
実務者研修(正式名称:介護福祉士実務者研修)は、介護福祉士の国家試験を受けるために必要な研修です。介護職としてキャリアアップしたい方にとって、避けて通れないステップといえます。
この記事では、実務者研修の内容や初任者研修との違い、期間・費用、修了するとできること、給料への影響、合格率(修了の難しさ)までをまとめて解説します。
この記事をわかりやすくまとめると
- 実務者研修は、実務経験ルートで介護福祉士を受験するために修了が必須の研修。資格や経験がなくても受講できる
- 無資格からは20科目450時間。初任者研修修了者は320時間に短縮されるなど、保有資格で時間が免除される
- 国家試験のような修了試験はなく、全科目の受講と課題・演習の評価を満たせば修了できる
- 修了するとサービス提供責任者になれるほか、喀痰吸引等の基礎を学べる
- 厚生労働省の調査では、実務者研修修了者の平均給与は月32万7,260円で、資格なしより約3.7万円高い(2024年9月時点)
実務者研修とは?介護福祉士の受験に必須の研修

実務者研修は、介護福祉士の受験資格を得るために必要な研修です。受講に資格や実務経験は必要なく、誰でも受けられます。
介護の現場で働きながら介護福祉士を目指す「実務経験ルート」では、次の2つがそろうと国家試験を受験できます。
- 介護等の実務経験:従業期間3年以上、かつ従事日数540日以上
- 実務者研修の修了
以前は実務経験3年だけで受験できましたが、2016年度の試験(2017年1月実施)から実務者研修の修了も必須になりました。
なお、実務経験と実務者研修はどちらも「見込み」で受験を申し込めます。実務経験は受験する年度の3月31日までに要件を満たす見込みであれば対象になります。申し込み時の細かな条件は、社会福祉振興・試験センターの受験の手引きで必ず確認してください。
実務者研修と初任者研修の違い
介護職向けの研修で、よく比較されるのが実務者研修と介護職員初任者研修です。主な違いは次のとおりです。
| 項目 | 実務者研修 | 介護職員初任者研修 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 介護福祉士の受験に必須 | 介護職の入門資格 |
| 研修時間(無資格の場合) | 20科目・450時間 | 130時間 |
| 医療的ケア(喀痰吸引・経管栄養) | 学ぶ | 学ばない |
| 修了時の筆記試験 | なし(課題・演習の評価あり) | あり |
| サービス提供責任者 | なれる | 原則なれない |
実務者研修は国家資格につながる研修なので、時間数も内容も初任者研修よりはるかに多くなっています。修了時の筆記試験がないのは、知識の理解度を介護福祉士の国家試験で問う仕組みになっているためです。
一方の初任者研修は、修了すること自体がひとつの資格になるため、最後に筆記の修了評価があります。
初任者研修を飛ばして実務者研修から受けてもいい?
初任者研修を受けずに、いきなり実務者研修を受講することもできます。介護福祉士を目指すことが決まっているなら、二度手間にならず、トータルの費用を抑えやすいのが利点です。
一方で、450時間の研修は負担も大きいため、「まずは介護の仕事に慣れたい」「介護福祉士の受験はまだ先」という方は、初任者研修から始めるのも現実的な選択です。初任者研修を修了していれば、実務者研修では130時間分が免除されます。

実務者研修の内容と期間

20科目450時間のカリキュラム
国が定めた実務者研修のカリキュラムと時間数は次のとおりです。
| 科目 | 時間数 |
|---|---|
| 人間の尊厳と自立 | 5 |
| 社会の理解Ⅰ | 5 |
| 社会の理解Ⅱ | 30 |
| 介護の基本Ⅰ | 10 |
| 介護の基本Ⅱ | 20 |
| コミュニケーション技術 | 20 |
| 生活支援技術Ⅰ | 20 |
| 生活支援技術Ⅱ | 30 |
| 介護過程Ⅰ | 20 |
| 介護過程Ⅱ | 25 |
| 介護過程Ⅲ | 45 |
| 発達と老化の理解Ⅰ | 10 |
| 発達と老化の理解Ⅱ | 20 |
| 認知症の理解Ⅰ | 10 |
| 認知症の理解Ⅱ | 20 |
| 障害の理解Ⅰ | 10 |
| 障害の理解Ⅱ | 20 |
| こころとからだのしくみⅠ | 20 |
| こころとからだのしくみⅡ | 60 |
| 医療的ケア | 50 |
| 合計 | 450 |
この時間数は国が定めた最低ラインで、スクールによっては独自の内容を追加している場合もあります。
多くの科目は通信(自宅学習とレポート提出)で学べますが、「介護過程Ⅲ」と「医療的ケア」の演習は通学(スクーリング)が必要です。医療的ケアでは、たんの吸引や経管栄養について講義を受けたうえで、人形などを使った演習を行います。
保有資格による免除と研修時間
すでに介護系の資格を持っている場合は、受講科目の一部が免除されます。
| 保有資格 | 受講時間の目安 |
|---|---|
| 資格なし | 450時間 |
| 介護職員初任者研修・ホームヘルパー2級 | 320時間 |
| ホームヘルパー1級 | 95時間 |
| 介護職員基礎研修 | 50時間(医療的ケアのみ) |
※免除の扱いはスクールのコース設定によって異なる場合があります。
研修期間の目安
受講期間はスクールや保有資格によって異なりますが、無資格から受講する場合は6か月程度のコースが一般的です。初任者研修修了者は、それより短い期間のコースが用意されていることが多くなっています。
通信で学びながら、スクーリングは月に数回程度というスケジュールが多いため、働きながらでも受講しやすいのが特徴です。
実務者研修の合格率は?修了の条件

