
「介護の仕事を続けたいけれど、今の施設の人間関係や残業がつらい」「時給が高いと聞く介護派遣って、実際どうなの?」。そんな人に向けて、派遣で働く介護士のメリット・デメリット、正社員やパートとの違い、給料の考え方、派遣会社の選び方をまとめました。
結論から言うと、介護派遣は時給の高さと働き方の自由度を優先したい人には向いていて、同じ職場で長く働きたい人や賞与・退職金を重視する人には向いていません。自分がどちらのタイプかを確かめながら読んでみてください。
- 派遣介護士のメリットとデメリット
- 正社員・パート・アルバイトとの違い、どちらが得か
- 派遣介護士の給与の考え方と、法律で決まっているルール
- 失敗しない派遣会社の選び方
介護派遣とは?どんな働き方?
介護派遣とは、派遣会社に雇われた介護士が、派遣会社と契約を結んだ介護施設で働き、給料は施設ではなく派遣会社から受け取る働き方です。
施設に派遣されても、現場では施設の職員と同じように、施設の指示のもとで介護の仕事をします。仕事の中身に大きな違いはありません。違うのは「誰に雇われているか」と「契約の期間」です。


介護業界は今も人手不足
介護の求人は今も多く、厚生労働省の職業安定業務統計では2025年6月の介護関係職種の有効求人倍率は3.87倍(職業計は1.05倍)でした。介護労働安定センターの「令和6年度介護労働実態調査」(2025年7月公表)でも、事業所の65.2%が人材の不足を感じています。
一方で、同じ調査の介護職員(訪問介護員+介護職員)の離職率は12.4%で、前年度の13.1%から下がりました。「人は足りないが、辞める人は減ってきている」のが今の介護業界です。派遣はこの人手不足を埋める役割を担っていて、施設側のニーズも強いと言えます。
介護派遣社員と正社員、パート、アルバイトとの違い
派遣介護士と、施設に直接雇われる介護士(正社員・パート・アルバイト)の違いを表にまとめました。
| 比較項目 | 派遣介護士 | 正社員 | パート・アルバイト |
|---|---|---|---|
| 仕事内容 | 介護全般(契約で決めた範囲) | 介護全般+委員会や記録、指導など | 介護全般、または補助的な業務 |
| 雇用主 | 派遣会社 | 施設を運営する法人 | 施設を運営する法人 |
| 働ける期間 | 契約期間ごと。同じ施設の同じ部署は原則3年まで | 原則として定年まで | 契約期間ごと(更新あり) |
| 勤務時間 | フルタイムか短時間かを選べる。夜勤の有無も選べる | フルタイム。夜勤や早番・遅番のシフト | 短時間が中心。フルタイムもある |
| 給与の形 | 時給制が中心。賞与・退職金は派遣会社の制度による | 月給制+賞与+処遇改善の手当 | 時給制。賞与はないか少額 |
| 社会保険 | 派遣会社で加入(要件を満たす場合) | 施設で加入 | 要件を満たせば施設で加入 |
| 面接 | 派遣先による選考面接は原則禁止(顔合わせはある) | あり | あり |
仕事内容の違い
派遣介護士、正社員、パートはいずれも介護全般を行います。派遣の場合は契約書に業務の範囲が書かれていて、それ以外の仕事(委員会活動や行事の企画など)を頼まれることは原則ありません。アルバイトや無資格者は、配膳・お茶出し・見守り・掃除など補助的な仕事が中心になることが多いです。
雇用主の違い
正社員・パート・アルバイトは施設を運営する法人に雇われますが、派遣介護士は派遣会社に雇われます。給料の支払い、社会保険、有給休暇の管理はすべて派遣会社が行います。
働ける期間の違い
正社員は原則として定年まで働けます。派遣介護士は、労働者派遣法のいわゆる「3年ルール」により、同じ施設の同じ部署で3年を超えて働くことは原則できません。ただし、派遣会社に無期雇用されている人や60歳以上の人は対象外です。3年を超えて働きたい場合は、施設に直接雇用されるか、派遣会社との無期雇用に切り替える方法があります。
勤務時間
正社員はフルタイムで、早番・日勤・遅番・夜勤のシフトに入るのが一般的です。パートやアルバイトは短時間勤務が中心。派遣介護士は、フルタイムか短時間か、夜勤を入れるかどうかを、派遣先を選ぶ段階で決められます。
派遣介護士は即戦力
施設は「即戦力になる介護士」を期待して派遣会社と契約します。そのため、派遣で働く人は経験者が多めです。ただし、未経験・無資格でも受け入れる求人もあります(後述)。

