改善できる条件で働ける職場を探すことが必須です。施設ごとにサービス内容や待遇は違いますし、理念や人間関係にも違いがあります。体力的に辛いのが退職理由であれば身体介助の少ないデイサービスや介護予防中心の職場を探せばいいですし、理念と自分の理想が違うことが理由であれば希望する介護ができる職場を見つける、というように探し方が絞られます。
次のアクションを決めずに退職をしてから転職活動をすると、効率も悪くなりますし、収入が必要な場合は生活が困窮する可能性もありますから、退職の手続きと同時に次のステップに向けての準備もしっかり整えておきましょう。
希望する職種が決まったら専門の求人サイトに登録をする
介護職を続けるなら、介護専門の転職サイト・エージェントに登録すると、施設の雰囲気や離職率、処遇改善加算の配分といった求人票に出ない情報を教えてもらえます。異業種に転職をするのであれば、その業種に特化した求人を扱っているサイトに登録をしておきましょう。
会員になることで企業から直接スカウトされる可能性もあります。介護職経験があれば、福祉用具や介護ソフトのメーカー、医療事務、保険会社など福祉施設以外の業種からのオファーもあるので、思わぬ業界からのスカウトがあるかもしれません。自分だけの転職活動では応募できる業種を自分で判断してしまうので探す範囲も限定されてしまいますが、求人サイトに登録しておけば多角的な転職活動ができ、より良い転職先を見つけられる可能性も広がります。
介護職の退職に関するよくある質問
Q. 退職の意思は誰に、どう伝えればいいですか?
直属の上司(主任やユニットリーダー、施設長)に、まず口頭でアポイントを取って伝えるのが基本です。そのうえで退職届を提出します。同僚や利用者に先に話すと、上司の耳に別ルートで入ってこじれる原因になります。
Q. 有給休暇を消化して辞められますか?
有給休暇は労働者の権利なので、退職前にまとめて取得できます。引き継ぎ期間を確保したうえで、残日数を退職日から逆算して申請しましょう。会社が時季変更権を使えるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られ、退職日以降に変更することはできません。
Q. 退職後に失業給付はもらえますか?
雇用保険に12か月以上(会社都合などの場合は6か月以上)加入していれば受給できます。自己都合退職の給付制限は原則1か月(2025年4月以降。5年間で3回以上の自己都合退職は3か月)で、離職票をハローワークに提出して手続きします。
介護士の退職理由ランキングまとめ
- 介護職の退職理由の上位は、給料、利用者とのトラブル、人間関係、運営方針、家庭との両立
- 令和6年度の離職率は12.4%で、人手不足を感じる事業所は65.2%
- 退職理由は嘘をつかず、事実の中から前向きな伝え方を選ぶ
- 退職の申し出は2〜3か月前、引き継ぎスケジュールを自分で用意する
- 辞めた後の行動(介護を続けるか、異業種か)を決めてから動く
今回は介護士の退職理由や、事を荒立てず円満退職する方法を紹介しました。退職理由はスムーズな退職、引き継ぎのためにもとても重要なものです。ネガティブな理由をそのまま伝えると悪い印象を与えてしまうこともあるので、事実を踏まえつつ前向きな伝え方を心がけましょう。どんな理由でも仕事を辞めるときには「立つ鳥跡を濁さず」が社会人としての常識です。