実務者研修には、国家試験のような「合否を決める試験」はありません。そのため、決められたカリキュラムをきちんと受講すれば、ほとんどの人が修了できます。
ただし、何もしなくても修了できるわけではありません。修了するには、主に次の条件を満たす必要があります。
- 通信課題(レポート)を期限までに提出し、基準を満たすこと
- スクーリングにすべて出席すること(欠席・遅刻・早退は振替などで補う必要がある)
- 介護過程Ⅲや医療的ケアの演習で、所定の評価を満たすこと
スクーリングを欠席した場合の振替受講の可否はスクールによって異なります。仕事のシフトと重なりそうな方は、申し込み前に確認しておきましょう。
参考:介護福祉士国家試験の合格率
実務者研修で学んだ内容は、介護福祉士の国家試験で問われます。社会福祉振興・試験センターの発表によると、第38回(2026年1月実施)の合格率は70.1%(受験者7万8,469人、合格者5万4,987人)でした。
実務者研修の内容をしっかり理解しておくことが、そのまま国家試験対策にもつながります。
実務者研修の費用と負担を抑える方法
受講費用は保有資格とスクールで大きく変わる
実務者研修の受講料は、スクールや地域、保有資格によって大きく異なります。一般的に、無資格者のほうが受講時間が長い分だけ高く、初任者研修修了者などは安くなります。
どこで受講しても修了できる資格は同じなので、複数のスクールで総額(教材費・スクーリング費用を含む)を比べてから選ぶのがおすすめです。期間限定の割引キャンペーンを行っているスクールもあります。
全国の研修実施施設は、厚生労働省のWEBサイトで確認できます。
参考:厚生労働省「介護福祉士養成施設等における『医療的ケアの教育及び実務者研修関係』5実務者養成施設指定一覧」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/care/index.html
費用負担を軽くできる制度
受講費用は、次のような制度で抑えられる可能性があります。
| 制度 | 概要 |
|---|---|
| 教育訓練給付制度 | 厚生労働大臣の指定を受けた講座を修了すると、受講料の一部がハローワークから支給される。雇用保険の加入期間などの条件あり |
| 職業訓練(ハロートレーニング) | 離職中の方などが、原則無料(テキスト代などは自己負担)で受講できる場合がある |
| 実務者研修受講資金の貸付 | 都道府県の社会福祉協議会などが受講費用を貸し付け、一定期間介護の仕事に従事すると返済が免除される制度がある地域も |
| 勤務先の資格取得支援 | 受講費用の補助や、スクーリング日の勤務調整をしてくれる事業所もある |
給付率や上限額、対象講座は制度や講座によって異なります。教育訓練給付はハローワーク、貸付制度はお住まいの都道府県の社会福祉協議会で、最新の条件を確認してください。
実務者研修を修了するとできること・メリット