介護派遣の給料はどう決まる?時給の考え方


介護派遣だけの時給を示す公的な統計はありません。そこで、関係する公的データを並べてみます。
| データ | 数字 | 出典 |
|---|---|---|
| 派遣労働者の賃金(全職種、8時間換算の1日平均) | 16,735円(時給換算で約2,090円)。派遣料金の平均は26,257円 | 労働者派遣事業報告書(令和6年度) |
| 介護職員の平均給与額(常勤・月給、処遇改善加算あり) | 338,200円(2024年9月) | 令和6年度介護従事者処遇状況等調査 |
| 短時間労働者の時給(全産業) | 1,518円 | 令和7年賃金構造基本統計調査 |
派遣料金(施設が派遣会社に払う金額)と派遣労働者の賃金の差が、派遣会社の取り分(マージン)です。派遣会社はマージン率を公開することが義務づけられているので、登録前に各社のサイトで確認できます。
仮定の時給で計算してみると
架空の数字で比べてみましょう。派遣の時給を1,700円、1日8時間・月20日勤務とすると、月収は272,000円、年収は約326万円です。賞与がないと仮定すると、これがほぼ年収になります。
一方、同じ施設の正社員が月給26万円+賞与年2か月分(52万円)なら、年収は約364万円です。時給で見ると派遣のほうが高くても、年収では正社員が上回ることがあります。
逆に、正社員の月給が23万円で賞与が年1か月分なら年収は約299万円となり、派遣のほうが高くなります。比べるときは「時給」ではなく「年収」と「処遇改善の手当がどう支払われるか」で見てください。
同一労働同一賃金のルール
2020年4月から、派遣社員にも「同一労働同一賃金」のルールが適用されています。派遣会社は、派遣先の正社員との均等・均衡を図る方式か、労使協定で決めた水準(同じ地域・職種の一般的な賃金以上)で賃金を払う方式のどちらかを取らなければなりません。多くの派遣会社は労使協定方式で、退職金に相当する分を時給に上乗せする形などを取っています。登録のときに「退職金や賞与に相当する分は、どう支払われますか」と聞いておきましょう。
介護士が派遣を選ぶメリット
時給が高い
派遣介護士の時給は、同じ施設のパートやアルバイトより高く設定されることが多いです。施設は派遣会社に派遣料金を払っていて、そのうち一定割合が派遣介護士の賃金になるからです。資格(介護福祉士など)や夜勤の有無で時給が上がる求人もあります。
残業なしが基本で、残業すれば残業代が出る
派遣契約には勤務時間がはっきり書かれています。施設の都合で勝手に残業させることはできません。どうしても残業が必要になった場合は、タイムカードなどの記録をもとに派遣会社から残業代が支払われます。
自分の都合で休日や時間帯を選べる
派遣会社には複数の施設の求人があるので、「土日は休みたい」「夜勤はしない」「16時までに帰りたい」といった条件で派遣先を選べます。子育てや介護と両立したい人には大きなメリットです。
有給がしっかり取れる
派遣介護士にも、6か月以上継続して働き、所定労働日の8割以上出勤していれば、年次有給休暇が付与されます。雇用主は派遣会社なので、施設の忙しさや上司の顔色を気にせず申請しやすい、という声が多いです。
未経験や無資格でも働ける求人がある
派遣は経験者が多めですが、人手が足りない施設は「未経験・無資格可」の求人を出すことがあります。ただし次の点に注意してください。
- 施設で働く場合、法律上の資格要件はないが、介護に直接携わる無資格の職員は2024年4月から認知症介護基礎研修の受講が義務(採用から1年以内)
- 訪問介護は初任者研修以上の資格が必要
- 無資格の場合、仕事は見守り・配膳・レクリエーションの補助などが中心で、時給は低めになる
人間関係が合わなければ施設を変えられる
派遣先の人間関係に限界を感じたら、派遣会社の担当者に相談して、契約の更新をせずに次の施設を紹介してもらえます。直接雇用で転職を繰り返すと履歴書に残りますが、派遣なら「派遣会社での勤務」として扱われます。
施設の選考面接がない
労働者派遣法では、派遣先が派遣社員を特定するための面接や履歴書の提出を求めることは原則禁止です(紹介予定派遣を除く)。施設との「顔合わせ」はありますが、採用試験のような面接はありません。面接が苦手な人には気持ちの面で楽です。
派遣会社の福利厚生が使える
社会保険、健康診断、育児・介護休業に加え、資格取得の支援や提携施設の割引などを用意している派遣会社があります。施設によっては正社員より充実していることもあるので、派遣会社を比べるときのポイントにしてください。