介護福祉士の受験資格がそろう
最大のメリットは、実務経験と合わせて介護福祉士の受験資格がそろうことです。国家資格である介護福祉士を取得すれば、資格手当や昇給、転職での評価などで大きく有利になります。
サービス提供責任者になれる
実務者研修を修了すると、訪問介護事業所(ヘルパーステーション)のサービス提供責任者として働けます。
サービス提供責任者は、訪問介護計画の作成やヘルパーへの指示・助言、利用者やケアマネジャーとの調整を担うまとめ役です。役職手当などで収入アップが期待できるポジションでもあります。
喀痰吸引・経管栄養の基礎が身につく
実務者研修の「医療的ケア」では、たんの吸引や経管栄養について学びます。
ただし、研修を修了しただけで現場で喀痰吸引などを行えるわけではありません。実際に行うには、利用者を対象とした実地研修を修了し、介護福祉士として登録(喀痰吸引等の付記)するか、都道府県から「認定特定行為業務従事者」の認定を受けるなどの手続きが必要です。対応できる職員が限られる現場では重宝されます。
現場での指導役を任されやすくなる
450時間の研修を修了していると、無資格者や初任者研修修了者より幅広い知識を持つ人として評価されます。そのため、新人職員への助言や指導を任されることも増えるでしょう。
給料・資格手当が上がりやすい
厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査」によると、介護職員(月給・常勤)の保有資格別の平均給与額は次のとおりです。
| 保有資格 | 平均給与額(月額) |
|---|---|
| 介護福祉士 | 350,050円 |
| 実務者研修 | 327,260円 |
| 介護職員初任者研修 | 324,830円 |
| 保有資格なし | 290,620円 |
※2024年9月時点。介護職員等処遇改善加算を取得している事業所の数値。基本給に手当・一時金(4〜9月支給額の6分の1)を含む。
実務者研修修了者は、資格なしの人より月に約3万7,000円高くなっています。さらに介護福祉士になると、実務者研修修了者より月に約2万3,000円高い水準です。実務者研修は、介護福祉士へのステップとしても収入面での意味が大きいといえます。
資格手当の有無や金額は事業所によって異なるため、求人票や就業規則で確認しましょう。
転職で有利になる
実務者研修を修了していると、一定の知識とスキルがある人材として評価されやすくなります。サービス提供責任者の求人に応募できるようになるなど、選べる求人の幅も広がります。
実務者研修のスクールの選び方
受講先を選ぶときは、次のポイントを比較しましょう。
| チェック項目 | 確認したいこと |
|---|---|
| 受講形式 | 通信+スクーリングか、通学中心か |
| スケジュール | スクーリングの日数・曜日、夜間や土日クラスの有無 |
| 費用 | 受講料に教材費・スクーリング費が含まれるか、総額はいくらか |
| 給付制度の対象か | 教育訓練給付制度の指定講座かどうか |
| 振替受講 | スクーリングを欠席した場合に振り替えられるか、追加費用はかかるか |
| サポート体制 | 課題の質問対応、国家試験対策講座、就職支援があるか |
| 通いやすさ | スクーリング会場が自宅や職場から通いやすい場所にあるか |
受講経験者の口コミも参考になりますが、個人の感想なので、複数の情報を見比べて判断しましょう。
実務者研修を受けるときの注意点
受験したい年度から逆算して申し込む
介護福祉士の国家試験は例年1月下旬に行われ、受験申込は前年の夏ごろです。実務者研修は「修了見込み」で申し込めますが、修了が間に合わなければ受験できません。受けたい年度の試験から逆算し、余裕をもって受講を始めましょう。
課題とスクーリングの計画を立てる
通信学習では、定期的な課題の提出が求められます。仕事と両立する場合は、学習時間をあらかじめ確保し、提出期限に遅れないようにすることが大切です。
体調管理を心がける
受講期間は数か月に及びます。スクーリングを欠席すると振替が必要になり、修了が遅れることもあります。研修期間中は無理のない勤務シフトを組み、体調管理に気をつけましょう。

実務者研修に関するよくある質問
Q.働きながらでも実務者研修は受けられますか?
受けられます。通信で学びながら、スクーリングに月数回通う形式が多いため、介護職として働きながら受講する人がほとんどです。
Q.実務者研修だけで介護福祉士になれますか?
実務者研修を修了しただけでは介護福祉士にはなれません。実務経験ルートの場合、従業期間3年以上・従事日数540日以上の実務経験と合わせて受験資格を満たし、国家試験に合格する必要があります。
Q.実務者研修を修了すると資格証はもらえますか?
研修を修了すると、スクールから「修了証明書」が発行されます。介護福祉士の受験申込や転職時の資格証明として使うので、大切に保管しましょう。
まとめ:実務者研修は介護福祉士とキャリアアップへの近道

- 実務者研修は、実務経験ルートで介護福祉士を受験するために必須の研修
- 無資格は450時間、初任者研修修了者は320時間など、保有資格で受講時間が変わる
- 修了試験はないが、課題提出・スクーリング出席・演習の評価が必要
- 修了するとサービス提供責任者になれ、医療的ケアの基礎も身につく
- 実務者研修修了者の平均給与は月32万7,260円で、資格なしより約3.7万円高い(2024年9月時点)
- 費用は教育訓練給付や貸付制度、勤務先の支援で抑えられることがある
実務者研修を修了すると、選べる職場や役割が広がります。求人を探す際は、ハローワークや介護分野の求人サイトなどを活用し、給与や資格手当、研修制度などをよく比較することが大切です。各都道府県の福祉人材センターでも、介護職の求人紹介や相談を無料で受けられます。