介護士が派遣を選ぶデメリット
賞与や退職金が少ない・ない場合が多い
派遣介護士には、正社員のような賞与や退職金がないことが多いです。同一労働同一賃金のルールで、退職金に相当する分を時給に上乗せする派遣会社が増えましたが、支給の形は会社ごとに違います。事前に確認しておきましょう。
処遇改善の手当の扱いが分かりにくい
介護職員には、処遇改善加算による手当が支給されますが、派遣介護士の場合は派遣料金を通じて派遣会社に渡り、そこから賃金に反映される仕組みです。手当がどのくらい時給に含まれているかは、派遣会社に聞かないと分かりません。
施設内で風当たりが強い場合がある
派遣介護士を「外の人」として見る職員がいる施設もあります。派遣が残業をしないことに不満を持つ人もいるでしょう。契約どおりに働いているだけなので気にする必要はありませんが、こうした空気が合わなければ、次の更新のときに派遣先を変えるのが現実的です。
同じ職場で長く働けない
3年ルールにより、同じ施設の同じ部署で3年を超えて働くことは原則できません。「この施設が気に入ったから、ずっとここで働きたい」と思っても、派遣のままでは続けられないのです。その場合は、施設に直接雇用を申し出るか、紹介予定派遣(最長6か月の派遣のあとに直接雇用に切り替える仕組み)を使う方法があります。
契約が更新されないことがある
施設の人員が充足したり、予算が減ったりすると、契約が更新されないことがあります。次の派遣先が決まるまでの空白期間が出る可能性は、頭に入れておきましょう。
日雇い・短期の派遣は原則できない
30日以内の日雇派遣は原則禁止です。例外は60歳以上の人、昼間の学生、本業の年収が500万円以上ある人の副業、世帯年収が500万円以上で主たる生計者でない人などに限られます。「単発で少しだけ働きたい」という希望は、派遣では通りにくいと考えてください。
介護派遣で働く架空のケース3つ
ここからは架空のケースです。自分に近い状況があれば参考にしてください。
ケース1:時給を優先して派遣を選んだ(架空)
架空のAさん(25歳・男性・介護福祉士)は、毎月の生活費を確保するため、時給の高い派遣を選びました。特養で日勤中心に働き、同じフロアのパート職員より時給は高めです。ただし賞与はなく、年収で見ると正社員とそれほど変わりません。「結婚して将来を考えるようになったら、正社員に戻ることも考えている」と話しています。
ケース2:残業なしで保育園の迎えに間に合わせた(架空)
架空のBさん(28歳・女性・初任者研修)は、子どもを保育園に預けているため「残業なし・17時まで」の条件で派遣先を選びました。最初は定時に帰ることに気がひけましたが、「お先に失礼します」と言うと、ほとんどの職員は快く送り出してくれました。一部に冷たい反応をする人もいて、更新のタイミングで別の施設に移っています。
ケース3:未経験から派遣で介護を始めた(架空)
架空のCさん(45歳・男性)は、前の仕事を辞めたあと、未経験・無資格可の派遣求人からデイサービスで働き始めました。送迎の補助、配膳、レクリエーションの進行が主な仕事です。採用後に認知症介護基礎研修を受け、派遣会社の資格取得支援を使って初任者研修の受講も始めました。資格を取れば身体介護もできるようになり、時給も上がる予定です。

派遣が向いている人・正社員が向いている人
| 派遣が向いている人 | 正社員が向いている人 |
|---|---|
| 子育てや介護と両立するため、時間や曜日を固定したい | 賞与・退職金・昇給を重視して、長く安定して働きたい |
| いろいろな施設を経験して、自分に合う職場を見つけたい | リーダーや管理者を目指してキャリアを積みたい |
| 人間関係がこじれたときに、職場を変えやすいほうがいい | 同じ利用者と長く関わりたい |
| 残業をしたくない、副業や勉強の時間を確保したい | 処遇改善の手当を直接受け取りたい |
| 正社員になる前に、施設の雰囲気を確かめたい(紹介予定派遣) | 住宅ローンなど、雇用の安定が必要な事情がある |
失敗しない介護派遣会社の選び方
派遣で気持ちよく働くには、派遣会社選びがいちばん大事です。ここを間違えると、条件の悪い施設ばかり紹介されたり、福利厚生が整っていなかったりします。選ぶポイントを5つ紹介します。
1. 介護業界に特化している
介護に特化した派遣会社は、施設との付き合いが深く、職場の雰囲気や人間関係まで把握していることが多いです。担当者が介護職の経験者であることも珍しくなく、相談がしやすくなります。
2. 求人数が多く、希望の地域の施設がある
求人が多いほど、自分の条件に合う派遣先を見つけやすくなります。自宅から通える範囲に、特養、老健、グループホーム、デイサービスなど複数の種類の施設があるかを確認しましょう。
3. 資格取得の支援がある
初任者研修や実務者研修の受講費用を補助したり、資格を取ったときに時給を上げたりする派遣会社があります。資格が増えれば仕事の幅が広がり、派遣先の選択肢も増えます。
4. マージン率と賃金の決め方を公開している
派遣会社はマージン率などの情報を公開する義務があります。登録前にサイトで確認し、同一労働同一賃金の方式(労使協定方式か派遣先均等・均衡方式か)と、退職金に相当する分の支払い方も聞いておきましょう。
5. 担当者との相性がいい
派遣社員には、派遣先の紹介や顔合わせの調整、派遣中の相談に乗ってくれる担当者がつきます。連絡が早いか、希望をきちんと聞いてくれるか、契約内容をはっきり説明してくれるか。最初の面談で見極めてください。合わないと感じたら、担当者の変更や別の派遣会社への登録も考えましょう。

介護派遣で働き始めるまでの流れ
登録から初出勤までの一般的な流れです。
- 派遣会社に登録する(Webまたは来社)。資格証、職務経歴、希望条件(勤務地、時間帯、夜勤の可否、時給)を伝える
- 担当者との面談。これまでの経験や苦手なこと、避けたい施設の種類まで正直に話す
- 求人の紹介。施設の種類、仕事内容、時給、勤務時間、契約期間を確認する
- 施設との顔合わせ(職場見学)。選考ではないので、こちらから職場の雰囲気や人員体制を質問してよい
- 派遣契約の締結。就業条件明示書に書かれた業務内容、期間、時間、賃金、残業の扱いを確認する
- 初出勤。困ったことがあれば施設ではなく派遣会社の担当者に相談する


契約前に確認したいチェックリスト
- 時給に処遇改善の手当や退職金相当分が含まれているか
- 交通費の支給方法(全額か上限ありか)
- 残業・休日出勤・深夜勤務の割増率
- 契約期間と更新の目安、更新しない場合の連絡の時期
- 社会保険・有給休暇・健康診断の扱い
- 資格取得支援の内容と条件
- 派遣会社のマージン率
介護派遣に関するよくある質問
派遣から正社員になれますか?
なれます。派遣先の施設から直接雇用の打診を受けることもありますし、紹介予定派遣を使えば最長6か月の派遣期間のあとに正社員になる前提で働くことも可能です。3年ルールで派遣期間が終わるときに、施設が直接雇用を申し込むケースもあります。
夜勤だけの派遣はありますか?
あります。夜勤専従の派遣求人は、時給に夜勤手当や深夜割増(22時〜5時は25%以上)が加わるため、日勤より1回あたりの収入が高くなります。体への負担は大きいので、回数の上限を派遣会社と決めておきましょう。夜勤明けの翌日を必ず休みにするなど、生活のリズムを崩さない工夫も必要です。
派遣でも社会保険に入れますか?
入れます。契約期間が2か月を超える見込みで、所定労働時間が正社員の4分の3以上などの要件を満たせば、派遣会社で健康保険と厚生年金に加入することになります。週20時間以上など一定の条件を満たせば、短時間でも加入の対象です。
派遣と直接雇用のパート、どちらが得ですか?
時給だけなら派遣が高いことが多いですが、処遇改善の手当や賞与、昇給の有無で逆転することもあります。同じ施設で両方の求人が出ていれば、年収ベースで比べてみてください。迷ったら、派遣会社の担当者に両方の条件を並べて説明してもらうのも一つの方法です。
派遣で働いた期間は、履歴書にどう書けばいいですか?
「株式会社〇〇(派遣会社名)に登録、△△施設に派遣」のように、派遣会社と派遣先の両方を書くのが一般的です。派遣先が複数ある場合は、主なものをまとめて書いても構いません。経験した施設の種類(特養、老健、デイサービスなど)と担当した業務を添えると、次の派遣先や転職先に伝わりやすくなります。
介護派遣のまとめ
- 介護派遣は、派遣会社に雇われて施設で働く形。仕事内容は直接雇用の介護士とほぼ同じ
- メリットは時給の高さ、残業なし、休日や時間帯を選べること、有給の取りやすさ、職場を変えやすいこと
- デメリットは賞与・退職金が少ないこと、同じ施設で3年を超えて働けないこと、契約が更新されない可能性
- 給料は時給ではなく年収と処遇改善の手当の扱いで比べる。同一労働同一賃金の方式も確認する
- 派遣会社は、介護特化、求人数、資格支援、情報公開、担当者の相性で選ぶ
介護士が派遣で働くのは、時給の高さや働き方の自由さを重視する人にとって有効な選択肢です。一方で、同じ職場で長く働きにくいなどのデメリットもあります。派遣会社の待遇と派遣先の情報をよく確認して、自分の生活に合う働き方を選んでください。